テラーノベル
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キキ―――――ッッ、ガリッ
―うわっ!やられた!―
金属同士が擦れ合う嫌な音がした時、竜馬は接触事故を起こしたことを悟った、最悪な気分だ、今朝この新車を納車したばかりなのに、といってもメビウスのディーラーが進めてきたので購入しただけだったが
実際ここではアメリカで通常に走っている、唸っているような爆音を鳴らす、金属の塊のような車は道路を走っていない、竜馬は苛立った、この朝の渋滞ラッシュの時に、どうしてそんなスピードでぶち当たってこれるんだ!
竜馬は運転席から体を乗り出し、ぶつかられた車を見た、なんとおもちゃみたいな軽自動車じゃないか!アメリカでは到底お目にかかれない車だ
このジャガーにぶち当たってくるなんて、度胸だけは褒めてやろう、それかジャンキーに決まっている
「どんなヤツか顔を見てやろう!」
竜馬はジャガーから降りた
カチッ・・・
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―ジェニと竜馬が遭遇するまであと1分―
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―禁欲生活が長過ぎたせいだ―
ジャガーに車を当てられた「当り屋の女性」と初めて対面した時の自分の反応について、竜馬はそれ以外の理由など思い浮かばなかった
男を釣る当たり屋としてはまさしく適役だ、見る者の目を奪う、愛くるしい顔立ち、白い肌、艶めかしいホットパンツから伸びている脚線美に大きな瞳・・・竜馬の好みにぴったりだ
彼女を一目見た時から湧き起こる強烈な欲望に動揺した、下半身が不意に張り詰めるのを抑えることすらできず 、竜馬は当惑し当惑したが、目がもっと彼女を見ろ!と言っている
特に唇がいい・・・ 歳はいくつぐらいだろうか、どうして彼女が自分に腹を立ててくってかかってくるのを見るだけで、全身が興奮してしまうのだろう
たしかにこの女性はものすごい美人だ、今は竜馬の言葉に憤慨していて頬を濃いピンクに色に染めて一生懸命怒っている、だが、そうした外見的な美しさ以上の何かを内に秘めているような気がする
自分から当たってきておいて、まだ知り合って数分なのに、こんなくだけた口調で噛みついてくる、こんな女性は絶対竜馬の回りにはいない
彼女がこんな無礼なことが出来るのはきっと僕が寛容な態度をとっているからであって、その気になればいつでも黙らせることに気づいていないのだろう
しかし、不思議に竜馬は彼女に威圧感をかけるつもりはなかった、黙って彼女の言い分を聞いた、この生意気な可愛らしい当たり屋を目の前にして、竜馬は無言のまま、彼女への高ぶる思いを押さえつけようと懸命につとめた
今はこぼれ落ちそうな大きな茶色い目をつりあげて怒っている、当たり屋なんか辞めればいいのに・・・もっとまともな職業につくべきだ、そして身振り手振りが大きい、いつもならこういう女性には苛立ちを覚えそうなものなのに、そういう感情は湧かなかった
それに何を言っても彼女の勢いはとめられないような気がした、早口でほとんど何を言ってるか理解できない、日本に来てずいぶん経つのに、何語をしゃべってるんだ?用心しろ、頭がおかしいかもしれないぞ
なので彼女が怒鳴っている間、腕を組み、首を傾げてじっくり観察することにした
おでこ・・・丸いな・・・・鼻も・・・丸いぞ、いや・・・どこもかしこも丸いな・・・剝きたてのゆでたまごみたいだな・・・蜂蜜色の髪に、大きな茶色い瞳、ストレッチジムに通うような恰好をしている
甘美な曲線を描く体には、鋭角的な部分などまったくない、どこもかしこも魅力的で柔らかそうだった、竜馬はその額を撫でてみたくなったが、なんとか思いとどまった
―トクン・・・トクン―
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自分の中で何かがうごめいているのを必死に押さえつけて、ようやく彼女の怒りにキラキラ輝く瞳と視線を背けれるようになった、何かを思い出しかけた、でもまた彼女がスマホをかかげて何か言ってる
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レンコン 煮付け
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連絡先を交換しろと言っていることをやっと理解した、そして彼女が車に必死に話しかけている所を見て驚いた
可哀そうに・・・頭が弱いんだな・・・犬にかまれたと思うことにしよう・・・
竜馬はもうこの女性とは、二度と会うことはないだろうと車のアクセルを踏んだ
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彼女とはそれきりでは終わらなかった、竜馬が神崎のオフィスが入っているビルの喫煙席にいると、なんと彼女が追いかけてきた、後をつけられていたのだ
竜馬は少し怖くなった、もしかしたらやっかいな女に引っかかったのかもしれない、そしてまだ彼女は怒って自分に何か言ってるが、やはり早口で何を言ってるかわからない
そして彼女はさっきよりもぐいぐい竜馬と距離を詰めてくる、まさかこんな女性に不意打ちを食らうとは思わなかった、また彼女を見ていると妙な気分になる・・・こんな気分になったのは初めてだ
油断していると彼女の何かに引っかかって転びそうになってつんのめった、拍子にどう言い表せばいいのかわからないような、感情が飛び出しそうになる
もし、こんな女性がいつも自分の傍にいたら・・・他の男達のように安らぎを得られるかもしれない・・・常に飢えを感じ、決して満たされることなく、一分一秒を惜しんで走りつづけることから解放されるかもしれない
彼女は一応敬語を使っているが、どこか好戦的な感じがある、竜馬は彼女にどんどん興味関心を覚える一方で、かすかな不安に駆られた
彼女と以前どこかで会っただろうかと頭を巡らせる・・・いや・・・やはり無いはずだ、あれば絶対に覚えている、だがどう結論づけても、やはりどこか奇妙な慕しさを感じずにはいられない
彼女が顔を傾け、じっとこちらを見てくる、 竜馬も彼女を見つめる、 二人の間の温度が一気に上がったような気がする
「いい?一日一生さん!今私はとても大事な直面に立っているんです!これから重要な会議があるのよ!」
「僕もだ!」
なんと!この女性はとんでもなく無礼だ、いったいどういう風に躾られたらこんなになるんだ!しかしその瞬間、彼女がふっくらした可愛い赤い下唇を苛立だしげに噛んで睨んできた・・・そのしぐさを見て、竜馬の下半身に血液が流れたのがわかった
―いったい僕はどうしたと言うんだ?―
竜馬自身、自分の体の変化が恐ろしい、そして言いたいことを言うだけ吐き出すと、彼女はヒールの踵を鳴らしながらズカズカと去って行った
彼女が身をひるがえして去っていく、もう少し言い争いをしてもよかったかもしれない・・・後ろから去って行くカモシカのような美しい足を眺めた
竜馬はしばし唖然としていたが・・・会議がすぐ間近に迫っているのを思い出し、慌てて会議室に向かった、落ち着き払った風に歩いていても、鮮やかに脳裏に浮かぶ彼女の姿を追い払うことはできなかった
竜馬はここ何年もまず物事に動ずることはなかった、人員削減職務に当たる中で、あまりにも多くの惨事を見たり、経験したりしたせいだ、なので今自分があの女性を目の前に、こんなに取り乱しているなんて信じられなかった
彼女には自分を乱す何かがある・・・そこで気づいた、遠い昔の記憶・・・こんな気持ちにさせられた、ただ一人の女の子のことを考えた
―まさか・・・それはない・・・―
竜馬は笑ってしまった、もしそうだとすれば恋愛小説みたいじゃないか
いくらなんでも世の中そう都合よく動いてはいないだろう
これから先、神崎を買収したのだから「神崎ジェニ」に会う機会はあるだろうが、そしてそれはメビウスビルにいる時だろうし、 社長の自分が直接彼女と関わることはまずない
竜馬はそう思いながらエレベーターの4階のボタンを押し、神崎広告代理店の役員会議室に向かった
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竜馬は会議用テーブルにミネラルウォーターのボトルを置き、そのまま座って社長の豊がいないことにガッカリした
そして逃げているアイツの姿勢にも幻滅した、一郎さんはどうやら豊を甘やかしたに違いない、そしてそれ以上に腹が立ったのは 、自分の会社の社員をあっさりと見捨てるつもりの、役員達の身勝手な態度だった
しかし、これまで上に立つ人間があっさり責任を放棄したケースは山ほど見てきた、そして神崎の役員達は、今まで好き勝手に行動し、人を巻き添えにしていることを自覚しないで、これからもうちで変わらずそういった生活ができると考えている
竜馬はこの連中にもうすぐ目にものを食らわせられるのが楽しみになってきていた 、そして役員達の言い訳を竜馬、宗一郎、文也は黙って聞いてきた
当然だ、最後に「印籠」を渡すのは竜馬の役目だ、その時バンッと会議室の両扉が開き、一人の女性が颯爽と入って来た
―やっぱりそうか!―
竜馬のジャガーにぶち当たって来た「可愛い当たり屋」車に話しかける「奇々怪々な行動をとる女」・・・そして彼女に詰め寄られるとなぜか「高なる鼓動」・・・予兆はあったんだ、竜馬は目を見張った、魂が覚えていた、今彼女が入って来た瞬間に全てを悟った
生まれて初めての衝撃だった・・・あの「神崎ジェニ」はとても魅力的な女性に成長していた
ジェニは背が高く、炎か陽光を思わせるほどまばゆく美しかった、動悸が激しくなり、左胸が痛んだ、彼女は今は怒りに瞳を輝かせて、竜馬の目の前で役員連中とギャァギャァ言い争っている
彼女は役員連中しか眼中になく、まったく竜馬のことなどお構いなしだ
神崎ジェニはこれほど美しく成長し、とても魅力的だ、生き生きしていて最高にかわいい
竜馬は言葉も忘れてジェニをうっとり見つめた・・・温かみのある茶色い彼女の髪を振り乱し、今は役員連中に怒り狂っている、彼女を見ると胸の中の空洞がうずいて・・・懐かしさと共に切ない気持ちが込み上げた
―馬鹿、こんな所で泣いてどうする―
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竜馬の気持ちなど知らずに、彼女はせっかくのかわいい顔がだいなしになるぐらい鼻にしわを寄せ、渋面で役員連中と喧々囂々とやりあっている
彼女こそ・・・自分が恵まれない子供時代に逃してきた全てであり、失ってきた希望だ
竜馬は完全に声を失った・・・アッパーカットを食らったように酸欠をおこしている
こんなことがあっても いいのだろうか・・・・
竜馬は大きく深呼吸した
人生で同じ人間に二度も恋をしてしまうなんて・・・・
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「・・・ま・・・・竜馬! 」
ハッとして名前を呼ばれた方を見る、宗一郎と文也が呆れてこっちを見ていた
「ボーっとしている場合じゃないぞ!大暴れしているあれをなんとかしろ、何だ?アレは?」
「死人が出るかもよ?」
「え?」
ハッとして彼女を見ると、ジェニが常務企画部長の佐竹の首を絞めて揺らしている、ああっ!止めないと
宗一郎は険しい顔でふぬけになっている竜馬を睨むと、椅子の背にもたれて、胸の前で腕組みしてため息をついた
文也はニヤニヤして、面白そうに一連の流れを見ている、ジェニが愛らしいことについてあれこれ考えるのを今すぐにでもやめたいが、愛らしいものはしかたがない
しかし、この愛らしい生き物は相当に気が強い、その強情さは小さな頃からさらに磨きがかかっているように見える、竜馬は思わず笑みを浮かべそうになった、この攻撃的な愛くるしい女性は、竜馬を微笑ませる何かがある
「君の会社は我が社にもう買収されたんだ、神崎広告代理店はもう無い、メビウス・ホールディングスへようこそ、神崎ジェニさん! 」
やっと暴れるのをやめたかと思えば、彼女は竜馬の言葉に今や愕然として、美しい茶色い瞳が心細くかげっている・・・今にも泣きそうな彼女を見て・・・途端に竜馬は可哀想になって、胸が締め付けられた
違うんだ・・・君の会社を守るために僕はここにいるんだよ、お父さんの一郎さんの恩に報いるために
思わず抱きしめて、頭を撫でそう言い聞かせたくなった、いやいや・・・ダメだ!それではメビウスのCEOらしくしない、無理やり竜馬はそう言い残し、彼女から離れた
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その日の夕方、竜馬は身支度をしながら何度も火照った顔を水で洗った、こんな状態では今夜のアリスさんとのお食事会に出られない
今でもなぜか小さく動悸がしてして・・・なんだか落ち着かない
―このビルの21階にジェニがいる・・・自分の建てたビルの中に・・・これからはいつでも会えるんだ―
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今朝からの彼女とのやり取りが何度も思い出される、あの潤んだ茶色の瞳を見たら、男なら誰でも自分を見失しないかねない、彼女をつかんでキスしたい衝動にかられ、それをこらえるために筋肉がひきつった
今の彼女は27歳・・・その年齢は魔法のように竜馬の心に響いた、遠い昔、キスを迫って来たり、自分の布団に潜り込んで来た彼女は当時は7歳、そして竜馬は18歳になったばかりだった
そんな彼女を恋愛対象として見るのはふさわしくなく、犯罪のようだった、あの時の彼女はとても幼く、無垢だった、そして大事な娘に何かしようものなら、一郎さんに頭をもぎ取られていただろう
しかし、今では二人の年齢差などあまり問題はなくなった、とても美しく成人した女性に成長した彼女は、竜馬が誘っても良い対象年齢に達したのだ
それでも、茨の壁に守られたお城に幽閉されているお姫様に焦がれるような気持ちはぬぐえない、なんとかその塔に侵入し、あの大きく真剣な瞳の奥にあるものを突き止めたくてたまらない 「大きいお兄ちゃん」といつも自分の腕に飛び込んで来た彼女が
あの時どんな気持ちだったのか、思い出させ・・・問いただしたくてたまらない・・・忘れているならこの腕の中で何度もキスをして思い出させてやりたい・・・
今日の彼女は笑わなかった、ただの一度も、無理もない・・・ 僕はバカか?彼女にとって自分は父の会社を乗っ取った憎い相手なのだ、竜馬は片手で顔を擦った
最悪な再会だ・・・ああ・・・思考が追い付かない、そしてもう時間がない・・・行かなくては
外へ出るはずが、フラフラ気が付くと竜馬は自分の意思とは まったく真逆に、21階のボタンを押していた
誰もいないと思っていた神崎のオフィスには、なんと彼女が一人いた、竜馬を見つけるなり怒りに燃えながら早口で詰め寄ってきた
途端に竜馬の心臓は、ハンマーのようにあばらを打ち付けた
何か彼女がわめいているが、やがてピンク色の雲のように彼女の香りが竜馬を包んだ・・・甘くかぐわしい春のような香り・・・きわめて女性的な香りだ、 この秘密兵器には心の準備が出来ていなかった
もうだめだ・・・ほんのり桜色したぽってりした彼女の唇が忙しく動いている、まるで生まれたての赤ん坊の様に無垢だ、それか捕獲したバンビだ 、怒りに詰め寄った彼女と竜馬の間その差十センチ
「――人を解雇するのって楽しい?自分の力を誇示できるから?解雇された人の人生や生活なんて、あなたは何も考えていない、 自分達の会社のために人生を捧げてくれた社員に対してまるで使い捨てのゴミ扱いをするなんて、人間じゃないわ!あなたは鬼よ!! 」
―君が好きだよ―
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「鬼で結構! 社員が解雇されたら、君達兄妹の責任だと自覚するんだなっ!」
―怒った顔も可愛いよ―
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―ああっもう―
竜馬は彼女がバランスを崩すようにわざとのけぞらせ、相手があっけに取られている隙に両頬をガシッとつかみ
気が付くと竜馬はジェニにキスをしていた
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数日後、竜馬は神崎ジェニに関する限り、自分には五感を超えた「ジェニ感知能力」があることを確信した
彼女の存在を感知できるのは、彼女が自分の運命の女性だからに違いない、その時、背筋がゾワッとして竜馬はくるっと振り向いた、思った通り、廊下の向こうにジェニがいた
今や誰かにストーカーと言われようと、ジェニを見守ることは呼吸をするのと同じぐらいになっている、ジェニはとても働き者で、外見は華奢なのに、鋼のような強靭さを内に秘めている、竜馬はその対比に驚かされた
でも考えてみれば、彼女は小さいころからそうだったじゃないか、ジェニが竜馬に向かって吠える
「父はすべてをお金に置き換えるような人が好きじゃなかったわ!人生観もそうだけど、経営方針も利益一辺倒じゃなくて、人材を生かすのが大切といつも言ってたわ!」
「神崎広告代理店が今まで倒産しなかったのは、たまたま立て続けに何件か広告キャンペーンの仕事を獲得したからだ!経営方針のおかげじゃない、それから人材についてだが、終身雇用なわけではないんだ、ここは人員削減の必要がある、役立たずの社員を抱えすぎている」
竜馬は歯をくいしばった、彼女といるとどうして素直になれないんだ?
「役立たずなんて言い方はやめて!みんなそれぞれ大切な役割を担っているわ!」
ジェニの大きな声が廊下に響く
「あなたはなぜかうちの父の経営方針に腹を立てているように見えるけど、社員達に八つ当たりしないでちょうだい!解雇なんて間違っているわ!」
「ビジネスの心構えをひとつ教えておいてやろう・・・」
竜馬がややあって穏やかな口調で言った
「自分の思っていることは敵対者に知られない方がいい、相手を優位に立たせてしまう」
ジェニは少しためらったが、顎を引き締め、まっすぐに竜馬の目を見つめた、薄れゆく光の中で琥珀色のジェニの瞳が濃くなった、素敵だ
「松下社長!あなたは父の会社を買収した時点ですでに優位に立っているわ、それに私は思っていることは堂々と言う主義なの、あなたは噂通りの冷酷な人ね!」
「僕の前で泣き落としは通用しないぞ!」
「私は泣かないわ!」
思わず笑いそうになった、泣いていなくても、今も懸命に涙をこらえているのは事実だ、目が潤み、顎が小刻みに震えている、僕のことなどすっかり忘れていったいどんな人生を送って来たのだろう
今すぐテーブルに押し倒して思い出させてやりたくなる、あの頃は君から迫って来ても思い止まったが、今は容赦しない・・・不意に狂おしいまでの衝動が込み上げてくる
「話はそれで終わり?私はこれで失礼するわ!午後までにあなたの言う「役立たず」達に指示をしないといけないからっっ」
あっかんべーっと、下瞼を指で引き下ろしながら舌を出したジェニが、竜馬を置き去りにして、颯爽とドアの方へ歩いていく
「終わりだとっ?まだ話は終わっていないぞ!なんだ、僕に向かってその態度は!」
「私をクビにするならさっさとしなさいよ!あなたなんか怖くないんだからっっ!」
「おいっ!待てよ!」
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その時・・・21階の柱に宗一郎がもたれて腕を組み、その横で文也が宗一郎の肩に腕をかけて去って行く二人を硬直して見ていた
そして二人は同時に正面を向いたまま、右に顔を傾けた
「文也・・・・」
「うん?」
「俺の・・・見間違いなら教えてくれ・・・俺には竜馬があの娘を追い回しているように見えるんだが・・・」
文也が目を擦って言う
「・・・よかった・・・僕にもそう見えるから見間違いじゃないと思うよ」
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コメント
1件
うわ、この再会の仕方、すごいですね!まさか賈ガーにぶつかってきた相手が子供の頃に一緒に過ごしたあのジェニだったなんて。竜馬の「人生で同じ人間に二度も恋をする」って気づきのシーン、胸がじんわりしました。彼が心の中で「怒った顔も可愛い」とか思いつつ、表面上はCEOの立場を崩さないギャップがたまらない。宗一郎たちが「竜馬があの娘を追い回しているように見える」と首を傾げる場面で思わず笑いました。次が気になります!