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「いらっしゃいま──あれ、カラスバさん!?」
「パン1つ買いに来たんや」
「え〜!!嬉しー!!そういう口実で私に会いに来たんですよね?」
「んなわけないやろ。はよしぃや」
「厳し〜!」
そう笑いつつ、カラスバが選んだパンを取り紙袋へ入れていくシオン
するとシオン達の様子を見たシオンの先輩だろうか、少しお洒落な女性がシオンに声をかける
「シオンちゃん何、彼氏〜?」
「彼氏になる予定の人です〜!!」
「ならんわ!」
カラスバの言葉にケラケラ笑いながら、「嘘つけ〜」と話すシオン
そんなシオンからパンを受け取る
「シオンちゃん今日暇だし、彼氏さんと帰ったら〜?」
「え!いいんですかー?じゃあお言葉に甘えて!ありがとうございます先輩〜!!」
「やから彼氏ちゃうて」
そう言って先輩の女性に抱きつき嬉しそうにした後、急いで店の裏へ行くシオン
そんなシオンを横目にシオンの先輩がカラスバに声をかける
「アンタ、その感じだとサビ組の人間でしょ」
「よう知っとるやん」
「そりゃそんなスーツとご丁寧にサビ組のバッチまで付けてたら分かるわよ〜」
カラスバがサビ組のボスとは思っていないようだがそれでも特に嫌悪感を抱かず笑う
「シオンちゃんさ、明るくていい子なのよね
気も使えるし、けど顔も美人だからか厄介な客も付いてたりしててさ。もし良かったらアンタも気にかけてやってよ。」
「…まぁ、気が向いたら、な」
しばらくするとシオンが嬉しそうに笑いながらカラスバの元へ走ってくる
「待っててくれたんですね!」
「あと少しで帰るとこやったわ」
「またまた〜!!」
そう言いながら先輩にお辞儀をした後、カラスバの横をちょこちょこと着いて回る
「…お前こっちにはいつ来たんや」
「んーと、半年前くらいですね!
いや〜、本当にポケモンにも触れ合えるし自然豊かだし…人も良くていい街だなって」
「最近、あんなことがあったのによう言えるな」
「あー、フレア団ですか?」
数ヶ月前のあの日───フレア団のボス、フラダリが起こした大事件
あの日、少年少女達があの人を止めなければカロス地方は終わっていただろう
「けど今は凄くいい所じゃないですか。過去より今ですよ、今!」
「今、か……」
そう笑うシオンに対し少し暗い表情をする
そんなカラスバに気づいたのか、カラスバの頬をつつくシオン
「なんするんや」
「カラスバさん、ポケモンセンターいきません?」
「は?」
シオンの唐突な提案に先程のしんみりとした空気感から一転して拍子抜けしたような声が出た
「ありがとうございました〜!」
ジョーイさんの明るい声と共に二人でポケセンを出る
シオンの手には大量のキズぐすりとモンスターボールが入った紙袋を持っている
「お前は限度っちゅうもんを知らんのか」
「まさかこんなに奢ってくれるなんて〜!!」
「あのままやったらお前が破産しそうや思っただけや。」
「大丈夫ですよ〜」
そう笑いながら脳天気なシオンに『はぁ…』と溜息をつくカラスバ
「カラスバさんって本当に優しいですよね」
「こんな人間を優しいゆうのはお前くらいやで」
「こんな仕事って言っても、悪い人間を退治してるだけじゃないですか。」
そう無邪気に笑うシオン
それに対しカラスバは冷たい目をした後、シオンの首を掴む
「──それだけや思うか?」
シオンの手にかける力を少し強める
まるでシオンを本当に殺そうとしているように
しかしシオンはそんな様子にも怖じけず、笑う
「あははっ!それだけじゃなくても、カラスバさんの行動でミアレはよくなってる。
いいと思いますよ、そういうのも。」
「…………はァ、お前はようわからんわ」
少しの沈黙の後、シオンの言葉に溜息をつき、首から手を下げる
「時には凶悪な手段を取らないと守れないものもある、仕方ないですよ」
そう言って笑うシオン
しかしその目には珍しくカラスバは写っていなかった