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リフレクションを解除したアスタロトが言う。
「なんだ蝿(ハエ)か…… まあ蝿なら潰しておくか」
「ダネ」
「そうですわね」
頭が良いキャラクターが半分以上いるにも拘らず(かかわらず)、いつも単純な選択肢を選んでしまう、どうしようもない『聖女と愉快な仲間たち』の中で、たまにまともな事を言ったりする善悪の叫び、魂の慟哭(どうこく)が一軍の皆の耳に届けられたのであった。
「ちょ、ちょ、ちよっと待ってぇぇ! 待つのでござるよぉ! それ、その子つぶしたらダメなんだからねぇ!」
その叫びを聞いてプチッと行こうとした動きを止める一軍であった。
キョトンとした顔を自分に対して向けている一軍のおバカさん達に説明を始める善悪和尚、優しい。
「オルクス君の魔力探知で見つけた上にアジ・ダハーカの分身竜だけで捕獲できなくてパズスの鉄盾(アスピーダ)の中でもあんな風に飛び回っているのでござるよ? どう考えても只の蝿じゃないでござろ? 調べてみるのでござるよ! それにベルゼブブって『蝿の王』なのでござろ? なんだ蝿か、んじゃあ潰しとくかって…… 普通なら、そうはならないでしょ? 普通だよ、普通…… ちょっと位は考えて行動しようではないかぁ、皆の衆ぅ、でござろ?」
「「「「なるほど」」」」
「ダネ」
「そう言われればそうですね、では調べてみましょうか、えっと、シヴァ、ちょっと手伝って頂戴」
呼ばれて近づいてきたシヴァと一緒にまだピーピーが来ていないコユキも付いてきた。
コユキが興味深そうに覗き込む鉄盾(アスピーダ)内には、二十センチ程のアジ・ダハーカ分身をぶら提げながら、魔力の壁に何度もタックルをかます、五ミリ位の蝿が見える。
ただしその背に有った羽の数は、普通の蝿の前羽二枚に短な後ろ羽二枚では無く、四枚とも前羽かと見紛う程に大きくどこか不格好に見えた。
「ラマシュトゥちゃん、これ普通の蝿じゃないわね、魔獣なのかな?」
「いいえ、普通の蝿が使役されて変態したのだと思います、術者の魔力が流入して『馬鹿』になっている状態では無いですかね、善悪様が仰っていた通りこの蝿が装備品代わりになってスカンダに制約を掛けていたのでしょうね」
コユキには四枚の羽が普通には見えなかったが取り敢えず頷いて置く事にした。
「ふーん、んで、今から何を調べるのん?」
「先程と同じですよ」
「ダネ」
「え? さっきなんかやってたのん? ピロシキ食べてて見てなかったのよぉ」
全くこのデブは……
呆れかえる私、観察者と違い優しくて我慢強いラマシュトゥが態々(わざわざ)説明してくれるのである、優しい。
「えっと…… この制約をですね、アヴァドンのバシリアスまあカリンマの力をスカンダでは無く、今度はこの蝿に直接掛けます、そうすれば間違いなくスパイクされてノイズが発生しますので、それを私が確認して術式を読み解くのですわ、万が一秘匿された術式だった場合、シヴァがシントリーヴィで破壊します、その一瞬魔法陣や術式書置(しょち)が空間に展開して顕現しますので、それを私が読み解いて術者や制約の種類、描かれた魔法が誰の魔力に依る物か判別する、そういった試みをしよう! 万が一術式がその本質を隠し切ったとしても再生の瞬間ならばその系統を隠し通す事など不可能、その何れ(いづれ)かで黒幕に近づければ重畳(ちょうじょう)、その一縷(いちる)の望みに縋って(すがって)私たちは頑張っている、という訳ですね♪」
「ふーん、そうなんだ……」
だろうな、私も判らんっ! コユキも同じく判らなかった事だろう。