甘々成分過多注意
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山積みの書類を手際良く片付け、裏切り者に重力を掛ける。
いつもどうりの業務に加え、最近新卒が入ったのでその仕事の監督もしなければならず、
はっきり言って激務以外の何物でもない。
そんな仕事を尋常ではない速さで仕事を片付けていくのには理由があった。
なんてったって、今週は月末。そして今日は秘蔵のワインを開ける日なのだ 。
上機嫌で早々と帰宅する。ここまではプラン通り。
あとはワインを開け、窓から差し込む月の囁かな灯に照らされながら夜風に当たって、
のんびりとワインを嗜む……。
嗚呼、なんて素晴らしいのだろうか……。
そんな事を思いつつカードキーを翳す。
だがそこで待っていたのは、
健気に彼女の帰りを待つ純情な少女ではなく、艶髪を揺らす母性に溢れた家庭的な女でもなく、
丁寧に手入れされた艶髪を揺らし、高級なネグリジェに身を包んだ。目に痛いほど蠱惑な女。
私のワインをもう呑み切るかと言わんばかりに呑んで頬を一重梅のごとく赤らめ
部屋を荒らし高いアンティークの机に突っ伏している、小癪でこの世で1番嫌いな元相棒。
「あ、ちゅうや。お帰り 。」
……まってあいつが飲んでんのって……真逆……秘蔵のワインでは?
「ろす……」
「?」
「ころす……!」
そう発言するや早く太宰の細い首に手が掛る
顔が青白くなる太宰には目もくれず首を絞める。
しんじゃう、しんじゃうから、と悲鳴が聞こえるが手前自殺志望なんじゃねェのかよと反論し続行する
私はこのときの太宰の表情が堪らなく好きだ。何時も、いつからだか作った笑みを浮かべる手前の顔面が尽く崩れ、酸素を欲し、宝石のような涙を流しながら生きたがる矛盾だらけなその姿。
これ程顔面が崩れながらも美しさを保つ。1万年に一度の美貌に、羨ましいやら尊敬するやら、そんな感情を抱く。そしてこんなときすら太宰からの謝罪の言葉は一切ない。
まぁでもこの表情が見れたことで満足したので、手をパッと離す。
すると私の手に支えられていた軽すぎる体がフラッと倒れる。
「酷いじゃない」
酷く咳き込みながら太宰が訴える
「酷いのはどっちだか。」
「酷いさ。私、手料理作って待ってたのに 。」
「……????」
「え、だから手料理作って待ってたの。」
「……嗚呼、夢か。通りで可笑しいんだ。ワインは厳重に隠しておいたし、鍵も鍵屋に頼んでピッキングなんて出来ないようにしたんだ。だから。そう。これは夢だ。てかそうじゃなきゃ可笑しい。」
「ねぇちょっと、何勝手に解決させてる訳??違うからね??ちゃんと作ったって」
そう言って太宰は酒のツマミになるような料理を冷蔵庫から取り出した。
たしかに昨日冷蔵庫は空で、あったとしても氷菓子くらいだった気がする……
「……太宰って料理できたんだな」
「失礼な!!私だってちゃんと料理できるんだからね!!舐めないでよね!」
「お、おう。」
でもまだ油断してはならない、あいつのことだからなにか危険物が入っていたり……しないようだ
じゃあ余り美味しくないとか……
「おいし……」
「ほんと!!?作った甲斐あった~」
子供のような純粋な笑みを浮かべているのを見て、なんだかほっこりしてしまう自分がいた。
冒頭に話したプラン通りとまで行かなかったが、
まぁいいか。秘蔵とまで行かなかったがそこそこにいい酒を開けて、
勤労に乾杯をした。疲れた体に酒は沁みた。
酒は好きだが決して強い方ではない。が、この酒凄く飲みやすい。
太宰が持参した酒だと言うのも忘れて私は酒に耽った。
中也はすっかり熟睡しているようだ。
ふふふ、……まんまと嵌ってくれた 。 面倒くさがりの私が態々お酒を持って、しかも手料理を作って待っている…だなんて
目的は1つしかないでしょうに。
あ、寝込みを襲いたいってことじゃないよ?私そんなに性に困窮してないから。
…しっかし綺麗な顔だなー、本人には言わないけど、
せめてメイクくらい落としてやろうか、そんなことを思いつきメイク落としを洗面所に取りに行こうとすると、後ろから物音がした。
何の音だろうかと疑問に思い、後ろを振り向くと、
「うー……暑い、脱ぐ…」
とか言って中也が服を脱ぎ出したではありませんか。
なにこのラッキースケベイベント。
健康的な肉の付き方をして、引き締まった体が、酒に酔ってかほんのり赤らんでいる。
平均より大きめな、形の整った胸 。丁寧にケアされてぷるぷるの唇 。
見蕩れているといつの間にか下着だけを纏った破廉恥な姿になっていた。
「ちゅうやちゃんは露出の趣味があるのかな ?」
「ねェよあほ 。暑いつッてんだろ」
「あほ は君でしょう? 危機感無さすぎ。 それじゃ襲ってくれって言ってるようなものじゃない 。」
「…もしそうだと言ったら? 」
「……私悪くないからね。明日立てなくても文句言わないでよね。」
「 その心配は不要だから、
満足させてくれよ ? マイダーリン 」
「!
勿論 。 マイハニー 」
少しだけ空いた窓から差し込む月の囁かな灯に照らされながら
朝まで互いを求めあったのは、また、別のお話。
コメント
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え、上手…凄い上手いです!何かもう色々と神ですありがとうございました(土下座)