テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
気がつくと
僕はいつもの劇場に居て、スクリーンに流れている映画を見ていた。
スクリーンでは、主人公とヒロインがキスをしているシーンが映っている。
そして次にエンドロールが流れ出した。
今話題の新作映画だが、評判の割に面白くない。というかどこかで見たことあるようなものばかりで、まぁはっきり言うと僕には合わなかった。こんなものを見るくらいなら2時間半寝てればよかったかもしれないが、きっとどこかで面白くなるという淡い期待を胸に抱いていたが、結果は言うまでもない。
まぁ言っているのだが。
だが周りの客はそうではないらしく、劇場内は啜り泣く声や涙声で賞賛を語り合う者も居た。
エンドロール中に飛び出すせっかちな奴も居る。
「つまらんな…」
ふと、隣の客がそう呟いた。
僕が隣を見ると、明らかに柄の悪そうな女性が退屈そうにため息をついていた。
僕の視線に気付いたその人はその鋭い眼光でチラリと見て言った。
「…何見てんだよ」
ひぃ!怖い!
僕は慌てて視線を逸らし、エンドロールがもうすぐ終わりそうだったので席を立った。
足早に劇場から飛び出し、さっさと家に帰ることにした。
すると、後ろから怒号のような声が聞こえた
「オイッ!待ちやがれ!!」
ひぃ!!な、なんですか…!
僕は恐る恐る振り返ると先程の女性がこっちに向かってくる。
「ひぃ!!な、なんですか…!」
と、僕は心の中で思ったことをそのまま口に出した。
「これ…忘れもんだろ」
そう言って手渡されたのは僕のハンカチだった。どうやら慌てて出てしまったのでポケットから落としてしまったらしい。なんだ、いい人…💕
「あ、ありがとうございます。」
そう言って僕はハンカチを受け取ると彼女は鋭い眼光でキッ!っと睨みつけると背を向けて帰ろうとしていた。
「ちょっと!待ってください!」
僕は咄嗟に引き止めてしまった。あぁどうしよう。なんで引き止めてしまったんだ。
彼女が何も言わずに振り返った。
「あの…あれ…夕飯食べましたか…?」
彼女は鋭い眼光を向けながら何も言わない。
少しの沈黙の後一言、
「これからだけど」
と言った。
だから僕は
「良かったらお礼にご馳走させてくれませんか…?」
と、ドキドキしながら聞くと彼女はまたもや少し考えてからこっちに近づいてきた。
すると僕の手首をがっしりと掴み、どこかへ引きずるように連れて行かれた。
あぁ…!こわい!
僕は心底怯えていたが、連れていかれたのは案外近場で劇場の反対側にあるピザ屋さんだった。
「ここは…」
僕がそう聞くと彼女は
「メシ、奢ってくれんだろ」
と言った。
ああ、OKということなのか…不器用な人だな…
こうして僕はガラの悪い彼女とディナーを取ることになった。
227