何日かたった。未だに目も合わさず、話もしないかっちゃん。
周りもそれに気づいていて心配してくれる、けど、
LINEしても、電話しても見ないし出ない。
「…このままずっと話せないのかな」
だんだんと目に涙が溜まってく。
寮生活でせっかく先生にかっちゃんの隣の部屋空けてもらったのに。
色々考えて最近は寝不足だ。
でもなかなか寝れない。いつも寝つきが悪い私はかっちゃんからもらったクマのぬいぐるみが寝る時の必須物となっていた。
「…、?」
「…あれ?、ない?」
カバンのどこを探しても見つけられない。机の上もクローゼットの中もポケットの中も全部全部探したのにない。
ということは落とした?
みんなに聞いて回ったり共同スペース探したりしてるのにない。
残るは外。今日は体育館倉庫裏で休んだり、グラウンドで走ったり、飛んだり、屋上で花の水やりしたりした。
もう外は暗いけど、あれがなきゃ寝れない。
先生にどうしてもというおねがいをして外を走り回った。
「…はぁはぁ、」
ない、どこを探してもない。じわじわと涙が溜まる。
携帯の明かりと狼の嗅覚を操って必死で探す。
すると上からポツポツと冷たいものが降ってきた。
「あ、雨?」
よりによってこんな時に、と泣きたいのをこらえて探す。
「…わぁ!」
転がってた石につまづいて転んでしまう。
雨は強くなっていて、体が冷えて寒い。
もう嗅覚は感覚を失っていた。
けどどこか暖かい匂いがしたような気がして最後の力を振り絞って走る。
「…!」
それらしきものが見えて拾ってみる。
「…あ、った」
良かったと思うのと同時に体はとっくに限界を超えていたらしく、倒れてしまった。私はそこで意識を手放した。
幼少期。
幼稚園の頃。公園でお花の絵を書いていた。
私は小さい頃からぬいぐるみが好きでその日は犬のぬいぐるみを連れていた。
「おいガキ」
と後ろから声をかけられ、そちらを見ると小学校中学年ぐらいの男の子がなんにんもいた。
「見てみろよーこんなの持ってるぜー」
とその中の1人が私のぬいぐるみを持っていた。
「…返してっ!」
ほとんど必死に取り返そうとするものの、幼稚園児が小学生に勝てる訳もなくそのぬいぐるみは取られてしまった。
泣きながらブランコに座っていると、
「…ん」
と誰かが私のボロボロになった犬のぬいぐるみを持ってきてくれた。
驚いて顔を上げると
「…かっちゃん!」
ぬいぐるみ以上にボロボロになったかっちゃんがたっていた。
「これ、おまえのだろ」
ぬいぐるみを取り返してくれたかっちゃんに
「ありがとう」
と泣きながら言った。
「もう泣くなよ、これやるから」
とくれたのがそのクマのぬいぐるみだった。
手のひらサイズのそれは
「俺とおそろい」
かっちゃんとお揃いで、
その日私は彼に恋をした。
中学生頃。まだ私がプロヒーロー活動をする前のこと。
ヴィランに襲われるという事故を起こした。
両親を殺されたことのトラウマで、動けなかった時、
「ひわぁ!」
と真っ先に飛んできてくれたのがかっちゃんだった。
ほかのプロヒーローがつく前にかっちゃんがヴィラン退治をしていて、プロモ顔負けだった。
その日私は告白的なことをした。
「かっちゃん!」
「んだよ」
「かっちゃんは私のヒーローだよ」
「当たり前だろ、お前は俺の」
その後の言葉を聞いて、かっちゃんはそういう風にしか思えないんだと実感した。
「お前は俺の幼なじみなんだからよぉ」
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