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後になって雪都に聞いたら、保育園で慶都さんを見た時から、自分のパパだったらいいなって……子どもながらに思っていたようだった。
親子の遺伝子って、引き寄せ合うのかな。
『雪都にパパって言われた時の感動は、きっと一生忘れられないだろう。どんな言葉でも表せない、この気持ちはいったい何なんだろうな』
『慶都さん、私も上手く言えないですけど、でもやっぱり言葉にするとしたら……』
『ん?』
『この上ない幸せ……でしょうか。私と雪都は、あなたに出会えて本当に幸せです』
『ああ、結局、それが1番ピッタリの言葉だな。俺も……幸せだ。君と雪都に出会えて、この上ない幸せを感じている』
そんなことを語り合ったあの日。
父にも、慶都さんにも、そして私にも、最高の「幸せ」を与えてくれる雪都。
母親として、心から感謝したいと思った。
慶都さんのことを考えている間に、父は温かいミルクティーをいれてくれた。
子どもの頃からたまに作ってくれる甘くて優しい味が、今も変わらずずっと好きだ。
「今日は麗華とゆっくり話してやってくれ。母親を亡くしてから変わってしまったが、あの子は本当は優しい子なんだ。私は仕事が忙しくてあまり構ってやれなかった。その分、麗華は母親にずいぶん甘えていてね。それなのに……突然、大切な母親を亡くしてしまった」
「心の支えだったお母さんを亡くして、悲しみのどん底にいる時に私達がやってきて……認められなかった気持ちはわかる」
「受け入れて仲良くしたい気持ちはあったと思う。ただ、どうしたらいいのかわからなかったんだろう」
「うん、そうだね」
その時、麗華が帰ってきた。
私と雪都の靴を見たせいか、かなり機嫌が悪そうだ。
「おかえりなさい、麗華」
「おかえり。今日は彩葉と雪都が来てくれたから、夜はみんなで食事しよう」
「結構よ、食事はいらない。彩葉さん、何しに来たの?」
麗華は、私を睨みつけるように言った。
「麗華、少し落ち着きなさい。いつまでも姉妹でいがみ合っていても仕方ないだろう? ちゃんと話し合うんだ。彩葉、私は雪都と向こうの部屋にいるから。2人でゆっくり話しなさい」
「あっ、うん。ありがとう」
父と雪都はリビングを出た。
「何? 疲れてるんだけど」
麗華は足を組んでソファに座り、こちらを見ずにスマホを触り始めた。
「麗華、私ね……」
「知ってるわ。お父様から聞いてるから。慶都さんと結婚するんでしょ? 雪都は慶都さんとの子どもだったのね」
まだスマホから目を離さない。
「ごめんなさい。本当に……ごめんなさい」
どうやって謝ればいいかわからない。
心が痛い。
その時、麗華はようやくスマホを置いて私を見た。
「私から慶都さんを奪っておいて、今さら謝るなんて」
そう言ってすぐに立ち上がり、私の目の前に来て、さらに続けた。
「慶都さんも慶都さんだわ。私とのお見合いを解消して、彩葉さんとの子どもを作るなんて。私はね、慶都さんが好きだったの。あの人となら結婚してもいいと思ってたのに。なのに、彩葉さんなんかと……」