「ぎゃあああああ!!!!」
暗闇に、悲鳴が響き渡る。
「何があった?」
羽を休めて降りたビルの上で、ラファエルが部下に問う。
「…一般人が、襲われたね」
ラファエル隊の副隊長であるヴァラが、ふうと息を吐きながら答える。
「隊長、ただちに…」
「ああ、この機を逃しはしない。行くぞ!」
腰に携えた刀を抜き、声が聞こえた方へかける。
ビルから飛び降り、地面に衝突する寸前で羽を広げて着地。
滑るように建物の狭間を駆け抜け、目的地へ向かう。
「…!!」
そこには、血だらけの人がいた。
そばに魔物がいて、素早く人の首に手をかけようとする。
「動くな!!!」
ヴァラが銃を構える。
「ぁ…あ、ぐぁ…助け」
彼は、震える声で、か細く、助けを求めた。
そして
ぐしゃりと、音がした。
その直後に、ダァンと音がする。
「っはは、…我を撃つか!」
魔物は撃たれた左目を押さえ、右目でこちらを睨む。
「全員、構えろ!」
真っ先にラファエルが魔物へ向かう。
「電熱」
途端、光がほとばしり、ラファエルの刀が熱を帯びる。
高速で振られた剣の軌道が残像となり、魔物の肩に食い込む。
「…っ!」
魔物が片膝をついた隙をつき、隊員が畳み掛ける。
「…ふっ」
そう、しようとした。
「っぐあ!」
「がっ!」
「っ痛!!」
突然、隊員たちがうめき声をあげ倒れる。
「…何をした?」
一瞬、痛み、らしきものを感じた。
だが体に傷は一筋も入っていない。
「おお、貴様は感じないのか」
「空間に波を感じたが、お前がやったのか」
その問いに、魔物はふふふと嗤う。
「流石隊長級だ。そう、これが我の能力、〈共感〉」
「どうせ自分の感じたことを、念で相手に飛ばすんだろう?悪趣味な」
「そう言ったところで味方はやられているぞ?我の階級を知らぬか」
尊大な口調で堂々と見下してくる。
「所詮、《男爵》だろ」
だか、ラファエルの方が、技も、実力も、格上である。
「!!!貴様ぁ!!!」
ギュン、と空気が刃の形を帯びる。
(念を飛ばす…空気を震わせるところから、応用したのか)
それらを刀で切り伏せ、魔物の元へ向かう。
「っくそ!あああああああ!!!!がっ!」
魔物の胸に、刀を深く突き立てる。
「お前の技を教えてくれた代わりに、俺も教えるよ」
「っは…くる、し…」
「俺は大天使ラファエル。熱を操る。さっき刀に付与した電熱は、おまえらが嫌いな光と熱の二重攻撃。どう?すごいでしょ」
直後、虫が焼かれたような音が聞こえ、魔物が消える。
「…ラファエル。魔物とだけ、饒舌だね」
「生き返った?」
ヴァラが震える右腕を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。
「何とか…にしても、よく私たちを庇いながら殺せたな」
「別に。階級持ちになって浮かれてたんだろ」
「とりあえず、他のみんなは応急処置を受けてもらわないとね」
「ああ」
ずきんと、胸の奥が痛んだ。
(痛みを感じないのではなく…慣れた、のか)
ぬるい風と血の匂いが、体に突き刺すようだった。
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