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本当に大好きです…😭💗今までWebでのみ作品を拝見させて頂いてたのですが、好きすぎて感情の抑えが効かなくなってアプリを入れました…泣いてしまうほど作品を好きになることはほんとになくて自分でもびっくりしているのですが、浅間さんの作品は、ほんとに全てが大大大好きです!!💕まだまだたくさん愛を伝えたいのですが、あまりこのお話に関係がない私情を挟んでしまって申し訳ないです…これからもずっと見させて頂きます

ほんとにこういう行為を下品に書かないのは貴方しかいません😭 だから続きが気になるってなるのは読んでて不快感がなくこっちとしても嬉しいことです!あと普通に言葉選びがオシャレすぎません!?
⚠︎年齢指定作品です。未成年の方は読まないでください⚠︎
前回に引き続きシャン🌩️×与太🤝です。
両者ともに特定多数の相手との経験があることを仄めかす描写があります。
=====
「ッふ、は……なァ旦那。さっきから、何してんだい……?」
「んー……」
噺家は深く吸った息を混ぜながら、天井を見上げたままの姿勢で問うた。飴屋はと言えば、その噺家の脚──正確に言うと、つま先から脛、膝の裏ときて今は内腿のあたり──を手のひらで包んだり、指先でなぞってみたりしている。かれこれ半刻ほど前から、噺家はすっかり剥かれてしまった襦袢を肩に引っかけたまま、ただ身じろぎすることしかできていない。
感度の良い身体なら、それこそ飴屋が今まで相手をしてきたような夜の街の女であれば気持ちいいのかもしれないが、噺家にとってはこそばゆいだけだ。特に内腿なんて太い血管の密集しているところでは性感など発達していなくても反射的に身体が跳ねてしまう。
これを勘違いされてはたまったもんじゃない、と抗議の声を上げた噺家だったが、どうやら飴屋の目論見は違うらしい。訝しむ噺家の方を一瞥するが手を止めることはなく、立たせた膝の周りをするりと撫で上げた。
「弱点を探れって言ったのは与太郎だろ」
「いや、そうは言ったよ。確かに言ったさ。それにしたってこりゃあ……」
「……お前、ほんとに大切にされてねえんだな」
「あん? ……ぁ、ちょっと──、」
それまで脚を撫でるだけだった指が、ふいに腰の付け根まで這い上がってきた。皮膚の薄い鼠径部の内側を汗ばんだ指が通り過ぎ、さすがの噺家も咄嗟に制止を求めた。
──すると、本当に動きがぴたりと止んでしまう。呆気に取られている噺家に、飴屋は淡々と問いかけた。
「人には誰しも……大体、触れられたくない場所ってのがあるんだよ。それはこういうプライベートな部位だったり、顔だったり、内臓だったりする」
「……それを探してるって?」
「まどろっこしいとか思ってるだろ。でも、これだって立派な弱点なんだぜ。……なあ、与太郎」
ちょうど腰骨の真ん中で止めていた指を再びゆっくり上昇させながら、飴屋は噺家の目をじっと覗き込む。
「ここ触られるの、嫌か?」
「……いや、別に嫌ってわけじゃ……急にそんなとこくすぐられちゃ、誰だって止めるだろうよ」
「じゃあ、声をかけたら触っていいか? それともくすぐったいのは好きじゃない?」
「、もう、好きにしてくれって──」
「だぁめ。それじゃ与太郎が気持ちよくないだろ」
まるで子供に言い聞かせるように嗜められ、噺家もそれ以上何も言えなくなる。今の飴屋はいつもの軽薄な態度とも『客』を前にしたときとも違う、どこか甘ったるい雰囲気があって落ち着かない。
流されるまいと噺家が目を逸らしてしまったので、飴屋は再び腰の感覚を探ることに集中することにした。青い血管の透けたそこはどこまでも不健康に細く、いっそ痛々しいほどに骨ばっていた。
──そこに指で強く押したような、あるいは噛みついたような青あざがあるのを見つけ、飴屋は顔を顰める。
「……お前が嫌がることはしたくない。だから、されたくないことがあるなら絶対に言え」
「はは……欲しいものは力づくで奪い取ってそうなツラしといてさ、随分と奥手じゃないか、旦那」
「意味ないんだよ、それじゃ──俺はお前が欲しい。身体だけじゃなく心も魂も居場所も何もかも全部、俺のものにしなきゃ気が済まねえんだよ」
「……ああ、そう……」
まるで歌劇にでも出てくるような熱烈な台詞だ、と噺家は思った。奥手に見えて強欲で、強欲なようで誠実で、それが全て本心からの言葉だと理解できるからむず痒い。
いずれ、この腕の中が噺家の居場所となるように。飴屋は凪いだ瞳のまま、大きな手のひらで噺家の細腰を撫で上げる。
「脇腹、弱いんだな」
「っんなとこ、人間の大体は弱いだろうよ……」
「そうかもな。でも、感じ方は違うだろ」
肋骨の筋をなぞるようにかるく爪を立てたり、裏側から包み込むように優しく撫でたり、指一本で線を描いてみたり──いったいいくつ引き出しがあるのか、飴屋はありとあらゆる触れ方で噺家の反応をみていく。
それが何だか手慣れているようで悔しくて、噺家はわざと喉の中で『女形』の声を作った。
「っぁ、ン……」
「……おい、演技すんな」
「ちぇっ。何だよう、せっかくなら艶っぽい反応があった方が楽しいだろ?」
「お前んとこの『アニサン』とかいう奴らと一緒にすんじゃねえよ。俺はお前の本当の反応が知りてえの」
「……本当の、って……うひ、っ……!?」
間埋めに聞き返そうとした口は、間抜けな空気漏れによって邪魔されてしまった。飴屋はその反応に機嫌をよくしたらしく、ゆるく口角を上げながら同じ愛撫を重ねて続ける。
「はは、これ……アバラの裏っかわくすぐられんの苦手か?」
「はッ、だ、からぁ……っそんなの、得意な奴のほうが──あ、ちょっ、だははっ! ほ、ほんとに、やめ……っ!」
そして咄嗟に出た牽制の声で、責め苦はぴたりと止められる。噺家が息を整えるため体勢を変えようとすれば、支えるための腕がさっと伸びてきた。
気分を盛り上げるため抵抗でもしてやるべきか、それとも礼でも言えば良いのか。返答に迷った噺家が見上げてみると、いかにも楽しげな表情でこちらを見下ろしている飴屋と目が合った。
「かぁわい……な? こうやって、嫌ってときは嫌っつったらいいの。分かった?」
「……とんだ荒治療だね」
「俺は繊細な仕事は向いてねえんだって。ほら、もっとお前の弱点教えてくれよ」
言っていることは恐ろしいはずなのに、そう言いながら顎を掬う手はどこまでも優しく、まるで硝子細工でも扱うみたいに丁寧で。
──あぁ、こうして手懐けられていくんだろうな、と噺家は思った。
「首……は、嫌じゃないか? ここは皮膚も薄いし血管も太いから、警戒心の強い人間は嫌がるもんだけど」
「ん……別に、何ともないね。……っ、んふ、ちょっと、くすぐったいけど」
「くすぐったいのは?」
「……ああもう、嫌じゃないよ。こう言やいいんだろ」
「くすぐられても嫌じゃないのと、くすぐられるのが気持ちいいのじゃ違ってくる。……お前はどっち?」
……くすぐられるのが気持ちいい? そんな奴がいるものなのか。『本心で答えろ』と目で促されるまま、噺家は神経を集中させる。
「ほら、絞めたりなんかはしねえから力抜けって……ここは? 鎖骨の境い目」
「……特に、何も感じないね」
「そうか。じゃ次……首筋はどうだ?」
「っ、……ぞわぞわする、」
「うん。じゃあ、ここは触んねえ方がいいな」
首筋をなぞるようにつうっと撫でられて、また反射的に肩が跳ねてしまう。下手な奴ならこれを感じていると勘違いしてきそうなものを、飴屋はあくまでこちらの言葉だけを気にしているようだ。
くすぐったいだけで気持ちよくない。くすぐったいけど気持ちいい。気持ちいいけど好きじゃない──なるほど、確かにこの匙加減は人によって違うだろう。
そんなものは抑え込んで組み敷いて快楽で依存させて、無理矢理言うことを聞かせてしまえば良いのに。技術は十二分にあるのだから、それこそ、彼の『客』たちのように。
けれど飴屋はそうしない。飴屋が欲しいのは噺家の身体であり心であり、その存在の全てだから。飴屋にとって噺家は、唯一と言っていい特別な存在だから。
──それはそれで、悪い気分はしないじゃないか。噺家はゆるくかぶりを振って、喉元へ這わされた飴屋の手を上から包み込んでやる。
「……気持ちいいってわけでもないが……嫌じゃあないんだ、本当に……」
「ふうん。くすぐったいだけなのに、触ってもいいって?」
「特別だよ。……旦那だけ、特別にだ」
淡い行燈の明かりに照らされた噺家は今まで見たことがないほど妖艶な微笑を湛えていて、飴屋は思わず生唾を飲み込んだ。
甘言だ、こんなものは。きっと今までたくさんの男に同じようなことを言ってきたのだろう。……そんなことは分かっている。分かっているが、今この部屋にいるのは飴屋と噺家のふたりきりだ。
いらない言葉が口から出かけて、それを塞いでおくために飴屋は首筋へと噛みついた。跡なんかはつかないように優しく、そうっと慈しむように。
「あ、こら……っん、お前さん、犬じゃないんだから……」
「……はは、わん」
そう笑いながら吠える飴屋は、相当に躾のなっていない犬なのだろう。噺家の筋ばった首をあぐあぐと甘噛みしたあとで、お詫びのつもりなのか肉厚な舌をべったり這わせ、そのまま耳の後ろまでを舐め上げた。
「ッひ、ぃ……っ!?」
「んは……お前うまそうだな」
「洒落にならねぇんだよお前さんが言うと……なァ、もう気は済んだだろ? とっととやることやって帰んなよ」
「うん? だから、こっからが本番じゃねえか」
「……は? 本番って──、」
これ以上何を、と口に出すより先に飴屋は噺家の脚を開き、付け根の方まで露わにしてしまう。いつもであれば平静を保っていられるが、調子を崩された今では羞恥が蘇ってきてしまい、噺家はかすかに頬を赤らめた。
飴屋はそれに満足そうに笑み、わずかに頭をもたげた前側には目もくれず、後孔にそっと指を当てがう。
「ん……乾いちまってるな。どうせ安モン使ってんだろ、さっき買ってきたのがあるからちょっと待ってろ」
「そんなの、最悪唾でも付けときゃいいんだから……おいおい何だい、ほんとに良いやつじゃないか。ええ?」
「だからそう言ってんだろ」と呆れたように言う飴屋が袋から取り出したのは、この街で一番高い店で見かけたことのある温感タイプのジェルだった。兄弟弟子がいつも買ってくるような質の悪いものとは違い、冷えない、垂れない、乾かないと三拍子揃った優れもので、値段は桁が一つ違う。
見慣れない外装をしげしげと眺める噺家に飴屋は複雑そうな顔をした。
「そもそも男相手にあんな粗悪品じゃ摩擦が勝って痛ぇだろ……お前はもっと大事にされるべきなんだよ。せめてこれくらいさせてくれ」
「うわ、なんか粘度すご……じゃなくて、あー……じゃあ、あれだね。それに見合った奉仕でも──」
「だから、そうじゃねえんだって」
ぱちん、と蓋を閉め直し、飴屋はジェルのついていない左手で噺家の乱れた前髪を掻き分けてやる。
「これは俺がしたくてやってることなんだから、与太郎は気持ちよくなることだけ考えてりゃいいの」
「それは……落ち着かないねェ」
「落ち着く必要がどこにあんだよ。今からお前、俺に抱かれんのに」
「……っ」
そう薄く笑う声に、腹の奥の奥の方がずくんと疼く。そうだ、こんなに至れり尽くせりでまるで宝物のような扱いを受けているせいで忘れかけていたが、これは本来前戯と呼ばれる行為なんだった。
驚く暇もなく中途半端に抱き起こされて、背中と布団の隙間へ枕がひとつ差し入れられた。……なるほど、確かにこうすれば腰が自然と上を向いて、姿勢を保つのが格段に楽になる。
「んふ……随分、手慣れてんだね」
「余計なこと考えんな。ほら、まず中指から……挿れるぞ」
「う、ん……っ」
噺家の方とてもはや慣れたはずなのに、つぷ、と遠慮がちに入りこむたかが指一本に妙に緊張してしまう。飴屋の指は今までどういう使われ方をしてきたのか、やけに関節が太く癖がついており、入り口をぬこぬこ出し入れするだけで過剰な刺激を与えてきた。
「ッ、ふ……っなァ、分かってんだろ? もう、準備はしてきてんだって……指一本だけなんて、……い、言わずにさ、すぐに挿れたっていいんだよ……?」
「何度も言わせんなって。まずはお前の身体を知るところからだろ。……ほら、どうだ? 入り口はそんなに好みじゃない?」
「好み、っつうか……ん、何だろうね、気持ちいいってよりは、くすぐったいような……」
「じゃあ、されるのは嫌いじゃない?」
「……そう、なるね」
何故だろうか、いつもよりずっと尊重されているはずなのに、いつもよりずっと辱めを受けているような気がする。
噺家が粘膜に触れた箇所からじんわりと熱を発し始めるジェルに気を取られているうちに、飴屋は中指を更に奥へと進めていき、内側の壁をノックするようにかるく押し込む。反応をみながら指を曲げたままくるりと回したり、ゆるゆると抜き差ししたりして相変わらず『弱点』を探っているようだ。
「丁寧なのは結構なことだがね、こんな悠長なことやってたら、っ日が、昇っちまうよ……」
「別に構わねえよ。俺んとこには誰も来ねえし、お前も明日は出番ないだろ」
「まァ、向こう三日は劇場自体が休館だしねェ。そうは言ったって──ッん゛……っ!?」
完全に気を抜いていたその瞬間、飴屋の指がとある一点を掠めていった。噺家は咄嗟に口を抑えたが、忙しなく泳ぐ目とわずかに漏れ出た嬌声で飴屋は全てを察してしまった。
「お、与太郎の良いとこ、ここか?」
「あは……っ、何だよ、随分あっさり見つけちまって……ぁ、ッふぅ゛、っ……♡」
ついに見つかった『弱点』を見逃してもらえるはずもなく、とん、とん、と等間隔にノックされるだけで喉の奥から上擦った声が溢れてしまう。ずっと性感にギリギリ届かないような淡い愛撫を受けていたせいで、突然与えられた直接的な快感に頭と理性がついていかない。
飴屋はゆっくりと優しく、しかしやめることもなく断続的に、着実に噺家をだめにする動きを習得していく。
「……なあ、与太郎。ゆっくりしてやるからどんな感じか教えてくれよ」
「ど、んなって……?」
「んー……どうされるのが気持ちいいとか、どんなふうに感じるのか、とか」
──何だそれ、どんな羞恥プレイだ。内心青ざめる噺家だが、冷えていく頭とは裏腹に身体の方へはどんどん熱が集まってくる。
飴屋はこちらが何か言わない限り手を止めてはくれないようで、それでも「やめろ」と言う気にはなれない貪欲な自分が情けなくて仕方ない。しょうがないだろう。何せこんなに上手い人間となんて、久しく出会えていなかったのだから。
そうこうしているうちに飴屋は更に違う刺激を与えるべく噺家の『弱点』をまさぐり始める。
「なあ。俺の指ちぎれそうなくらい締め付けてきてっけど……苦しくねえ? 指増やしていい?」
「も、好きにしろって──あ゛、ッそれ、だめ……!♡」
「これ? この……お前の弱いとこ、指でぐりぐり押しつぶすやつ?」
「や、ッぁ゛、あぅ゛……っ♡ 〜〜ッだめ、って、言ってんのにさぁ……っ」
「……ほんとに? こうされんの気持ちよくない? されたくない……?」
「そ、れは……ぁ゛、ぁあ゛っ……♡」
ただでさえ身体が勝手に跳ねるような快楽を産んでしまう刺激を、飴屋は無慈悲にも指を二本に増やして仕掛けてくる。先ほどよりも逃げ場のない状態で『弱点』をいじめられ噺家は瞳に生理的な涙を浮かべた。ちくしょう、こんなことなら最初から甘んじて受け入れておけばよかった。
噺家が飴屋の声に弱いことも勘付かれているのかわざと耳元でぼそぼそ囁かれ、まともな思考すらも絡め取られていく。飴屋の言うことを聞かない限りずっとこのままだと悟った噺家はとうとう観念して、震える唇を薄く開いた。
「っき、もちいいけど……っ♡ これじゃ、……すぐに果てちまう、から……♡」
「ん? なに、イきたくねえの?」
「……そ、じゃなくて……」
「なあ、ちゃんとお前の言うこと聞いてやるからさ……」
「ぅ゛ーー……♡ ……その……も、もっと、…………ゆっくりしたい、んだよ……」
噺家はあまりの羞恥に両腕で顔を覆いながら、やっとのことでそれだけ絞り出した。最初きょとんとしていた飴屋はみるみるうちに口角を吊り上げて、人差し指と中指で苛んでいた『弱点』を解放してやる。
「はは、なにお前、けっこう甘えたがりなの? かわいー♡」
「っもういい、いいから、好きにしなよ。さっきまでのやつを続けたらいいさ……!」
「拗ねんなって。言ったろ、教えてくれりゃその通りにしてやるって……ほら、じゃあそんな甘えん坊の与太郎くんは、どんなふうに触られるのが好きなんだ?」
おどけたような口調で、しかし柔らかく、こちらを労るような声色で。飴屋の指先は未だ噺家の『弱点』にぴったりと当てられたまま、まるで首にナイフでも当てがわれているような状況だ。
これは脅しだ。それなのに態度だけはどこまでも従順なものだから、こちらが上に立たされているのだと勘違いしてしまう。
この男は今までこうして『客』を増やしていったのだろうなとぼんやり考えながら、噺家は自分の身体を見下ろしてみる。
この身体の弱点、好きな触り方──こんなふうに他人に手綱を握らせるのは、一体どれくらい振りだろうか。半分は緊張で、もう半分は期待で、噺家の鼓動はことに早まる。
見上げてみれば変わらずこちらを見下ろす金色が蠱惑的に弧を描いていた。
「……そんなこと言って、後から自分の好きにしちまう気なんだろ?」
「んー? 最後まで従えって言われりゃそうするし、もし──そうされるのが好きなら、そうするぜ」
「途中から、お前さんに好きにされるのが好きになるって?」
「さてな。でも、『そういう奴』は多い」
「……そうかい」
噺家がつまらなそうにため息を吐いても飴屋は軽薄な態度を変えず、どうやら経験豊富なことを隠す気も無いらしい。
なら、任せてしまった方が楽だ。噺家は斜めに飴屋の方を見つめたまま、後孔に指を突っ込んでいる方の手首をくいと掴んだ。
「なぁ、旦那。だったら端から好きにしちまいなよ。……後のことは考えておいてやるから、今夜はお互い後腐れなく、乱れちまった方がいい」
「……ふうん? そうやって逃げるんだな」
「そんなつもりは無いさ。ただ、今の旦那はとても正気じゃ──」
「じゃあ、お望み通り好きにしてやるよ」
あっと言うが早いか、飴屋は噺家の両手を絡め取って頭の上でまとめ上げ、抵抗のできないようにしてしまう。あまりの手捌きに反応できないでいた噺家は、次いで自らを襲った強烈な快感に引き攣ったような悲鳴を上げた。
「ッあ゛、ひ……っ!?♡ ちょっ、いきなり……!!」
「ゆっくりしたいってことはつまり、こうやって優ぁしく撫でてやったり……」
「んぁ♡ あ゛、はぁ……っ♡? や、さし……♡」
「かるーくトントンつついてみたり〜……」
「ぁ、あっあっ♡ それ、っ♡ だ、めぇぇ゛……っ♡」
「ぎゅ〜〜……って、押し上げてみたり?」
「ッ!?♡ ぁ、これやば……っ♡ ぁああ゛ぁッ……♡♡」
「んはは、鳥肌すげー」
朗らかに笑いながらも責める手は止めることも緩めることもしようとはせず、噺家はじわじわととろ火で炙られるような快感を腹の底に溜め込むことしかできない。
「ッわ、悪かった、あやまる、から……あっ♡ 〜〜っも、やめ……♡」
「なんで謝んの? そんなつもりねえんだろ? 俺今、そんなに嫌なことしてるか?」
「ちが、ちがうぅ……♡、お、怒らせたなら、ッ♡ ……訂正する、から!♡」
「へえ。俺を怒らせた自覚はあんだ? なんで分かってんのに言うかなあ。俺、あんたには優しくしたいっつってんのにさあ……」
「だから、すまなかったって──ッあ!♡、だめ、それだめ……っ♡」
『弱点』のしこりを大ぶりな動作で揉み込まれ、噺家はがくんと背をしならせる。頭の中が真っ白になり、まともな思考は全て放り出されてしまった。
飴屋は行燈を頼りに悶える噺家をじっと見つめ、浮いた肋骨を手のひらでそっとなぞる。それだけで噺家にとっては過剰な刺激となり、ただでさえ現状を処理しきれない脳内でばちばちと火花が散った。
「ゃ、もうむりもうむり゛ッ♡ っいく、イっちゃうからぁ゛♡♡ ね、おねがいはなして、ほんとにだめだって……っ♡」
「はっ、お前も普通にイくとか言うんだ? ……あーあ、俺が言うこと聞いてるうちに素直になっときゃ良かったのにな。ほら、痙攣ひどくなってきた……」
飴屋がわざと強調するように教えてくるせいで嫌でも理解させられてしまい、噺家は一段と呼吸を浅くする。どうにか抵抗しようもしても片手で掴まれた腕はびくともせず、どころか身じろぎさえ満足にできない。
──まずい、このままだととんでもなく深い絶頂に追いやられてしまう。そう気付いたときにはもう遅く、腰の奥深くから痺れるような波が今まさに這い上がってきているところだった。
「う゛〜〜……っも、だめ♡ イくっ♡ おかしくなる゛っ……♡♡」
「は。良いねえ、お揃いじゃねえか。俺はあんたに惚れた日からさ、正気だった時なんざ一瞬たりともねえんだわ」
「へ──ぁ゛、や、まって♡ やだ、やだっ……あ゛〜〜〜……ッ♡♡♡」
飴屋の言葉に気を取られた瞬間、蓄積された快感が一気に爆発した。噺家は背骨が折れそうなほど弓なりに反らせ、腰まで跳ね上げてそれをやり過ごそうとする。が、当然それが叶うはずもなく。
「んぎッッ♡♡ ──〜〜ッぁ゛♡、ああ゛、あァああ゛ぁ……っ♡♡♡」
「うわー、すげえ。打ち上げられた魚みてえ」
呑気に呟きながら、飴屋は空いた手で絶頂の只中にいる噺家の脇腹をするりと撫で上げる。──すると、
「は、ぇ、なに……!?♡ ぁ、おかし♡、なんで……ッイくの、おわんなぃ゛っ……♡♡」
「だから言ったろ、くすぐったいのが気持ちよくなるんだって。……ほら、こうなったら腰も、腹も、首筋も……全部気持ちいいだろ」
「んぁ、あ゛ぁ……っ♡、やだ、ぁ……っ♡」
「ほんと? 本当にやだ……?」
「っそ、れは……ぁ、またいく……ぅ゛♡♡」
飴屋が手を離してもなお、噺家は小さな痙攣を続けている。よほど深く達したのだろう、両の目はふらふらと上辺を漂いながら、まるで焦点を結んでいない。
その割には射精をしていないようだが、そういうふうに身体を作り変えられているのだろうか。手持ち無沙汰に腰骨のあたりを指の背でなぞってみると、はくはくと開閉する鈴口から透明な液がとぷりとこぼれた。
「ひ、ッぁ゛……♡♡ も……ゆる、して゛……っ♡」
「……それは与太郎次第だなあ。どう? 俺とちゃんと向き合う気んなった?」
「むきあう、ちゃんと、きみに──……ぁ、旦那、に……向き合う、から……」
布団の上で身をびくつかせながら、噺家は震える声で頷いた。
──『きみ』。先ほどから口調が崩れているところを見るに、これが噺家の素の口調なのだろうか。飴屋はすっかり大人しくなった噺家の顔を覗き込み、涙の跡を指で掬って舐め取った。
「……なあ、その演技もやめろっつったらやめてくれんの?」
「は? ……そんなの、言われたこと、」
「じゃやめて」
「……はぁ、何なのきみ……これでいいの?」
そう不貞腐れたように吐き捨てる様子は、『噺家与太郎』としての姿とはすっかり違って見えた。不満げにこちらを見上げる瞳はいつもより燻んでいて暗く、先ほどまでの媚びやあざとさは一切感じられない。
なるほど、と飴屋は思った。
「お前、そうしてた方がいいよ。そっちの方が可愛げあるし」
「……変わってんね、きみ」
機嫌を取り戻したらしい飴屋に安堵しつつ、噺家はようやく息を整え終えた。未だ身体のそこかしこに甘い余韻が残っているが、これから何をさせられるんだろうか。今みたいなことを一晩中続けられるようなら、さすがに一方的な行為に慣れたこの身体でも体力的に厳しいだろう。
その飴屋はひとしきり噺家の様子を観察し終えたあとで、再び噺家の首元へと手を伸ばした。
「で、どうなの。ここ触られんの、気持ちよかった?」
「見て分かんなかった? 僕もう見ての通り満身創痍なんだけど」
「僕……ふふ、まあ、そうだな。……で? これされんの好き?」
「…………あぁ、じゃあもう認めればいいんでしょ、好きだよ好き。わりとね。中でも何言うの? 指先でこしょこしょされるのよりは手でこう……ふわ〜ってされるやつのが好きだよ」
「ん、こういうやつ?」
「……、うん……」
試しに首を包み込むようにてのひらを沿わせてやると、強い性感を得たあとで感度が上がっているらしい噺家は、うっとりとまぶたを閉じて感じ入った。確かに、これは嘘偽りなく好みの感触であるように見える。
「ん……は、っ ……はは、なんか……悔しいな。場数はぜったい、僕のほうが踏んでるはずなのに……こんな青二才に、好き勝手されるとか。僕もう看板下そうかな」
「青二才って、お前何歳なんだよ……?」
「え? 協会のホームページ見たことない? 21歳だよ。永遠にね」
──永遠に、って。年増が年齢を誤魔化すときの常套句じゃないか。
確かに噺家は言動の端々からはたちを過ぎたばかりの若者とは思えぬ貫禄というか、どこか古めかしいような雰囲気を感じることがある。一見すると飴屋とそう変わらない年齢なように思えるが、実際はどれだけ離れているのだろう。
貼り付けたような笑みを浮かべる噺家を見ていると何だか触れてはいけない話のような気がして、飴屋は早々に話題を切り替えることにした。
「まあ、な。……俺だって、好きでこんな技術つけたわけじゃねえよ」
「へぇ? こういうテクニックって女遊び以外に活用できるもんなの?」
「なんか嫌味だな……いや、女には興味ねえんだよ。男もだけど。でもこんな仕事やってっとさあ、必要になってくんだよ。『こういうテクニック』がさ」
皮肉を押し返した飴屋はおもむろに上体を起こし、ベルトをくつろげ始める。噺家にとってはあまり馴染みのない金属音をぼうっと聞きながらそれを眺めていると、難解な構造をした布からぬっと姿を現したのは、まさに凶器と呼ぶのが相応しいほどに天を貫く規格違いの肉棒だった。
それを間近で捉えた途端、噺家の思考が一瞬止まる。
「どう? これ、女の身体に挿れてもいいと思う?」
「……いや、いやいやいや、だめでしょ。裂けちゃうよそんなん挿れられたら。てか男でもそう。誰でもそう」
「だよなあ。だから本番やんないでどうにかするしかなくってさ。一回見せたら泣かれたことあるし」
「泣くだろ誰でも。僕も今ちょっと泣きそうなんだけど」
実際目頭に薄く涙を溜めながら、噺家は右の中指と親指で簡単な採寸を試みてみる。乾燥した水かきがひび割れそうなほどに指を開いて飴屋の下生えから伸びるそれに当てがい、そのままの形から動かさぬように自身の腹の上に持っていく。
その長さは優に、直腸の終わりまでを貫く位置まで到達するらしかった。
「冗談じゃないよ。えぇ? 殺す気か? 筆を下ろした今日がお前の命日だってこと??」
「でもお前慣れてそうだしイケんだろ。なんか後ろも縦に割れてるし」
「限度があるだろ限度ってもんが。こんなバケモンみたいなサイズがその辺にごろごろいてたまるかよ。これに比べたら兄さん方のアレなんてあれだわ、ポークビッツだわ」
「へへ……」
「照れてんじゃないよ。今あんま褒めてないからね、ちなみに」
鼻の下を擦り照れ笑いを浮かべる飴屋に、噺家は一周回って冷静な頭で応対する。その冷静な頭では今すぐにでも逃げ出した方がいい、あんなものを受け入れるべきではないと警鐘を鳴らしているのに、本能では反対に飴屋のことを早く受け入れたいと下半身が勝手に弛緩し出していた。
太さも長さもさることながら、特筆すべきはその凶悪なほどに張り出たカリ首だ。ただでさえボコボコ浮いた血管が快楽神経を軒並み逆撫でていきそうなのに、あんなもので抉られたら内臓の形が変わってしまう。
散々甚振られた『弱点』と、更にその奥の行き止まりまで根こそぎすり潰していって、腸壁をみっちり埋めるであろう質量はその感覚を少しも逃してはくれなくて、そんな、そんなの、耐えられるわけが──……
「……ふ、見すぎ」
は、と空気漏れのような息を吐いて噺家は平素を取り戻す。飴屋の持つ凶器から目が離せず、気付けば頬擦りでもするような距離まで近づいてしまっていた。慌てて顔を離そうとしたところで後頭部を飴屋に捕まえられてしまい、強制的に間近で見つめることになる。
すん、と無意識のうちに鼻を鳴らしていたが意外と作法はきちんとしているらしく、仄かな汗の匂いのほかは無臭に等しい。いつもは病気になりそうな悪臭にひたすら耐えながら事に及んでいた噺家からすれば、それだけで飴屋は桁違いに上質な相手であるといえるだろう。
早くも瞳を蕩けさせる噺家に飴屋は掠れた笑みを溢し、噺家はそれによって再び意識を呼び戻された。
「──ぁ、ど、どうする? 口なら貸せる、けど」
「そうじゃなくて、お前ん中に挿れたい。だめ?」
「だめ、っていうか……」
「……言い方変えるわ。与太郎のなかに入りたい。この薄い腹の奥まで挿入って、内側も外側もみんなめちゃくちゃにして、そんでぜんぶ俺のものにしてやりたい。……なあ、」
だめ?
念を押すように耳元で懇願され、噺家は息を詰まらせる。そんなふうにおねだりしたってだめだ。言い方が変わったところで結局噺家はめちゃくちゃにされてしまうのだし、その内容だってほとんど脅しのようなものだし、第一全然可愛くない。
そう、頭では分かっているのに。
「その、…………優しくしてよ……?」
「! ……ん、分かった」
先までの飄々とした態度はどこへやら、随分としおらしくなって生娘のようなことを言う噺家に、飴屋は心底嬉しそうに同意した。緊張をほぐすためかそっと痩躯を抱きしめる腕は優しく、下腹にぐりぐりと当てられる剛直は恐ろしい。
さて、飴屋にとってこの『同意』というのがどこまで本気なのか、そもそも守る気概などあるのか──だが。