テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
え び ふ ら い
2,047
#新人組のblでは無いです
サア
103
瑞希 流星♟也中
208
雨は嫌いじゃない
傘を叩く音も、石畳を濡らす雨粒も
誰かの足音さえ、
飲み込んでしまう静けさも
霧がかかって世界から
色が少しだけ薄くなったような
そんな雨の日が好きだった
だから、雨が降るたびにこの東屋へ足を運ぶ
首都の喧騒から少し離れた、小高い丘の上
古びた石造りの東屋は
今日も静かに雨を受け止めていた
東屋へ続く小道には、花が咲いている
雨に濡れた花びらは深く色づき、
それだけが、この景色の中で
色を忘れていないように見えた
雨粒は葉を伝い、雫となって地面へ落ちる
小さな水たまりには波紋が幾重にも広がり
揺れる紫陽花を静かに映していた
ゆっくりその小道を歩き、東屋へ入る
ベンチに座り目の前に広がる雨を
ぼんやりと眺めた
遠くの街並みは白く霞み
人の姿はほとんど見えない
風が吹くたび、東屋の屋根から
雨粒がさらさらとこぼれ落ちる
何をするわけでもない
ただ、ここで雨を眺める
それだけで十分だ
雨の日だけは、時間までもが
ゆっくり流れている気がする
小さく息をつき、東屋の外へ目を向けた
その時だった
ぱしゃっ。
雨音に混じって、小さな音が聞こえた
気のせいだろうか
そう思い、再び雨へ視線を戻す
けれど
ぱしゃっ。
、、、ぱしゃっ。
今度ははっきりと聞こえた
水たまりを踏む音
その音は少しずつ近づき、
やがて東屋の前で止まる
私はゆっくりと顔を上げた
雨の向こうに、一人の姿が立っている
服の裾から雫が滴り、
濡れた靴先には雨水が溜まっていた
年は、自分とそう変わらないように見える
その人は目が合うと、
少しだけ困ったように笑う
そして、小さく口を開いた
「、、、お隣、失礼してもいいですか?」
コメント
1件
イヴさん、こんにちは、寺島あおいです🤍 第1話「雨宿り」、読ませていただきました。雨の情景がとても静かで美しくて、惹き込まれました。特に「雨の日だけは、時間までもがゆっくり流れている気がする」という一文、すごく好きです。東屋にふと現れた人物との出会い、あの自然な間合いと「お隣、失礼してもいいですか?」という言葉に、これから何かが始まる予感がして、続きが気になりますね。とても素敵な幕開けでした🌷