皆さんこんにちは!スイ星です!
スマホ変えたので、あたらしいアイコンで活動していきます!
取り敢えず、前のアカウントで途中で終わった【妖狐の私と生贄の君】から連載を完結させますね。
ていうか「第十三話 叶わないネガイゴト 」が最終話の前話だったんだよ笑
完結前でおわった笑
まぁ、一から連載していくんで、今度は完結までね!
楽しんでいってくれると嬉しいです!
それでは、妖狐の私と生贄の君
どうぞ!
昔々、或る処に。
一匹の妖狐が棲む山が在りました。
其の妖狐は特別な力を持っており、山で育つ桃の実は、人の生命に小さな灯を享受するといわれています。
そんな或る日、山に数十人の人間が現れました。
人間達は山の麓に村を作り始めました。
然し畑の農作物は上手く獲れず、食料が不足していき、人々は窮地に追いやられました。
そんな中、山の守り神である九尾の妖狐は、人々に幸の種を享受したのです。
種は、どんな植物も枯れて育つ事のなかった土に、芽を生やしました。
忽ち芽は育ち、桃の花が咲きました。
やがて実った桃の実は人々に幸福を与えました。
すると如何でしょう?
人々は其の桃を食べた途端、力が漲り、どんな怪我も病気も直ぐに治るようになったのです。
村の人々は其の御恩を忘れぬように、九尾の妖狐を祀り始めました。
やがて村中には、桃の花が咲き乱れるようになりましたとさ。
***
と或る日の夜。琥珀色に輝く満月は辺りを照らした。
特別な日でもない、何でもない日。何時も通りに過ぎない日。けれどそんな日でも、淡く鮮明な記憶となる。
一軒の古民家の縁側に、二人の青年が胡座をかいて座っていた。
額から伸びる黒い角は月光を反射させ、右手に酒が入った瓢箪を持つ。瓢箪を傾け、赤い盃に酒をそそぎ、一気に口に流し込んだ。
「ゴクッ…………ぷはっ!//」
赭色の髪に澄んだ青色の瞳。酒呑童子──中原中也は、極上の酒を味わい、機嫌が佳かったた。
「あまり呑み過ぎないで呉れ給えよ?」
呆きれ口調でそう云ったのは、中也の隣に座っていた九尾の妖狐──太宰治だった。
此処はとある山奥にある一軒家であり、此の山には村が隣接している。九尾の妖狐である太宰は古くから此の山に棲んでおり、村の人間達からは守り神として祀られていた。
「安心しろ!そンなに呑んでねェから! 」
てらてらした笑顔で中也は云う。
「少しの量呑んでも酔い潰れる癖に……」
太宰は中也から視線を外し乍ら、苦り切った顔で呟いた。
「ン?何か云ったか?」
「別に?」
「ぁ、そ…」
盃に溢れんばかりの酒を流し込み、中也は再び其れを一気に呑み込む。
「つーか手前、また贄追い返したンだろ?」
中也が話を切り出した。
「折角、喰われに来て呉れてンだから喰ってやれよ」
「厭だよ、贄に来るのなんて全員十歳くらいの子供だし………せめて綺麗な女の人だったらなぁ」溜め息混じりの声で、太宰が云う。「それに、抑々贄なんて送って来なくて佳いのだよ」
「私を守り神だなんて祀ってるけど、桃の種は私が村の人間を興味本位で見に行った時に落としたものを享受しただなんて盛大に云ってるだけだし、其れに此の山だって私の力じゃあない、山が特別なだけさ」
「はっ………そりゃあ無ェな」
中也の言葉に、太宰は目を丸くし乍ら視線を移した。
「此の山は確かに特別だが、それは手前の妖力を受けてのもンだ。だから手前の心情が荒れれば、妖力に伝わって山も変化する」
太宰を指し、頬杖をつき乍ら中也は続ける。
「何時だったっけなァ?雨が何年間も降り続いたやつ… 」嘲笑混じりの笑い声を中也は上げる。
「なっ…!」太宰が驚きの声を上げ、恥ずかしがり乍ら云った。「中也、何で其の事知ってるの!?」
「風の噂っつーもンだ」
口元に笑を浮かべ乍ら中也は云う。
「……っ」
少し悔しがり乍ら、太宰は中也を睨んだ。
「ははっ…!ンだよ其の顔、珍しいなァ」
中也が太宰の顔を見て笑う。
「そ──そう云う中也は如何なのさっ!贄とか来ないのかい?」
話題を逸らすかのように、太宰は中也に聞いた。
「贄は来ねェな、何方かと云えば喰われに来る奴等ばっかだ」
「ぁー、そう云う事…」
何かを察したのか、太宰は興味が無くなったかこような口調をする。
「一昨日も『お前の首をとるっ!』って云ってかかって来てよ、直ぐに逃げ帰ってたけどな」中也はケラケラと笑い声を上げる。
「あぁそうですかぁー」
「まァ死にかけの奴を俺は喰うな。服とか喰う時邪魔だから、形見とか装飾とか、其れっぽいのは全部取ってから喰ってるけど……」
「死んだ人間食べて美味しい?」
「否…………………何方かっつーと超不味い」
苦虫を噛み潰したような表情をして、中也は云った。
「かと云って生きた人間殺して喰うのも何か違ェし……」
「──ふぅん、中也って酒呑童子の癖にそう云う拘りあるよね」
「癖って何だよ、癖って……っーか俺は中原中也だ。酒呑童子なンて人間達が勝手に付けた名だろ」
月に映し出した透明な酒を中也は一口呑む。
「酒好きだから酒呑童子、か……」
呟くように声を溢した太宰は、中也から顔を背けて、今度は態と聞こえるような良く響く声で云った。
「本当はこんなに酒が弱いなんて、人間達は知らないだろうなぁ〜」
其の言葉に中也は素早く反応し、太宰を睨みつける。
「ンだと手前!喧嘩うってンのか!?」
中也が太宰の胸倉を掴んで怒鳴り声を上げた。
「売る訳ないじゃあないか。あ、残りの酒没収ね。もう完全に酔ってるから」
そう云う太宰の手には、先程まで中也が持っていた瓢箪が握られている。
「あ゙!」中也は瓢箪が取られた事に気付くと、取り返そうと太宰の上にのし上がった。「返せっ!」
「やーだよっ」
太宰は悪戯っ子のような笑みを浮かべ乍ら、瓢箪を中也から遠ざける。
「くそっ…!つーか手前だって贄か其処等の人間喰わねェと駄目だろっ!」
「何故?」
中也の言葉に太宰の気が緩んだ。其れを待っていたかのように、中也は手を伸ばす。
然し中也の其の行動さえも予測していた太宰は、瓢箪を後ろに投げた。
「はっ!?」中也が目を見開く。
投げられた瓢箪を、太宰の白く柔らかい尻尾が受け取った。酒の事にのみ中也の関心が注がれる。
「オイッ、酒寄越せ──」
「中也 」
中也の言葉を遮って、太宰は静かに中也の名を呼んだ。
「駄目って……………如何云う意味?」
其の問いに中也は手を止める。暫くの沈黙の後、中也は真剣な声色で云った。
「俺達妖怪は人間を喰って妖力を補わねェとなンねェ、じゃねェと妖力が尽きて手前死ぬぞ?」
「死ぬのは本望だね」笑顔を作って太宰が云う。
中也は顔を顰めて
「そーかよ、なら何時か────俺が手前を殺してやる」
と云った。
「本当かい…?」
太宰は呆気にとられたように目を丸くしながら、口先から言葉を溢す。
「嗚呼」
中也が静かに云った。太宰の口元が緩む。
「ふふっ、流石私の相棒だ」
「相棒?俺は手前の相棒になった憶なンてねェぞ?」
「あぁ…ご免、此方の話」
其の言葉に中也は首を傾げた。
「それに私は人間を食べなくても、桃を食べてれば大丈夫だしね」
そう云って、小綺麗な形に切られた桃を爪楊枝で刺して太宰は食べた。
「あ、そ……」興味なさげに中也は太宰を見る。
「だから手前は九尾でも八尾の力程度なンだよ」
「何其れ喧嘩うってるの?酒弱い癖にっ!」
「あ゙ぁ゙!?其れは関係無ェだろ!っーか別に弱くねェッ!」
「そんな事云って、今だってフラフラじゃあないか」
嘲笑しながら太宰は中也に云った。
「ッ〰︎〰︎煩ェ!」
「あっははは」
***
「もう帰るのかい?」
数歩前に居る中也に、太宰は訊いた。
「まァ、美味い酒も呑めたしな」
そう云って中也は太宰の方に振り向く。
「…………………中也」
太宰が静かに中也の名を呼んだ。
「ン?なンだ──」太宰が中也に向かって桃を一つ投げる。「ぉわっ!?」
顔に当たる寸前で、中也は桃を受け止めた。
「君にあげるよ、帰り道で好きに食べ給え」
「いいのかよ………?」
中也が少し遠慮気味の云い方で云った。
其れを云うのも、太宰の山に実る桃は特別で、外へは持ち出してはならない──と云うのが、村の掟である。
村が勝手に決めていた事で、特に人間に興味を持たない太宰はお好きにどうぞと云う感じなのだが、中也はこういう事に関しては少し真面目なのだ。
「別に?村が決めた事だし、此れは私の好きにして佳いのだよ 」
「………………」
月光を反射する桃を、中也は静かに見つめた。そして──
「ありがとな、太宰!」
にっと満面の笑みで中也が云う。
太宰が目を丸くした。意外な事が起きて脳がフリーズしてしまったかのように、太宰は固まる。
「太宰?如何した?」
顔を覗き込みながら、中也は云った。
「……ぁ、えっと…いや…………」
何か気不味い事があって言葉が咽喉に詰まったのでは無く、なんて云えば佳いのか上手く言葉が出なくなって、太宰は言葉を切らした。
──カラン、カラン。
太宰が下駄の音を響かせ乍ら、数歩前に出て中也に近付く。
中也の後ろ髪の毛先に、太宰は触れた。
「ォ……オイ、何だよ…?」
急な太宰の意味不明な行動に、中也は目を丸くする。
「いや、?」太宰が小さく微笑した。「君は赭色の髪だから、てっきり夕陽が似合うと思っていたのだけど……」
髪から手を離し、少し儚げな笑顔を太宰はする。
「月光も随分と似合うじゃあないか。青い瞳なんてより一層鮮明に見えて──とても綺麗で趣がある」
中也は目を瞠った。こんな事を云われたのが初めてだったからだ。
見る事のない赭い髪色に、刻み込むように顕在する青い瞳。
誰が如何見ても異端。それこそ、中也は生まれた時から両親にまで『鬼』と云われたのだから。
自分の──嫌いなところであった。
だが太宰は中也のそんなところを綺麗と云った。其れが中也にとって、何よりも嬉しかったのだ。
「………………そ、うか…?」
顔を逸らし、髪の毛先を弄り乍ら中也は訊く。
「嗚呼」 太宰が静かに答えた。
「──太宰」中也は顔を上げ、太宰と目線を合わせて云った。
「また遊びに来るからなっ!」
とても嬉しそうで、何処か少年のような面影を感じさせる其の笑顔は、中也が今まで太宰に見せた笑顔の中で一番の笑顔であった。
「うん、楽しみにまっているよ」
太宰はそう云って、優しい笑顔で見送った。
***
──あれから数百年後。
太宰は畳の上に寝転がり乍ら小さく呻った。
「はああぁぁぁ………暇だなぁ」
ごろんっと寝返りをうつ。
視線の先には酒が入った樽がある。外に聳える木には桃が実っていた。
「もう十分時間がだったじゃないか」語りかけるように太宰は呟く。「極上の酒も熟した桃も用意してあると云うのに……」
再び寝返りをうって、太宰は天井を見た。
「──詰まらないなぁ」
口先から溢れた太宰の言葉は、誰にも届く事はない。
待ってるからね、中也。
コメント
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おや、衝撃の事実。まさかの最終回の1話前だったとは...... 何回見ても面白いし、太宰さんと中也の掛け合いが本当に尊くて好き。 (追記: 桃が熟してるの熟が学習塾の塾になってたので一応報告しておくね!後結構文字化けしてたかも?私の機種があれかも知れないから何とも言えんが...)