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K-Takasaka
22
#人狼
#思わず笑ってしまうお話
K-Takasaka
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鉱物博物館の特別展示室には、朝から多くの人が集まっていた。
中央の展示ケースに収められているのは、青白い光を放つ巨大な鉱石だった。地下洞窟の奥深くから発見された希少鉱石で、正式名称は「月喰い石」。電気に反応して淡く輝く性質を持ち、発見以来、町の話題を独占している。
「うわぁ……すっげえ! これ、本物の洞窟から出てきたんだよな!」
カキは展示ケースにかじりつくようにして、月喰い石を眺めていた。
「カキちゃん、顔がガラスにくっついてるよ。展示物よりカキちゃんの鼻のほうが目立ってるからね?」
メバルがカキの肩を引っ張る。
「だって気になるだろ! この表面の割れ目、自然にできたものじゃないぞ。内部に別の鉱物が混ざってる!」
「だからって触っちゃだめだからね。絶対だよ?」
「触らないって!」
カキはそう言いながら、伸ばしかけた手を慌てて引っ込めた。
その隣では、ミステーがピラミッドの被り物をかぶったまま、展示ケースの下をじっと見つめている。
「ミステーちゃん、今度は何をしてるの?」
「石の影を観察している」
「影?」
「月喰い石の影は、石より先に動く。つまり、影が本体だ」
「何を言ってるのか全然分からないよ!」
メバルが頭を抱えた、その瞬間だった。
展示室の照明が消えた。
突然の暗闇に、来館者たちの悲鳴が重なる。非常灯が赤く点滅し、展示室全体が不気味な色に染まった。
「全員、その場を動くな!」
警備員の怒鳴り声が響く。
数秒後、照明が復旧した。
だが、展示ケースの中から月喰い石が消えていた。
「鉱石が盗まれたぞ!」
警備員たちが一斉に動き出す。
カキは展示ケースの前で固まり、ミステーは床に落ちていた青白い小石を拾い上げた。
「見ろ、カキ。月喰い石の子どもだ」
「子どもじゃない! 欠片だろ!」
「ならば、迷子の欠片だ」
「そういう問題じゃないって!」
その光景を見た警備員が、二人を指差した。
「お前たち、展示ケースの前にいたな」
「いや、俺たちは見てただけだって!」
「ミステーちゃんも、何か拾っただけでしょ!」
メバルが前に出る。しかし、警備員たちの後ろから、ひときわ大柄な男が歩いてきた。
黒い制服に身を包み、分厚い眉と鋭い目つきをした男だった。胸元には「黒鉄」と書かれた名札がついている。彼が一歩進むだけで、周囲の空気が重くなった。
「二人とも、来てもらう」
低い声だった。
「待ってよ! カキちゃんたちは犯人じゃないよ!」
「証拠がある」
黒鉄が床を指す。
展示ケースの周囲には、カキの靴跡が残っていた。さらにミステーの手には、月喰い石の欠片。監視カメラにも、停電直前に二人が展示ケースの前に立っている姿が映っている。
「こんなの、誰かが仕組んだんだよ!」
メバルが訴える。
「それは後で聞く」
黒鉄はカキの腕をつかんだ。
「痛くはないけど、すげえ力だな!」
「抵抗するな」
「抵抗してない! でも、俺は本当に盗んでないぞ!」
ミステーも黒鉄に連れられながら、床を見下ろしていた。
「黒鉄。あなたの靴底には、地下洞窟の砂が付いている」
「黙って歩け」
「つまり、あなたも石の仲間だ」
「どういう意味よ、ミステーちゃん!」
メバルのツッコミもむなしく、二人は展示室の奥へ連行されていった。
「カキちゃん! ミステーちゃん!」
「メバルちゃん、大丈夫だ! 俺たちはすぐ戻る!」
「戻るって、遠足じゃないんだから!」
扉が閉まり、二人の姿が消える。
その場に残ったメバルは、拳を握りしめた。
「絶対におかしいよ。カキちゃんはともかく、ミステーちゃんが盗むなら、もっと変な方法を使うはずだもん」
「そこは否定してくれ、メバルちゃん」
マサカゲが冷静に周囲を見回した。
「停電の範囲を確認する。展示室だけでなく、地下搬入口にも電力障害が起きている。盗難のために設備を操作した可能性が高い」
アオノは端末を取り出し、館内のシステムへ接続を始めた。
「監視映像の一部が削除されている。削除された時刻は、停電の三秒前」
「三秒前に映像を消して、停電させて、鉱石を盗んだってこと?」
「正確には、停電中に鉱石を移動させた。展示ケースの施錠記録によると、ケースは開けられていない」
「開けてないのに、どうやって中身を出したのよ?」
メバルが眉をひそめる。
K-Tは何も言わず、展示ケースの前にしゃがみ込んだ。黒い硬いガラケーを取り出し、アンテナを伸ばす。金属製のアンテナは警棒へと変わった。
K-Tは警棒の先で、展示ケースの底面を軽く叩いた。
コン、と乾いた音が返ってくる。
「空洞だ」
短い言葉だった。
マサカゲがケースの下をのぞき込む。
「底面に隠し通路があるのか?」
「確認する」
アオノが床の図面を表示した。展示ケースの真下には、博物館の古い配管用通路が存在している。
「ここから鉱石を下へ落とし、地下で回収した可能性がある」
「じゃあ、犯人は地下にいるんだね!」
メバルが拳銃を取り出す。
「メバルちゃん、銃を持つと強気になるな」
マサカゲがため息をついた。
「だってカキちゃんたちを助けに行くんだよ? 当然でしょ!」
「不用意に撃つな」
K-Tが立ち上がった。
「危険なら俺が前に出る」
「Kさん、無理しないでね。撃たれても殴られても問題ないって言うけど、普通は問題あるからね!」
「問題ない」
「先に言わないで!」
四人は地下通路へ向かった。
その頃、カキとミステーは、黒鉄に連れられて地下の警備室へ到着していた。部屋の奥には古い鉄格子があり、その向こうには使われていない保管区画が広がっている。
「ここで待て」
黒鉄が鉄格子を開ける。
「待てって、俺たちは犯罪者じゃないぞ!」
「証拠がある」
「だから、それは誰かが仕組んだんだって!」
カキが抗議している間に、ミステーは壁へ近づいた。
「この壁の中に、何かいる」
「今度は何だよ?」
「機械だ。眠っている」
ミステーが壁に耳を当てる。
すると、壁の向こうから小さな機械音が聞こえた。
ゴウン……ゴウン……。
黒鉄の表情が変わった。
「お前、何を聞いた?」
「地下の箱が目を覚ます音だ」
「黒鉄さん、もしかして何か知ってるのか?」
カキが問い詰める。
黒鉄は答えず、保管区画の扉を閉めた。
その直後、館内全体が大きく揺れた。
警報が鳴り響き、天井から砂埃が落ちてくる。地下深くから、巨大な機械が起動する音が響き始めた。
「おい、黒鉄! これは何なんだ!」
カキが鉄格子をつかむ。
黒鉄は振り返った。
「月喰い石を盗んだ犯人が、地下施設を起動した」
「だったら、俺たちをここから出せ!」
「できない」
「なんでだよ!」
黒鉄は低い声で告げた。
「この博物館の地下には、昔の採掘基地が眠っている。起動すれば、町全体が危険になる」
その瞬間、保管区画の奥の壁がゆっくりと開いた。
暗闇の向こうから、青白い光が漏れてくる。
ミステーはその光を見つめ、真面目な声で言った。
「大きな箱が、こちらを見ている」
「だから壁が見てるわけないだろ!」
カキが叫ぶ。
しかし次の瞬間、館内放送から、正体不明の声が流れた。
『冤罪の二人が捕まった。計画は順調だ』
メバルたち四人は地下通路でその放送を聞き、足を止めた。
「カキちゃんたちを捕まえたことまで、全部計画だったってこと?」
メバルの表情から、明るさが消える。
マサカゲが拳を握った。
「真犯人は、最初から二人を犯人にするつもりだった」
アオノの端末に、地下深くから新たな信号が表示された。
「地下施設が完全起動するまで、残り五分」
K-Tが拳銃を抜き、通路の奥へ向き直る。
「急ぐぞ」
「Kさん、前に出すぎないで!」
「問題ない」
赤い非常灯の向こうで、何か巨大なものが動いた。
四人は、連行された仲間を救うため、地下施設へ走り出した。
コメント
1件
ああ、面白かったです!月喰い石の盗難から一気に地下施設の起動まで、テンポ良く進む展開に引き込まれました。キャラクターの個性が立っていて、特にミステーちゃんの独特な発言の数々がツボでした。「壁がこちらを見ている」って…笑っちゃいましたよ。K-Tさんのガラケーが警棒に変わる演出もカッコよかったです。冤罪の仕組みと地下施設の謎、続きが気になって仕方ないです!