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月が綺麗ねと言われたい!
雪が降り、学校の窓から見える景色は一面銀色で染まっている。
昼休み、いつもなら太陽が出ていた。
ふと、前の方の席に目を向けると、女子が集ってる。
多分、宮兄弟の治くんだろう。
そう傍観していると、ふと後ろから声をかけられた。
「小鳥遊さん」
小鳥遊は私の名前だ。
「?……あぁ、角名くん」
家が近く幼馴染なのだが、クラスなど、友達がいる場所では苗字呼びだ。
ちょいちょい、と指で外を指さす。
その意図がわかり、二人で教室を出て、この時期は寒いから誰も近寄らない外の自販機でカフェオレを買って飲む。
倫太郎の外の雪を見る目が、寒くて吐く白い息が。
なんでもないのに、とても綺麗に見えて、胸が締め付けられるように苦しかった。
倫太郎が言葉を紡ぐ。
「あ、そうだ。バレンタインデーだけども、誰かに渡す予定とかあるの?」
「ないなぁ。あ、倫太郎にはあげるよ、毎年のごとく」
「友チョコでしょ、ありがたく貰っとく。」
倫太郎がそう言って笑う。
「(友チョコじゃ、無いんだけどなぁ)」
少し笑い返した。
毎年、そう言われ続けていて、半ば諦めている。
私がチョコを渡している相手は、倫太郎だけだって、彼はまだ気づいていない。
「どうしたの?雪夏」
雪夏、私の下の名前。
正反対な名前をつけたものだ。
雪と、夏。
まるで、本命なのに、好きなのに、義理チョコだと、友チョコだと言っている私みたいに、正反対だ。
「なんでもない、それより、今日は一緒に帰ろう、寒そうだから倫太郎を風よけにする。」
「なにそれ、俺寒いじゃん。じゃあ帰りにコンビニよって暖かいの買お。」
そう言って笑った倫太郎の顔が、何故かとても輝いて見えた。
反応が遅れる。
不思議そうな顔をして私の顔を覗き込む倫太郎。
「どうしたの?」
「んーん、なんでもない!それいいね、私アレかお、肉まん」
「じゃあ俺もそうしようかな」
「倫太郎はファミチキかってよ、半分しよ」
「随分わがままな幼馴染。」
「今更?笑」
そうやって笑いあった。
「あ、なんかついてる」
そう言って私の髪に触れる倫太郎の長くて細い指に、目線がいく。
顔に熱が集まって、なんだか恥ずかしい。
「取れた、ほら、ゴミ。」
「っ……あ、うん、ありがと、倫太郎。」
「顔赤いよ。あ、俺のこと好きだったり?」
「なわけ。」
「えー、あ、お礼に今度なんか奢ってよ。」
「無理。ぼったくる気か。」
そんな他愛もない会話をしていたら、昼休みの終わりを知らせるチャイムがなった。
午後の授業は、窓の外を見て過ごした。
止みそうにない雪。
さっき見た、倫太郎の指を思い出して、顔がまた熱くなる。
「どうしたん、小鳥遊さん。顔赤いで。熱でもあるんちゃうん?」
今日、隣が休みなので、その隣の席の子の隣の治くんが心配して声をかけてくれた。
「え?あ、うん、熱は無いよ!大丈夫、心配してくれてありがとう!」
できるだけ、悟られないように笑顔で返す。
頭の中ではさっき倫太郎に言われた言葉が反芻している。
「俺のこと好きだったり?」
思い出しただけで顔に熱が集まる。
「え、ほんまに大丈夫?めっちゃ赤いで……!!??」
また体温が上がったからか、顔が赤くなり、再び治くんが心配の声を上げた。
授業終了のチャイムがなり、倫太郎がこっちに来る。
「あ、角名。小鳥遊さんめっちゃ顔赤いねん、熱あるんちゃう?」
「え?」
「大丈夫!ほんと。私たまにすごいヒートショック?起こすことあってさ。笑」
「そうなん?笑ならええわ。よかった。」
心配してくれたのか、申し訳ないなぁ。
「雪夏。」
「今日さ、帰るんだったらバレー見てから帰ってよ」
「え?いいけど……」
「俺頑張るわー」
「頑張るのはセッターとかスパイカーじゃなくて?」
「分かってへんなぁ〜小鳥遊さん。
バレーは全員の頑張りと連携があってこそやで」
「不仲だったら出来てない、でしょ?」
倫太郎がそういう。
「……ということは、侑くんと治くん、口先では喧嘩ばっかだけど、実は仲良いってことだよね」
「……まぁわかりやすく言ったらそうやな……」
倫太郎が爆笑してる。
失礼な。
「まぁ、放課後一緒に行こうよ、バレー。」
「女子エグいで〜。小鳥遊さん早めにおいでな」
「ありがとう、治くん!」
倫太郎がバレーをしている所を見るなんて、初めてかもしれない。
基本遊んでもゲームばっか。
そのことばかり考えていたら、授業は終わっていた。
さっさと帰る準備を終わらせて、鞄を机の上に置く。
また後で、帰って来ればいいや。
同じく準備を終えたらしい倫太郎に声をかける。
「角名くん」
「あぁ、小鳥遊さん」
「ほら、さっさと行くよ。」
「はーい。」
倫太郎に手を引かれ、早めに歩いて体育館に行く。
入口は既に少ないとはいえ女子でごった返しており、柄にもなく気持ち悪いなと思ってしまった。
そこまでして渡したいのか。
さっと、女子に引っかからないようにダッシュで通り抜け、ドアを閉める。
久しぶりに入った体育館はいつもより広く感じられた。
倫太郎は着替えてくると言って体育館の更衣室に消えていった。
一切バレーに興味を持ったことない私は、何が何かわからない。
ブロックとスパイクとセッターしか分からない。
細かなルールなどは全く知らない。
昔几帳面な私よりひとつほど年上の先輩に教えてもらったような気もするが、全く覚えていない。
「ほんと何が何かわからない……」
「なんや、前教えたげたやん。もう忘れたんか。」
「あ、北さん」
いつの間にか戻ってきていた倫太郎がそう言う。
「北さん……?……あ!そうだった、教えてもらった、中学の時に。」
「たまたま帰り道一緒で、その話して教えたげたの忘れてんねん」
「ごめんなさい!」
「雪夏は思って無いのに言うくせあるんで気をつけてください。詐欺師ですよ。」
「はぁ〜?人聞きの悪い。」
「ははは、微笑ましいなぁ」
なんか、おばあちゃんとかに見られてる気分。
「で、角名。侑と治は?」
「……喧嘩でもしてるんじゃないですか?」
「アランとかは後で来ると思いますけど。」
「……私何したらいいの???」
「俺の上着でも着てどっかで待ってて。」
「はーい、ありがと、寒いのよ体育館。」
「はい、どーぞ。」
「どーも。」
「そのかわり、ちゃんと見ててよ、俺のこと」
「任せろ。」
しばらくすると、他のバレー部員の人達が入ってきて、女子も入ってきた。
私は観戦席の下、影になっているところでただひたすら言われた通りに倫太郎を見ている。
チラッと横目でこっちを見た時、ピースをしてくれるのがとても好きだ。
ただ、他の女子も沸き立つのに腹が立つ。
まぁいいや、上着着てるし。
倫太郎の匂いがする。
あいつ、無駄に身長が高いから、手が出てこない。
手を顔の前に持っていく。
より倫太郎の匂いがして、抱きしめられている気分だった。
……とてもキモいけど。
部活も終わり、倫太郎がこちらに向かって歩いてくる。
「着替えてくるから、上着着たままならそのままでいいけど。ちょっとまっててね」
「着たままにしよー、寒いし。いつでまでも待つ。さっさと着替えてきて」
「とんでも矛盾」
そうやって笑いあって、倫太郎は着替えにいった。
体育館を見渡す。
とても広く感じられた。
ボールの跳ねる音、スパイクを打つ時の音、ブロックの音、セッターの蹴る音。
すべてが広がっていた。
しばらくして、倫太郎が帰ってきた。
「よし!コンビニ行こう!!」
「あ、チョコあげるわ。忘れてた。倫太郎どーぞ。」
「今年も美味そ。お菓子作るの美味いよね」
「ほんと?嬉し。」
「はい、いこ」
さりげなく手を差し出してくれる。
人の居ない学校の階段をのぼり、鞄をとる。
「私ね、音無しであるける」
「どういう自慢?笑」
そうやって、変な話をしながら下駄箱まで歩く。
靴を履いて、スカートに着いた砂をはらう。
そのまま、近くのコンビニによる。
雪がただ降りしきる。
「雪、すごいね」
「ね。前見えない、雪夏、みて。」
「なに?……やば、マフラーにめっちゃ着いてるじゃん」
「雪夏もね。」
「まじ!?」
「まじまじ。」
「えー、まじかー……」
そのままコンビニに入り、言っていた通り、肉まんとファミチキを買う。
それを半分にわり、分けて食べる。
19時30分。
雪の世界に、月が顔を出した。
こんなに月がきれいな日には。
1度でいいから。
月が綺麗だと言われたい。
自分から言う勇気が出ない。
言ってこの関係が壊れてしまうなら、いっそ言わない方がいい。
そう思ってるのに、あなたの目の先にあるもの、全部私で居たい、そう思っちゃうんだ。
でも、私に貴方の「月が綺麗」だと言われる日は来ないんだ。
あぁ、でもやっぱり。
「月が綺麗ね」と言われたい!
君の目の先ずっと私で居たい!
月が綺麗ねが私じゃないから。
なら今夜だけ。
言われる日が来るはずないのに。
期待してしまう自分が恥ずかしい。
「ねぇ、月が綺麗だね、雪夏」
は、と白い息を吐く。
「……!!!それ、 ほんと?」
「うん、俺も、好きだよ。」
「私も、好きだよ、倫太郎。」
「世界で1番愛してる。」
月が綺麗ねと言われたい。
思いつきの駄作です。読んでくれた人special thanks。
月が綺麗ねと言われたい!が大好きで衝動で書いてしまいました。
↓プロフ
小鳥遊 雪夏
たかなし ゆきな
ずっと前から好きだった。
意外と夢見がちなロマンチストな女の子。
一方的な片想いだと思っていたらまさかまさかの両想いだった。
ただ、昔は角名が好きだと認めたくなくて嫌いと言い張っていた。
ただ、最近は付き合いたいなぁと思うようになり、元々顔に出やすい性格のためか、感情の起伏がわかりやすい。
角名倫太郎
前述の通り、小鳥遊がこれなので角名は本命ではなく、友や義理の類だろうと思っていた。
が、自分を見た時の反応や、実はこっそり見ていた上着のやつも全て含めて自分のことが好きなんだと自覚。
片思いだと思っていたらこっちもまさかの両想いでとても嬉しい。
ずっと前から好きだった。
ポーカーフェイスの下では今すぐ抱きしめたい等々思っていたそう。
気が向けばR指定を書くかもしれない。ピロートーク()が双子の話っていう話を書きたいんだッッッ!!!
欲しければぜひコメントとハートをください……。
愛に枯渇してます……(?)
(ꐦ◜ᴗ◝)<アゲルワケネェダロォォォォォォォォォォ!!
って方はお引き取りくださいって言いたいけどそこをなんとか下さい。
コメント
2件

うちもその曲めっちゃ好き!!まじでウレイちゃん物語作るの上手すぎでしょ