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その頃……七班は……。
「私の前から消えなさい!」
「燃えちゃええええええ!」
「あなたたちには、私の糧になってもらう……よ!」
フィア(四大天使の遺伝子を融合させて誕生したナオトの守護天使)は、例の人たちを火、水、風、光で攻撃していた。
本来の四大属性は火、水、風(空気)、土だが、光の方が強そうだという意見が多かったため、彼女には光属性が付与されている。
「死にたい者から、前に出なさい……」
フィアが例の人たちを睨《にら》むと、その人たちはビビッてしまった。
だって、相手は四大天使の遺伝子を持っている存在なのだから……。
「ゴブリンの軍団と戦った時は油断したけど、今回は油断しないよー!」
ヒバリ(巨大な鳥型モンスターの本体)は、赤い炎を身に纏《まと》わせると、口から炎を吐き始めた。
ちなみに例の人たちは、それが『四聖獣』の一体である『朱雀』の炎だということを知らない。
「……十五……十六……十七……十八……十九……」
ニイナ(いつも黒いローブを着ている殺し屋の中の殺し屋)は、自分が例の人たちを何人倒したのか数えながら、戦っていた。
「あなたで……二十」
ナイフの使い方は、色々ある。
投げるもよし、相手を斬るのもよし、そして、何かを潰すのもよし……。
黒いローブについているフードを深々と被っているせいで、彼女の瞳や髪の色はわからないが、殺し屋としての実力は確かであるということはわかる。
「さて……次は……誰かな?」
彼女のオーラから感じたものは、殺意や憎しみなどではなく、自分の殺しの腕を確かめたいというものだった。
*
その頃……八班は……。
「ふんぬううううう!」
「……よっ……と」
「…………!」
ブラスト・アークランド(斧使い)は彼専用の武器である『|大罪の力を解放する斧《トリニティブラストアックス》』を使わず、なぜか拳で戦っていた。
「さあ、かかってこい! 返り討ちにしてやる!!」
ブラストは、かなりの大男だが、その攻撃はすばやく、そして重い。
「面倒だから……刀は使わない。けど、お前たちは俺には……勝てない」
名取《なとり》 一樹《いつき》は名取式剣術の使い手である。
しかし、彼は剣術使いである前に殺し屋であるため、たいていの武器は扱えるのである。
その辺に落ちている、まな板やフライパンなどを使って、例の人たちを次々に倒していく様は、殺し屋というより戦う料理人であった……。
「…………」
無言で戦っているのは、ナオトの分身である。
外見や戦い方は彼そっくりだが、一撃、一撃に魂を感じられない。
しかし、敵を倒すだけでなく、味方の援護もできるのだから、かなり役に立つのは間違いないだろう。
*
その頃……ナオトは……。
「お前らみたいなモンスターチルドレンもどきが! 本物のモンスターチルドレンに! 勝てるとでも! 思っているのかあああああ!!」
ナオトは、一人につき一発、拳を入れていた。
その一撃はその小さな体から放たれているとは思えないほど速く、そして正確だった。
「さてと……そろそろ出てこいよ」
ナオトがそう言うと、物陰に隠れていた灰色の火の玉が彼の前に現れた。
「おやおや、気づかれていましたか」
「当たり前だろ。というか、まちをこんな風にしたのはお前か?」
「いえいえ、私は今回の一件には直接関わっていませんよ。しかし、彼らがあのような姿になるきっかけを作ったのは、この私です」
「そのしゃべり方……思い出したぞ。お前、神社で俺たちに話しかけてきたやつだろ?」
「なるほど。やはり、あなたはあの時、お会いした方だったのですね。しかし、ずいぶんと可愛らしい姿になられましたね」
「俺は好きでこうなったわけじゃない。けどまあ、今回このまちに来たのは、それを解決できる場所があるからだけどな……」
「なるほど、なるほど。しかし、このまちは現在進行形でとある実験をしておりますので、観光は後回しになさった方がよろしいですよ」
「そうか……。というか、お前の名前は確か『グレー・アイランド』だったよな?」
「はい、その通りです」
「じゃあ、グレー。今すぐその実験を中止しろ」
「それは、無理な相談ですね」
「そうか。なら、俺と戦って死ぬか、戦わずに生き延びるか、今ここで選べ」
「おやおや、私は仮にも『|漆黒の裏組織《アポカリプス》』の幹部の一人ですよ? あなたのような魔法も使えない近接戦闘特化型に私が負けるわけ……」
「なら……試してみるか?」
「試すとは、どういう意味ですか? もしやとは思いますが、私と戦うなどという意味ではありませんよね?」
「おいおい、俺が目の前の敵を見なかったことにしたりしないってことくらいわかるだろう? ということで、俺は今から、今回の一件の関係者であるお前を倒す!」
「あー、あー、これだから、戦闘バカは嫌いなんですよ。私の兄弟にもあなたのような人がいますが、実に哀れなものです」
「何が言いたい?」
「戦いというものは、一対一ではないということですよ」
「ん? それはいったいどういう……」
ナオトが最後まで言い終わる前に、そいつは姿を現した。
体長三十メートルほどの巨人は、その大きな手でまちの建物を潰そうとした。しかし……。
「『|黒影製の投げ槍《ダークネス・ジャベリン》』!!」
ナオトは、瞬時に黒い影で投げ槍を作ると、その巨人の目を狙って投げた。
投げた槍は一本……。しかし、目玉は二つある。さて、同時に潰したい時はどうすればいいのか考えてみよう。
答えは簡単だ。その槍を分裂させればいいのである。
「今だ! 分裂しろ!」
ナオトがそう言うと、その槍は二つに分裂した。そして、巨人の両目を同時に潰した。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
巨人は苦しげな声を上げながら、仰向けで倒れた。
「おい……今のやつもお前のせいであんな風になっちまったのか?」
「はぁ……いいですか? 先ほども申し上げましたが、私は今回の事件のきっかけを作っただけです。ですから、今、このまちで暴れている人々は皆《みな》、自《みずか》らモンスターの力を欲した人たちです。お分かりいただけましたか?」
「そうか……。けど、今そいつらを操っているやつの居場所くらいはお前でもわかるんじゃないか?」
「それを知った後、あなたは、その者を倒しに行くんですよね?」
「ふん、俺たちの敵のくせになかなか鋭いじゃねえか。まあ、そういうことだから、早くそいつがいる場所を教えてくれ」
「嫌だ……と言ったら?」
「その時は、お前がどれだけ逃げようとそれを言うまでどこまでも追い続けるまでだ」
「なるほど……。そうですか。しかし、私は組織の幹部であり、唯一の頭脳派です。なので、いつも賢い選択しかしません」
「そうか……。で? 結局、お前はどうするんだ?」
「そうですね……。今回はなんだか面白そうなので、あなたに手を貸してあげます」
「頭脳派とか言ってたくせによく言うぜ……。まあ、とりあえず、そいつがいる場所まで案内してくれ」
「わかりました。では、参りましょう」
「ああ、そうだな」
その後、二人はまちの上空へと向かっていった。
*
「まったく……貴様らのような不安定な存在に、この私が負けるわけがないだろう?」
白い鎧を全身に纏《まと》っているのは、加藤式忍法の継承者……『加藤《かとう》 真紀《まき》』である。
「まだあの温泉に浸《つ》かっていたかったのに、貴様らのせいで台無しだ……」
加藤は、例の人たちを倒しながら、彼らを何人倒したのか数えていた。
「まあ、ざっと二十人程度か……。しかし、貴様らはいったいどこから現れたのだろうな……」
その時、彼女の顔めがけてナイフが飛んできた。
加藤は、それを右手の人差し指と中指の間でキャッチした。
「貴様……今の状況をわかっていてなお、私と戦いたいのか?」
加藤にナイフを投げてきた男は、黒いローブで体のほとんどを覆い隠していた。
「ああ、もちろんそのつもりだ。というか、組織の敵《かたき》が目の前にいるのに、そのチャンスを無駄にするやつなんていないだろ!」
「ふん、バカなやつだ。おとなしく隠れていれば、見逃してやったというのに」
「う、うるさい! 黙れ! 俺が世話になった組織が『はじまりのまち』を襲撃した時、そのほとんどが殺されたって聞いた時は正直、耳を疑ったよ。けど、お前がそんな格好をしてたおかげで探すのに時間はかからなかったよ!」
「なるほど……。貴様は、あのまちを襲撃した組織の一味というわけだな。しかし、やつらは私の肩慣らしにもならなかったザコだったぞ?」
加藤は、彼を怒らせるために、わざとそう言った。
「あのまちを襲撃したやつらがザコだと? ふざけるな。あの人たちは、お前が考えているようなやつらじゃないんだよ!」
「しかし、あのままやつらを生かしておけば、確実に『はじまりのまち』は陥落《かんらく》していたぞ?」
「別にいいんだよ! そんなことは! 俺はあの人たちに借りがあったのに、それを返す前にお前に殺されちまった。だから、それを返そうにも返せなくなっちまったんだよ!」
「そうか……では、貴様もあの世に送ってやるとしよう」
「ふ……ふざけるな! 俺はお前を倒して、あの人たちの敵《かたき》を……!」
「もう遅い。なぜなら、貴様はすでに敗北しているからだ」
「な、何をバカなことを言って……ガハッ!! な、なぜだ? 俺は一度も攻撃されていないのに……」
加藤は膝から倒れ、四つん這いになった彼のところに向かった。
そして、彼にこう言った。
「加藤式忍法……壱の型一番……『超貫通眼』は、相手に気づかれることなく、貫きたい体の部位を貫ける忍法だ。だから、貴様が私の前に立った時点で、すでに貴様は負けていたということだ」
「そんな……バカ……な」
彼は力尽き、その場に倒れた。
「バカなやつだ。私を倒すよりも、このまちの人たちを守るために戦っていれば、こうはならなかっただろうに」
加藤は、もう動かなくなってしまった彼の目をそっと閉じると、再び例の人たちの相手をすることにした。
*
その頃……長老会の残りのメンバーがやっと帰ってきた。
「いやー、いい湯じゃったのー」
「たしかに、いい湯じゃったのー」
「また、行きたいのー」
「そうじゃのー」
「お土産は温泉まんじゅうじゃぞー」
「あー、ずっとあそこにいたかったのー」
「しかし、そううまくはいかんのー」
「ああ、そうじゃのー」
「料理もおいしかったのー」
「また、食べたいのー」
「今度は、いつ行こうかのー」
「では、今から行くかのー」
『却下じゃ!!』
留守番をしていた四人は、同時にそう言った。
その後、その四人は鏡魔法でビッグボード国の様子を映し出した。
「こ、これは……!」
「な、なんということじゃ……!」
「わしらが昨日までいた国ではないか!」
「いったいどうなっているのじゃ!」
「生存者はおるのか!」
「いや、それよりも被害報告を……!」
「なぜ、こんなことに……」
「おい! それよりあのモンスター化したやつらはなんじゃ!」
「見たところ、モンスターチルドレンではなさそうじゃの」
「そのようじゃが、不完全なモンスター化は危険じゃぞ」
「早く対策を立てなければ、この国は終わるぞ」
「たしかに、そうじゃの……」
その時、先ほどの四人がこう言った。
『まずは、国民の避難を最優先じゃ! まちは人と金があれば、何度でも再生可能じゃからな! では、これより『ビッグボード国の危機を救おう作戦』を実行する! 各自、手分けして、この最悪の状況をなんとかするのじゃ!』
『り、了解!』
その後、『長老会』メンバー、十六人はこの最悪の状況をなんとかするために分担して、ことに当たった。
*
____この日、起こった事件は後《のち》に『ビッグボード国の悲劇』と呼ばれるようになるが、その事件にはもう一つの名前がつけられることになる。
それが何なのかは、まだわからないが、この日起きた事件のことは後世に語られるものとなる。
なぜなら、それが伝説の始まりであり、世界の破滅の始まりでもあるからだ……。