テラーノベル
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窓の外は茜色に染まっていて、部室の中には蝉の声だけがかすかに残っている。扇風機がガラガラとうるさく回っているけど、汗だくのオレにはちっとも足りん。
シャツをめくって、タオルで顔をぬぐってたら、ふと視線を感じた。
北さんや。着替えもせんと、オレのことじっと見とる。
「 ….どないしました?オレ、なんかついとる? 」
ふざけるように笑って聞いたけど、北さんは返事せえへん。ただ、少し火照った顔で、まるで何かに耐えてるみたいにオレを見てくる。
「 侑、汗すごいな。顔、赤い。 」
「 北さんも一緒ですよ。てか、ちょっと色っぽいですわ、それ。 」
そう言った瞬間、オレ自身の心臓がドクンと跳ねた。
なに言うてんねん、オレ。
笑って誤魔化そうとしたけど、北さんの目が真剣で、それがまたズルいぐらい綺麗で。
「 侑、最近オレのこと、避けとったやろ。 」
「 .. 避けてへんっすよ。てか、それ、北さんが なんか、かっこよすぎるから… 」
顔が熱い。汗のせいじゃない。言いながら、心臓がギュッて締め付けられる。
北さんが一歩近づいてくる。オレと北さんの距離が、部室の熱と一緒に詰まっていく。
「 そういうとこや。そうやって、オレを惑わせる。 」
「 惑わせてんのは…北さんのほうでしょ….. 」
扇風機の音が止まったみたいや。耳元で聞こえるのは、北さんの呼吸と、オレの鼓動だけ。
北さんの指先が、オレの頬に触れる。
「 侑…… 」
名前を呼ばれただけで、全部崩れそうになった。
オレ、もう――
「 ….オレ、もう我慢できひんっすよ? 」
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