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124
蒼月
768
グリルタ
72
コロシアムの中央、観客の喧騒が渦巻くリングの上。俺は対峙するエレナの姿を眺めながら、本日何度目か分からない盛大な欠伸をかました。
白銀の闘技場に、眩い紫電のスパークがパチパチと飛び散る。
相手のエレナは、軽やかな足取りでふわりと着地すると、楽しそうにクスクスと笑いながら俺の前に歩み寄ってきた。戦闘前の緊迫感など微塵もない、まるでピクニックでも始まるかのような軽い足取りだ。
「やっほー、クロード。オッズ180倍だって? アタシを舐めすぎじゃない?」
「舐めてるわけじゃない。現実的な確率を数字にしただけだ」
「冷たいなあ!」
エレナはふふんと鼻を鳴らし、両手を後ろに組んで、挑発するように俺の顔へとぐっと顔を近づけてきた。その瞳には、少女のような悪戯心と、本気で戦う戦闘狂の光が混ざり合っている。
「ねえ、クロード。試合の前にさ、ちょっとした『賭け』をしない?」
「……賭け? 闇賭博の窓口ならさっき済ませたが」
「そうじゃなくて、個人的なやつ!」
エレナはニヤリと意味深な笑みを浮かべ、コロシアム全体に響くような、しかし俺だけに聞こえる絶妙なトーンでこう言い放った。
**「――ねえ。アタシが負けたらさ……クロードと付き合ってあげてもいいかな?」**
「……は?」
思考の隙を突かれたような感覚に、俺は思わず眉をひそめた。
昨日のセリスの「デート勘違い発言」の悪夢が蘇りかける。だが、エレナの次の一言は、それをさらに斜め上にぶち抜いてきた。
**「で、もしアタシが勝ったら……アタシと付き合ってよね!」**
「……おい。それのどこが『賭け』なんだ」
「え? どっちが勝ってもアタシとクロードが付き合うんだから、アタシにとっては完全勝利のウインウインじゃん!」
悪びれもせずケラケラと笑うエレナ。
脳の回路に電流でも流れているのかと疑いたくなるような豪快な三段論理に、俺は心底からの深い溜息を吐き出した。
「お前の頭の中では、俺の意思や選択肢は最初からゴミ箱行きらしいな」
「だってもう、クロードって面白いし、情報屋の噂通り『知らぬ間に周りを狂わせる男』って感じで気になるんだもん! セリス様があんなに真っ赤になって怒る理由も、実際に喋ってみて少し分かった気もするし!」
エレナはパチパチと両手を叩き、紫電の軌跡を宙に描いた。
「さあ、どうする? 負けても勝っても可愛い女の子と付き合えるんだから、クロードにとっても悪くない話でしょ?」
「……断る。俺の頭の中にあるのは、180倍の払戻金でハンスから最新の指向性地雷と光学迷彩を買い占めることだけだ」
「冷たーい! じゃあ、その生意気な態度ごと、アタシの雷撃で無理やり更生させてあげる!」
エレナがフッと表情を引き締め、全身から爆発的な紫電の魔力を立ち昇らせた。
観客席から「エレナ様! そのハーフを丸焼きにしろーっ!」と大歓声が巻き起こる。
「――これより、第二試合! 開始ッ!!」
審判の狼煙(のろし)がコロシアムに響き渡った瞬間、エレナの姿がかき消えた。
超高速の雷鳴魔力。人間の動体視力を完全に置き去りにする「音速の突撃」が、一瞬で俺の懐へと迫る。
(――速いな)
だが、恐怖はない。
どれほど速かろうが、彼女の足が地面に着地する瞬間、そこには必ず「重力と空間の隙」が生まれる。
俺は盛大な欠伸を飲み込みながら、懐からそっと消音拳銃のグリップを握りしめ、地面に仕込んだアースワイヤーの起爆スイッチへと指をかけた。
コメント
1件
うわっ、エレナめっちゃぶっ飛んでる!笑 どっちが勝っても自分と付き合うって賭け、完全に自分得すぎて笑った🤣「俺の意思はゴミ箱行き」ってツッコミがもう完璧で…クロードの冷静な塩対応とエレナの超ハイテンションの対比がたまらないです。雷撃の描写もかっこよくて、戦闘の始まり方がすごく引き込まれました。次どうなるか気になる〜!