テラーノベル
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一生懸命走っているのに全然スピードが出せない、とか……誰かを全力で追いかけているのに何故か歩いているはずの相手にどんどん離されちゃう、とか夢の中ではそう言うもどかしいことがまま起こるものだもの。このたどたどしくて歯がゆい口調も、きっとそんなのの一種。
「ありゃりゃ。藤原さん、完全に酔っ払っちゃってますね」
私の真正面に座った、その他大勢くんの一人が、そんなことをつぶやいた。
私はその声に、半ば条件反射で「すみません」と言う。
「二人とも、すまないが僕はこのまま彼女を送っていくことにするよ。――これで支払いとか頼めるかな?」
言いながら塚田さんが林さんたちに向いてお財布を取り出しておられるのが見えた。
(んー、渡しておられるお札が本物っぽいから……これは現実、かな?)
林さんたちにここのお支払いのことや、何ならお二人の二次会への出資のことなんかを提示し終えた塚田さんが、現実の世界から夢の世界へ戻っていらっしゃる。
そうしてすぐに私の耳元に唇を寄せると、「藤原さん、僕は今から貴女の身体に触れます。いいですね?」と小声でささやいた。
いつもより低められた塚田さんの声に耳をとろかされながら、私はこくん、とうなずく。
直後、私は塚田さんに椅子から抱え起こされていた。
塚田さんの端正な横顔がすぐ間近にきて、私はドキドキと胸が高鳴るのを抑えられなくなる。
真横から見ると、眼鏡のレンズ越しではない彼の瞳が透かし見えるのが、また特別な感じがして一際激しくときめいてしまう。
動悸があまりに苦しくて、思わずうるさく脈打つ胸元に手を添えた。
(気持ちを外に出さないから、こんなにも心臓が暴れてしまうに違いないのですっ)
ぼんやりとそんなことを思う。
そのまま塚田さんに支えられてフラフラと歩きながら、これが夢なのか現実なのか、私は未だに判別がつけられなかった。ただ、彼を恋い焦がれる心だけがほわほわと胸の内を揺蕩って。
私は自分の置かれた状況がよく分からないことが急に不安になって、その拠り所を求めるみたいに塚田さんの腕にぎゅっとしがみつく。
色んな想いが 交錯してグチャグチャになりそうな意識のなか、彼の温もりと体臭だけが確かなものに思えた。
私は破裂しそうな心臓に押されるように、半ば無意識にうっとりとつぶやく。
「私、塚田しゃんのことが……どうしようもなく大好きれす……」
途端、私を支える彼の腕に、ほんの少し力がこもった。
塚田さんに導かれるまま、私はお店をあとにした。
「この時間帯は大通りを流してる車が結構いるはずだから」
そう仰った塚田さんに支えられてアーケードをほんの少し歩くと、すぐに国道に面した通りへ出た。
と、程なくして塚田さんの言葉通り、一台のタクシーが捕まる。
ドアが開くと同時に、塚田さんに支えられて、後部シートに乗り込んだ。
席へ落ち着いてすぐ、コツン……とガラス窓に頭をもたせかけた私に気付いた塚田さんが、私の頭をそっと抱えて自分の方へ抱き寄せてくださる。
「走っている間、僕に寄りかかってしばらくお眠りになるといい」
言われて優しく頭を撫でられたけれど、初めてのシチュエーションの連続に、ドキドキが激しくなるばかりで――。
コメント
2件
これ絶対相思相愛!だと思う!
酔っ払って塚田さんに「大好きれす」と告白しちゃうシーン、もう胸がぎゅうっとなりました…!普段抑えてるぶん、アルコールで素直になっちゃうの、すごくリアルで切ない。塚田さんの腕に力がこもる小さな反応が、彼の驚きと喜びを物語ってて、そこがまたたまらなかったです。タクシーで優しく頭を抱き寄せられるラストも、夢と現実の狭間で揺れる主人公の感覚が丁寧で、次が気になります!
鷹槻れん

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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#契約結婚
鷹槻れん

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