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第四話:消えない刻印
「あ……っ、ん、カイザー……そこ、は……」
貸切られたサロンのソファ。純白のタキシードは乱れ、シワになり、ネスの白い肌が朝の光のなかに剥き出しになっていく。カイザーはネスの細い首筋に容赦なく歯を立て、深く、濃い痕を刻み込んだ。先ほど彼が
「お前のサイズを測る手つきがいやにねっとりしてやがった」
と睨みつけた、あの若きデザイナーが触れたかもしれない場所を、すべて自分の愛で上書きするように。
「はぁ……っ、カイザー……本当に、嫉妬深い、王様、ですね……」
「黙れ。お前が俺をこうさせてんだろ。……ほら、よく見ろ」
カイザーはネスの顎を強引に上向かせ、目の前にある大きな姿見を無理やり見せつけた。鏡のなかに映るネスの首元には、鮮やかな赤紫色の痕が、まるで彼を縛り付ける鎖のようにいくつも浮かび上がっている。
それは、カイザーの右腕にある『青い薔薇のタトゥー』のように、ネスがカイザーの所有物であることを示す絶対的な証明だった。
「これで、お前が誰のものか一目でわかる。あの男がどんな目で見てこようが、この痕を見れば、お前が俺の夜のモノだって嫌でも理解するはずだ」
「ふふ……っ。嬉しい、です。このまま、身体中、あなたの色だけで染め上げてください……」
ネスは苦しげに息を荒げながらも、その紫の瞳に極上の恍惚を浮かべた。カイザーの独占欲が暴走すればするほど、ネスのなかの狂信的な愛は満たされていく。他人の視線など最初からどうでもいい。
ただ、カイザーが自分だけに狂い、自分だけを求めてくれるこの瞬間が、ネスにとって何よりも甘美な『ゆりかご』だった。カイザーはネスの薬指に光るブルーダイヤモンドを自分の指と絡め、もう一度、深く、すべてを貪るようなキスを交わした。
「このドレスはそのまま買い取る。シワになろうが汚れようが関係ねぇ。お前のその綺麗な姿を、他の奴に一瞬でも触れさせた俺への罰だ。お前は俺の腕のなかだけで、その純白を汚されてりゃいいんだよ」
「はい……。あなたの言う通りに、何でも。……愛しています、カイザー」
二人は完全に外の世界をシャットアウトしたまま、ただお互いの歪んだ愛の重さを確かめ合うように、再び濃密な熱のなかへと沈んでいった。結婚式という舞台すら、彼らにとっては二人だけの愛を証明するための、ただの背景に過ぎないのだ。