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みら

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#BL
kaede🍁
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結局、佐久間を追い出すことはできなかった。
「絶対聞かないで」
そう言った阿部に対して、佐久間は「気になるじゃん!」と当然のように椅子を持ってきて、阿部、深澤、渡辺の前へ座った。
「で?」
「何が?」
「何の会議?」
阿部はまだ話すか迷っていた。
深澤と渡辺を見ると、二人とももう隠し通せないという顔をしている。
「……絶対笑わない?」
阿部が聞くと、佐久間は少し考えた。
「内容による」
「じゃあ言わない」
「待って待って! 笑わない!」
「本当に?」
「頑張る!」
「頑張るって何」
渡辺が呆れる。
結局、最初から全部説明することになった。
現実へ戻ってきてから、目黒が以前のように跡を残さなくなったこと。
キスもするし、ハグもする。
好きとも言うし、毎日一緒に眠る。
それなのに、そのあとは普通に寝てしまうこと。
「俺、飽きられたかなって」
阿部が言うと、佐久間の眉が上がった。
けれど、まだ何も言わない。
さらに彼シャツ作戦のことも話した。
「ソファで寝たふりした」
「寝たふりまでしたの?」
「そこはいいから」
「で、めめが帰ってきて」
深澤が続きを引き取る。
「あべちゃんをベッドまで運んで、布団かけて」
渡辺も続ける。
「額にキスして終了」
「……へえ」
佐久間が頷く。
そして、最終兵器。
「最終兵器って?」
佐久間が聞くと、阿部がものすごく嫌そうな顔をした。
代わりに渡辺が答える。
「前、俺が選んだやつ」
数秒考えたあと、佐久間が「あ」と声を上げた。
「ランジェリー?」
「大声で言わないで!」
阿部が慌てる。
「ごめん!」
「それ着ても、めめ、カーディガンかけたんだって」
深澤が言うと、佐久間は今度こそ完全に黙った。
「風邪ひくよって」
渡辺が付け加える。
「それで額にキスして、台本読みに戻った」
「……」
佐久間は腕を組んだ。
阿部、深澤、渡辺の三人がじっと見ているのに、何も言わない。
ただ真剣な顔で考えている。
一分も経っていないはずなのに、阿部にはものすごく長く感じた。
「……佐久間」
「んー」
「何か喋ってよ」
「今考えてる」
「その顔で黙られると怖いんだけど」
佐久間は少しだけ首を傾げ、それから阿部を見た。
「大切にしたいだけじゃないの?」
阿部が瞬きをする。
「……大切に?」
「うん。俺からしたら、今の方が安心なんだけど」
「何で?」
「だって」
佐久間は指を折りながら言う。
「噛み跡が痛そうな日もないし」
「身体が怠そうな日もないし」
「衣装さんに首隠せる服ありますかって相談しなくてもいいし」
「そこまで言ってない」
「でもあったでしょ?」
「……あったけど」
佐久間はそのまま続ける。
「ちゃんと寝て、朝起きて、普通に仕事来て、痛いところもなくて」
「蓮に毎日ハグしてキスして、好きって言われてるんでしょ?」
「……うん」
「じゃあ俺、今の方が安心」
佐久間は本当に不思議そうな顔をしていた。
阿部が少し黙る。
隣で深澤がぽつりと呟いた。
「……お母さんみたい」
佐久間がすぐ振り返る。
「誰がお母さんだよ!」
「いや、考え方が」
深澤は笑う。
「だって心配じゃん!」
「ほら、お母さん」
「違う!」
渡辺も少し笑っている。
「でも言いたいことは分かる」
「でしょ! 翔太は分かってくれる!」
「お母さんは否定しないけど」
「翔太まで!」
阿部も少しだけ笑った。
けれど、すぐに表情が曇る。
「……大切にしたいだけ」
小さく呟くと、佐久間が頷いた。
「そうじゃない?」
「蓮って昔から、あべちゃんのこと好きすぎるじゃん」
「それは分かってるけど」
「じゃあ急に飽きるとは思えない」
「……」
佐久間は少しだけ真面目な顔になる。
「現実に戻ってきて、色々あったじゃん」
「うん」
「だからさ、前と同じじゃないからって、気持ちが減ったって意味とは限らないんじゃない?」
阿部は何も言わなかった。
その言葉は、深澤と渡辺が言っていたこととも少し似ている。
頭では分かる。
目黒が自分を大切にしてくれていることも、好きでいてくれることも、毎日十分すぎるほど伝わっている。
それでも。
以前とは違う。
その一点が、どうしても気になってしまう。
阿部は自分の指先を見つめた。
「でも、やっぱり気になる」
「何で変わったのか?」
「飽きたわけじゃないって思いたいけど」
「俺だけそう思ってる可能性もあるし」
深澤がすぐに言う。
「だからありえないって」
渡辺も頷いた。
「俺もそれはないと思う」
「でも、理由は分かんないんでしょ?」
阿部が二人を見る。
「……」
「……」
深澤と渡辺が黙った。
「ほら」
「そこは本人しか分かんないから!」
深澤が反論する。
阿部は再び小さく肩を落とした。
その顔を佐久間がじっと見る。
さっきまで少し面白そうに聞いていたけれど。
阿部本人は思っている以上に不安らしい。
佐久間はもう一度腕を組んだ。
「……まあ」
「何?」
阿部が顔を上げる。
佐久間は少し考えながら言った。
「案を出せないことはない」
三人が一斉に佐久間を見る。
「え?」
深澤が聞く。
「あるの?」
「多分」
渡辺が眉を寄せる。
「多分って何」
「まだ頭の中で整理してるから」
阿部が少し身を乗り出した。
「何?」
「待って」
佐久間がテーブルの中央を見ながら何やら考え始める。
その様子を見て、深澤がゆっくり椅子を引き寄せた。
「じゃあ、会議続行?」
渡辺も諦めたように座り直す。
「もう四人になったけど」
阿部も椅子を少し前へ寄せた。
佐久間が三人を見る。
「よし。一回ちゃんと考えよう」
「だから何を?」
佐久間は少しだけ笑った。
「蓮が本当に我慢してるのか、それとも別の理由があるのか」
阿部、佐久間、深澤、渡辺。
四人がテーブルを囲む。
最初は、阿部の「倦怠期かもしれない」という一言から始まっただけだった。
それが彼シャツになり、最終兵器になり、とうとう四人がかりの作戦会議になっている。
佐久間はもう一度考え込んだ。
四人の新しい作戦会議が始まった。
コメント
1件
あおいです🌷 佐久間さんの「大切にしたいだけじゃない?」って言葉、すごく響きました。噛み跡とか衣装さんへの相談とか、阿部さん視点では気づかなかったものをちゃんと見てる感じがして。前と同じじゃない=気持ちが減ったとは限らないって、その通りだなあって。四人の作戦会議、次が気になりますね。