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「かっおるぅ〜」
「…」
なんで出会い頭に足払いされ押し倒されてるんだ。
周りは何時ものじゃれ合いだと思って素通りしていく。
が、この悟くんの雰囲気はただのじゃれ合いで済むようなものじゃない。
服越しでもわかる体温の上昇。
名前を呼ぶ甘ったるい上ずった声。
押しつけられる股間…。
人通りは少ないけどそれなりに人は通るんだ。
ここでおっ始めるとは思わないが、なかなかに雰囲気が怪しい。
「悟くん、取り敢えず場所移動」
俺の肩口に顔を埋める悟くんの髪を引っ張り上げれば不満に歪む口元。
さぞかしその目隠しの下も不機嫌に歪んでる事だろう。
「僕もう臨戦体制」
「知ってる。え、何?お前ちんこおっ勃てて歩いてたの?」
「薫の顔見たら勃った」
「まぁ、うん。お前が何処でおっ勃てて歩いても別に俺は良いんだけど。流石にここじゃ駄目だろ」
小さく舌打ちされ素早く隣の部屋へと引き摺り込まれた。
人の割にはでかい建物だから空いてる部屋なんて幾らでもあるが、余りにも即物的過ぎやしないか。
「僕、3徹目なんだけどさぁ」
またしても手荒く押し倒され顔を顰めていれば、機嫌でも取るように指を絡めにぎにぎしてくる。
ナチュラルハイで元気そうに見えるが、下げられた目隠しからは硝子ちゃん並みに酷いクマ。
「寝ろよ」
下から這い出ようとすれば、先手に回って俺の腹辺りに腰を降ろす。
この体制からでも逃げようと思えば出来るが、今の悟くんの逆鱗沸点は低そうだし後々面倒になる。
大人しく、とはいかないが多少大人しくしながらの抵抗を続けた。
「なんかムラムラが収まらない」
「死ぬんじゃね?」
「へ?」
「男は死ぬ直前子孫残そうってめちゃくちゃ性欲高まるってやつ」
「んふふ〜、そうかも」
「けどそれを向ける相手間違ってんだよ。俺ぇ男の子よ。子供産めねぇよ」
「大丈夫!薫なら孕ませる自身あるよ!僕!」
情緒ヤバくない?
さっきまでぶーたれてたのに。
「…取り敢えず休めよ」
「まずはコレをどうにかしないと休む事も出来ないって」
手を引かれた先。
何もしてないのに立派におっ勃てた悟くんのちんこ。
イタズラにズボン越しに手の甲で撫で上げれば零れる吐息。
「ヌけよ。トイレはあちらですよ〜」
「やだ。薫が良い。突っこみたい。薫に中出ししたい。頑張って孕ませるから」
俺の服の裾を捲り上げ晒された腹を擦る。
次第に手付きは妖しく、臍の下辺りを捏ねくるような。
ココまで挿入るのだと、見つめる青が笑ってる。
「残念、俺は性欲処理では無いので」
「…その気にさせれば良いの?」
「その気ねぇ。それ以前に場所だろ。マジでここでヤんの?背中痛いんだけど」
「1回戦目は持ちそうもないし」
「何回戦ヤんだよ」
「僕が寝落ちるまで。てか、まじで限界」
「ちょっ、」
「ね、薫だって僕とするの好きでしょ?いっつもぐずぐずじゃん」
「そーなんだけ、ど、」
もう喋るなどでも言うように塞がれた唇。
キスで黙らせる男なんてもてねぇぞ。
そう簡単に従うかと唇に力を込めて引き結ぶ。
べろりと何度も唇を往復する舌先。
「っ、」
素肌を撫でる指先が下腹部から上へと滑り脇腹へと流れる。
俺の弱点なんて知り尽くしてるから、何処をどうすれば、なんてお手の物。
それでもムカつくから逃げる様にそっぽ向いたりと踏ん張る。
「口、開けろ」
のが悪かったらしく顎を掴まれて床へと押し付けられた。
自分の思い通りに動かない俺に相当ご立腹の様子で力加減なんて出来てない。
ごりごりと頭は床に擦れるし、絶対たんこぶとかなるやつ。
「その命令口調、大嫌い」
人が多少大人しくしてれば何でも思い通りになると思いやがって。
力で負けるのは分かってるが、腹立つから意地でも抜け出してやろうと俺も本気で藻掻く。
「好きじゃん。薫は命令されんのも、酷くされんのも大好きで仕方ないの」
首筋にねっとりと這う生温かい舌が流れて肩口で止まり歯を立てられる。
甘噛ではあるが、段々と加減は無くなっていく。
「っ、やめ、ろ」
瞬間皮膚を突き破る鋭い痛みに顔を顰めた。
顔を上げた悟くんの口元に付くのは俺の血。
それを舐め取る姿が格好良いなぁとか、なんかもう現実逃避したい。
「俺は加虐性愛で薫は被虐性愛。身体も性癖も、ばっちりしっかりハマってんだよ」
「ん、ぐ、」
「酷くされたいから反抗すんだろ。従順なんて一度もねぇもんな」
雲行きが怪しい。
なんか絶対ヤバいスイッチ入ってるって。
3徹で脳内麻薬出しまくりでキマってじゃん。
「てめ、いい加減にっ、」
「噛むんじゃねぇぞ」
口の中に突っ込まれた悟くんの親指が、舌を押されてえずく。
近付く顔。
無理矢理開けられた口の中に悟くんの舌が入り込む。
縦横無尽に動き回る舌が
「なぁ、舐めろよ」
俺の胸元へと腰を移動させてズボンの前を寛げ
「…」
散々好き勝手ヤって宣言通り寝落ちた。
何度か意識は飛ばしたが、その度に叩き起こされて相手させられて。
「あぁー、しんどっ。気持ち良さそうに寝やがって」
後処理すらしやがらねぇ。
悟くんの下から這いずり出すが、足腰ガタガタで歩くのもままならない。
が、後処理しなければ散々な目に合うのは分かってるし、後3時間もしたら任務だと壁に凭れるようにバズルームへと向かう。
シャワーを浴びれば至る所に残る傷口に滲みる。
任務の為にと反転術式は使えない。
散々な身体を鏡に写せば更に散々だ。
特に酷いのは首周り。
噛み跡から締められた跡からと、良く死ななかったなんてちょっと関心。
けどこれは流石に見せられたもんじゃない。
さっぱりはしたが身体はぐだぐだなまま部屋に戻り
あれから顔を合わせる機会もなく1ヶ月。
また次から次へと詰め込まれる面倒臭い案件任務に高専へと出向く事も出来なく溜まりに溜まる報告書。
そろそろ一回出して置かなければ事務員から苦情がくる。
高専から少し近場で任務の呼び出しがあったからついでにと高専に顔を出した。
「しょーこちゃんにお土産でーす」
アルコール度数キツめのを見繕って買ってきた地酒の袋を手渡せばお礼と共に頭を撫でてくれる。
俺だけの特権。
「…久しいな、薫」
「ホントねぇ。しがない二級術師なのに参っちゃうよ」
厄介事はほぼほぼ俺担当みたいな流れになってきてる。
ソファに腰掛け仰け反れば、頬に当てられた冷たい缶コーヒー。
それを受け取り一口口付ける。
「まだ目の敵にされてんのか」
「なんなんだろーね。別に楽しいからいーんだけど」
彼方此方、行った所のない土地に行くのは楽しい。
まぁ仕事で無ければもっと楽しいんだけど。
「…五条と、何かあったか?」
隣に腰掛けてタバコを吹かす硝子ちゃんから不意に出て来た名前に首を傾げる。
「悟くん?なんも無いけど、何で?」
「時間が空く度にココに来て薫が来てないか確認してく」
高専に顔を出す時は必ず硝子ちゃんの所に来るから、あの日のコトはそれなりに気にはしてるのか。
「電話でもすれば良いのにうだうだ煩いのなんの」
うんざりと言うように煙と共に吐き出される溜息。
けど、硝子ちゃんは何だかんだ言って優しいから相手をしてるんだろう。
「んはは。多分だけど、悟くんがレイプしたから電話出来ないんだと思うよ」
「…誰に」
「俺にぃ。3徹の脳内麻薬ガンキマりで止められなかったんじゃない?デリカシー無い男の悟くんでも後ろめたさとかあんだね。ウケる」
からから笑って見せれば、なんかすんごいドン引きされた。
だってあの悟くんがだよ?
面白くない?
「それでウケてる薫の神経が疑わしいが、…大丈夫か?」
「神経の方?レイプの方?」
コーヒーを飲み干して缶をテーブルに置き、身体を倒して硝子ちゃんの膝に頭を預ける。
タバコを灰皿に押し付けて直ぐに頭を撫でてくれるその手が、この穏やかな時間が大好きだ。
「両方に決まってるだろ」
「俺はまともだと思ってんだけど、人からみたらどうなんだろうね。レイプは、…まぁ、別に孕む訳でもないし、悟くんが相手じゃないけど前にもあるし」
仰向けになり硝子ちゃんの顔を見上げれば、向けられる視線はなんとも複雑。
これで俺が女だとしたら大問題だろうけど、男だし。
「え、そんな目で見ないでよ」
「本当に大丈夫か?」
「自己完結出来てるしなぁ。あー、でも…、幼少期のトラウマが性癖になるって言うじゃん」
「…幼少期って、」
「ちっさい頃の俺って超絶可愛かったのよ。近所の兄ちゃんがそりゃあ可愛がってくれてね、ムラっとしちゃったんじゃない?まぁ、それはどーでも良いんだけど。悟くんに言われてさぁ、被虐性愛じゃんって。あー、そうかもなぁ、って思っちゃった、トコロはある」
それが唯一の被害じゃ無かろうか。
気付きたくもなかったが、ぶっちゃけぶっ飛んでた悟くんにヤられたのが今までで1番良かったかもしれない。
「…」
「笑い飛ばしてよ。お前の性癖なんて知らねーよって。そんなに重い話?」
「重すぎんだろ。五条は知ってんのか」
「話したのは硝子ちゃんが初めてよ。聞かれもしないし、別にどーでも良くない?」
知ってたとしたら悟くんは絶対に手なんて出さないだろう。
古傷を抉るような事なんてしないよ。
優しいもん。
「…はぁぁぁ〜」
「んはは、でっかい溜息ね。ま、そんな重く受け止めないで流してよ」
「…で、五条とはどーすんだ」
「俺は気にして無いけど、悟くんが気にしてんなら乗ってやろうかなぁ。暫く様子伺いよね。面白そ」
電話出来ないくらいにはへこんでるらしいから、今度顔を合わせる時はどんな反応を見せるのか。
まぁ、逃げられたらお終いなんだけど。
「周りに被害飛ばすなよ」
「それは悟くん次第!じゃ、見つかる前に逃げまーす」
硝子ちゃんの撫で撫でが惜しいが、起き上がり大きく伸びをする。
これでおれの精神は保たれた。
「あんまり無理するなよ」
「ん!ありがとね。硝子ちゃん大好き!」
「おー、知ってる」
次の任務はもう入ってる。
「…何してんの」
俺の部屋の前。
部屋に入りたいのに佇む悟くんが邪魔で流石に声を掛けた。
「か、おる…」
「なに」
普段なら人の部屋に無断で入り込んで我が物顔で寛いでるクセに。
なっさけない口元さらして、ウケる。
俺の言動に一々でっかい図体ビクつかせるのが更に笑いを誘うが、なんとか口元を引き締める。
普段の図々しい態度は鳴りを潜めて、ただただこちらの様子を伺う。
「入るのか入んないかどっちかさっさと決めろよ」
「…入る」
こんなにしおらしい悟くんは初めてでは無かろうか。
入ったはいいものの、所在無さ気に入口で立ち尽くす。
悟くんがアクション起こすまで俺からは何も触れないでおこうと、報告書の纏めを始めた。
「…」
「…」
んだけど…。
もじもじうだうだ。
視界の端に入る悟くんはその図体に見合ってその存在自体が邪魔臭い。
「…」
「…」
「…あのさぁ、何しにきたわけ。そこにずっと突っ立ってるだけなら帰れよ」
机に頬杖を付いて見やればおずおずといった感じで俺の横に正座するが、黙りのまま次が無い。
「で?」
「…ごめん」
「何に対してのごめん?悟くんには色々やられてるからさぁ、どれに謝ってんのか分かんないんだよねぇ」
「この前の、タカが外れて、…手酷くして、」
消え入りそうな小さな小さな声。
でかい図体を縮めて、俺のトゲのある言葉にどんどん頭を垂れてく。
「ぶっふ、…んっ、ふふふっ、ひぃ、」
見たこともないその萎縮しきった姿に堪らず吹き出した。
腹を抱えて笑う俺を、目隠しを外して困惑と色々な感情を混ぜた青が揺れる。
それがまた可笑しくてのた打ち回った。
「んふふ、…マジか、そこまで深刻に考えてたの。はぁ、腹いてぇ」
仰向けになって見上げた先、今にも泣きそうな表情だ。
多分傍から見たらさぞや異様な光景だろう。
泣きそうなってる最強に、傍らで笑い転げる俺。
七海くんなら間違いなく関わりたくないと避けるだろうな。
「…だって、硝子が」
「硝子ちゃんがなしたの」
「薫が凄い怒ってるって」
「んはははっ!お前、しょーこちゃんに吹っ掛けられたの。んで、その態度のワケだ」
硝子ちゃんで無ければここまで気弱になる訳ないよな。
何を言われたのかは分からないが、あること無いこと言われて大分追い詰められたようだ。
「その、…無理矢理の自覚もあったし、」
「あ〜、お前に噛まれて抉られたトコ、跡なってんだよね。直ぐ任務だったから反転術式も使えなくて」
どんな任務か蓋を開けなければ分からない内容に、体力は悟くんに奪われたが出来るだけ呪力は温存しておきたかった。
補助監督も居ない俺1人の遠征任務は気楽で良いがヘタは出来ない。
「っ、ごめん…」
「ぶっちゃけさぁ、あの後3日くらい腹ん中疼いて仕方なかったんだよね。マジで孕まされたかと思ったわ」
「病院行こう!デキてるかも!」
「んふふ、ねぇよばぁか。…悟くんの言う通り被虐性愛よね。ヤバい扉開いたわ。ウケる」
「怒ってないの」
「なんでそう思ったんだよ」
「ガチで嫌がってたから」
「ならその時点でやめろよ」
「歯止めが効かなくて、…嫌がる薫見たらすんごい興奮した。なんか自分でもびっくり」
「かなりのトランス状態よね。殺されるかと思ったし、死ななかった俺凄いって思った」
「…ごめん」
「一生分のごめん言ったんじゃね?…別に俺は気にして無いし、まぁ、うん、悟くん面白かったし、どーでも良いかなぁ」
「僕も大概だけど、薫も中々だよね」
「今更じゃん。十何年一緒に居て知らなかったの?大体寝たら忘れるタイプよ?俺」
「知ってる。けど、ここ迄とは思わなかった」
「深く考えるのは嫌いなの。面倒いし、なる様にしかなんないなら悩んだって無駄」
「詳しくは話してないけど硝子ちゃんは知ってるよ。俺の性癖の根本。気になるなら聞いてみれば?ま、それ聞いて悟くんが俺を抱けるかどうかだよね〜」