TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

橋本がハイヤーの後部座席に倒れ込んだことに宮本は驚き、慌てて顔をあげた。目を見開いて橋本を見つめたら、間髪おかずに柔らかいもので唇を塞がれる。


「…………」


触れるだけで、それ以上のキスに進めない橋本を不思議に思って、宮本はみずから唇を外した。


「陽さんどうしたの? ハイヤーでは絶対にしないって、いつも豪語してるのに」

「そうなんだけどな……でもこの瞬間だからこそ、雅輝にキスしてやりたいって思ったんだ」


そしていつものように、橋本は宮本の頭をぐちゃぐちゃに撫でまくった。


「陽さん、どうして――」


宥めるようなそれらの行動に、宮本の頭の中で疑問符が浮かんだ。橋本にそんなことをされる覚えはないし、なにより黙ってサーキット場に数回通っていたことについて、もっと叱られてもいいくらいだと思った。


「雅輝は走りで俺を魅了しながら、楽しませてくれるんだろ?」

「むぅ? 俺はそれくらいしか、特技がないですから。ってか陽さん、俺に魅了されてるんですか?」

「バカだな。しっかりハートを鷲掴みされてる。さっきだって、雅輝の顔ばかり見てた。すげぇカッコよかったぞ」

「あ……そぅなんだ」


目尻にシワが寄るように瞳を細めて、鈍感な宮本でも理解できるセリフで説明する橋本の言葉で、頬がぽっと熱をもった。


「雅輝俺はさ――。俺はそういったもので、おまえを魅了し続けることができない。どこにでもいる、ただの男だから」

「そんなことないって! 陽さんの存在そのものが、俺を惹きつけるんだ。ここでキスされて頭を撫でられたことも、こうしてお互いの気持ちをぶつけ合っていることすら、愛おしくてたまらない」


(どうしたら、陽さんの不安を解消できるんだろ。俺の語彙力じゃ納得するようなことは言えないし、行動で表現するにも、できることが限られている。だからこそ俺は――)


「雅輝……」

「嫌だったら言って。すぐにやめるから」


そう言って顔を寄せた宮本に、橋本はとても小さな声で返事をする。


「嫌なんて言うわけないだろ。愛してるんだ」


そんな橋本の想いに報いるように、宮本は熱い口づけをしたのだった。

不器用なふたり この想いをトップスピードにのせて

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

46

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚