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離婚します  第一部

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離婚します  第一部

47 - 第47話 健二にカマかけて

2024年10月31日

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「じゃあ、行ってくるね。翔太、いい子にしてるんだよ」

「大丈夫だよ、ね、翔太!美味しいもの食べていっぱい遊ぼうね」


今日は綾菜のクラス会の日。

私は、仕事を終わらせて翔太を迎えにきた。


「帰りは、健二に頼んである。やっぱりね、久しぶりにクラスメイトに会うから、きっと盛り上がって遅くなると思って」

「うん、いいよ。健二君はオッケーでしょ?」

「一応ね、なんか、帰りの時間がハッキリわからないとかなんとかごちゃごちゃ言ってたけど…」


やっぱり女のところか。


「わかった、遅くなっても来なかったら、私から連絡してみる。番号は知ってるし」

「うん、そうして。じゃ行くね」

「行ってらっしゃい」


いつもより綺麗に着飾った綾菜を見て、なかなかイケると思った。

娘というひいき目があったとしても。


「さ、翔太、じぃじもいるからみんなでご飯食べようね。今日はいっぱい遊ぼう!」

「うん、おもちゃももってきたからかしてあげる♪」


そう言うと、背中にしょったリュックをがさがさと揺らして見せた。

サプライズのメモリーのことは、あれから何も言ってない。

私は茶封筒に入れたメモリーを見る。


さぁ、健二にどうやって渡そうか?


ご飯を食べて、お風呂に入れておもちゃで遊んで、ソファでうとうとしている翔太。

時計を見たら、もう22時をまわっていた。


「さぁ、歯磨きしとこうか?お父さんが迎えに来たらすぐ帰れるように」

「ん?んーん」


リビングに敷いた布団で寝かしつける。


「はぁ、疲れた。小さい子と遊ぶって体力使うね」


風呂上がりの旦那が、ビールを飲んでいる。

考えてみたら、3回も結婚した旦那には、もう孫もいるはずなのに翔太以外の孫の話は聞いたことがない。

前の結婚の子どもたちとは、もう連絡も取ってないのだろうか。


「全身で遊ぶからね、遊んでくれてありがとう」

「俺も楽しかったから。こんな俺でもじぃじと呼んでくれるしね」


翔太の頭を愛しそうに撫でる旦那を見て、法律的にも他人なのに不思議だなと思った。

これはこれでいいか。


「じゃ、俺は先に寝るから」

「うん、私は健二君を待ってるから。おやすみ」


22時半を過ぎた。

電話してみようか?

少し考えて、メッセージにした。


〈翔太のお迎え、何時頃になりますか?〉


しばらくして返事があった。


《今からむかいます》





「こんばんは」

「いらっしゃーい、入って」


健二がやってきた。

時刻は23時を過ぎたあたり。


「すみません、遅くなりました」


頭をかきながらリビングへ入ってくる。

服装は仕事用のスーツ、石鹸やシャンプーの匂いはしない。

用意周到ということか。


「さっき寝ちゃったのよ。もう少し熟睡させてから連れて帰って」

「はい、お世話になります」

「座って。お茶でもどう?暑いから麦茶にしとく?」

「あー、はい、お願いします」


返事はするけど、私と目を合わそうとはしない。

ホテルでのことを気にしているのだろう。

気にしているのなら、まだ大丈夫ということだ。

これが開き直ったりしたら、もう手遅れだと思う。


「毎日遅いの?」

「いやぁ、毎日ってことでもないんだけど。最近ちょっとバタバタしてるんで」


女と?

聞かないけど。


「仕事も大事だけど、たまには早く帰って家族と過ごすのも大事だよ。あんまりほったらかすと、ちょっとのすれ違いがどうにも取り返しのつかないことになる。ま、2回目の離婚をした私が言えることじゃないんだけど」


ホントに、私では説得力がないだろうなと思いながら話す。


「あの…一つ聞いてもいいですか?」

「なに?」

「離婚の原因って…?」

「性の不一致」

「え?」

「性格の不一致」

「あー」

「それと金銭問題。でもね、それら全部離婚したら解決したよ。今はお互いに気楽に生活してる」

「…へぇ、不思議ですね」

「もううちには小さな子どももいないからね。離婚したことで自由になったからかな?他人に戻ったことで遠慮もあるし、甘えも減った。それに何をしても自由でしょ?一緒に住んでることで迷惑をかけなければ、あとは自由」


ごくごくと麦茶を飲み干したのは私。

健二は黙ったまま。


「今頃、綾菜も自由を楽しんでるんじゃない?」

「は?まさか…。俺ら離婚してないし」

「今日の綾菜、綺麗だったよ、我が娘ながらまだまだイケルよ」


健二の顔色が変わった。

嫁さんが綺麗に着飾ってクラス会へ行くと、どうなるか?想像しているようだ。


「まさか、綾菜に限って!」

「さぁ?わからないけど。でもさ、綾菜には一回権利があるよね?」

「権利…ですか?」

「夫婦が同じ立場だとするなら、ね。それとも男と女は違う、とか言う?で、その権利を今夜行使するか?何もしないで帰ってくるか?」

何かを思案しているような健二は、俯いたまま何も答えない。もぞもぞと翔太が寝返りを打つ。


「あ、そうだ、これ、落ちてたけど」


茶封筒から赤いフラッシュメモリーを出す。


「これ!どこで?」

「ん?この前ここ片付けてたら落ちてたけど?もしかして例の綾菜のやつかなと思って」

「よかった、どこで落としたかわからなくて探してたんですよ」


ホッとした顔。


「なんで健二君の仕事用の鞄に入れたというものが、うちにあったのか不思議だけどね…」


また健二の顔色が変わった。

それは見ないフリをしておいた。

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