テラーノベル
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第31話
その言葉を聞くと皆、耳を疑った。
「それ言っていいのか?」
最初に口を開いたのは状況を呑み込めず目をパチクリさせているノアだった。
言っちゃ駄目だったら言って無いし……馬鹿にしてるの?
「もう、見られたらしょうがないでしょ? 濡れ先は露をともえ」
最初はひた隠していたけど、もうあきらめた。
そうじゃない? だって、もう見られたんだから説明を長々と話すんじゃなくて、事実をパッと話した方が段取りはいいでしょ?
「世界一の剣を振るった魂がここに宿ってるんです。それで、貴方たちが敵う訳がありません」
私が笑顔の圧をかけながら言った後は、気まずい沈黙が流れた。
……酷い。何か、驚いたり反応してよ。
「……何か、秘密はあると思った。まさかそんな事だったなんてな」
カールさんは、そう言って微笑んだ。
え? 驚かないの?
「えぇ。ませてるとは、思ってたけどね」
マリーさんも、ふふっと笑っている。
「最初から、あんなにできたから困っていたが……そんな秘密があったのか」
カールさんも同じように笑いながら私の頭を撫でた。
また言うけど、親子って似るもんだね。うん。
謎な所が似るヒメル家だな……
でも、良かった。皆が許してくれて。
「ありがとうございます。それで」と私はあの人たちに視線を向けながら「貴方たちには、最初から勝機は無かったわけですよ」と微笑んだ。きっと、恐怖の沼に埋もれているのだろう。
それにしては、大分危なかったけど……
でも、相打ち……う〜ん……
ま、この人たちの勝ちは、商品を盗む事か。私たちがそこで留めたんだから勝ち。
「ま、今はこんな感じに衰えてるので、選ばれないだろうですけど。取り敢えず、私から言いたい事は以上です」
言いたい事は。
聞きたい事は山程ある。
「じゃあ、もう一度最初から説明させてもらう」
カールさんが前のめりになりながら謎の威圧感を出した。
……あれから全部、あの人たちの口から聞いた。
魔力の動きに曇りは無かった。否、嘘を吐いていないということだ。
私は自分のベッドに転がって、まとめたノートを眺めた。
……取り敢えず、私を狙ったらしい。
私が、こんなやつでって分かってたのかな? というか、あのサントラップに来た時に拐われた時に捕まえられた人も同じ系列らしい。というか、少し合わせてもらったけど、思ってた魔力じゃなかった。
魔力を変える魔法があるのだから、不思議ではないけど、あんなに背が高くなかった。普通に三十代だったし……
私が思っていたのは、十代後半の華奢な体格の女の子。魔力は強く、邪悪な色をした魔力だった。
彼女は……いや、もしかして捨て駒……
「分からないな。ま、後はやってくれるでしょ」
私は、保安局の人や聖騎士に任せる事にして、ベッドの上て目を瞑った。
❂
心の灯。そんな物が俺にあるのだろうか? 言われても、実感が無い……そう思えない……何で? どこにもいき場のない気持ちはどう処理すればいいの?
俺は部屋のベッドの上でぼんやりと白い天井を眺めた。
俺は、離してないと言われたが、繋いでいる先で傷付けたら……いや、死んでしまったら……
怖いんだ。いくら、そう言ってくれても……信じられない訳じゃないけれど、怖い。
何が怖いのかも分からない。なくしてしまいそうで、間違えてしまいそうで、傷つけてしまいそうで……何を言いたいんだろう……
だって、リナは沢山の経験と、景色と、人と、出会ってきた……なのに、こんなやつが……ついていけない。
そっか。ついていけないって事なのか。俺は、期待に応えられなかった。相棒って言われるにはまだ……
『君の戦い方。リーパー……いや、セリーナと並べるさ』
どこからともなく声が聞こえた。
誰だろう?
先ずは率直にそう思った。
ってか、リナさんをリーパーって……リーパーってどんな意味?
次に、ちゃんとした疑問が俺の頭を過った。
『死神って意味だよ。君の器は大きいって、あの子が選んだんだ。あんな、朴念仁が相棒を作るなんてね』
朴念仁……? 死神……? どこが?
また疑問符が増えた。
『昔。殺し屋だった頃に、僕がそう名付けた。名前は■■■だったね。その前は■■■』
肝心な名前がノイズに邪魔されて聞こえない。
『ま、後は後ほどね』
そう言ってその声は聞こえなくなった。
は、はぁ〜……?
俺は、今日一驚いてこれから数日は何も考えられなかった。
逆効果だったのか否か、その声の正体の人はそれを見据えてなのかも分からないけれど、俺はその策にハメられたのは唯一分かる事実だった。
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コメント
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秘密を打ち明けた後のカールさんやマリーさんの受け入れ方がすごく温かくて、ほっとしました。「親子って似るもんだね」の一言がいいですね。後半の「俺」の視点は、相棒としての自信のなさが切なくて……。リーパー=死神という声の正体も気になります。名前がノイズに消えたのも伏線っぽくて、続きが楽しみです!