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誰にも理解されなかったにも拘らず、説明した事で自己満足に陥ってしまったのであろうか? ラマシュトゥは開始の合図を告げたのである。
「では、アヴァドンやって頂戴!」
「うすっ!」
ボウっとした蹂躙(じゅうりん)、カリンマがブンブン飛び続けていた蝿を包み込んで、その直後発せられるアヴァドンの声。
「バシリアス! 静止せよ!」
先程、スカンダ自体に施した時とは違い、小さな蝿からは僅かな放電、スパイクが認められ漆黒の眼球を超高速で動かし術式を見破ろうとするラマシュトゥ……
彼女は小さく呟く。
「ちっ!」
「『破壊(シントリーヴィ)!』」
パンっ! パンっ! パンっ! パンっ! パンっ! パンっ! パンっ! パンっ! パンっ! パンっ! パンっ! パンっ! パンっ!
ラマシュトゥが先程までとは違うニュアンスで叫ぶのである。
「良しっ! 見えたよ♪ ……え? んでも、あれれ、でも、これって…… え? そういう~…… ま、まさかぁ……」
ラマシュトゥは何やら困ってしまっているらしい、反してアヴァドンとシヴァの兄弟はやり遂げた感を滲み出しながら嬉しそうにしてハイファイブを決めて喜び合っていた。
「イエェイ! アヴァドン!」
「イエェェイ! シヴァ兄さんっ!」 バチンっ!
コユキが聞くのである。
「おお、何か分かったのね? そうでしょっ! アヴァドン君、シヴァ君!」
答えるアヴァドンはいつもの大仰な物言いを抑え、魔王らしく胸を張って答えるのであった。
「ええ、ええ、そうですとも! そうでしょうともぉ! 完璧に理解できましたぁ! この術式を作り上げた悪魔は、私の双子の妹、アルテミスでございましたぁ~! んで術式に魔力を供出して自らの使い魔とした存在はぁ! んんんんん、あれ、あ? あれれん? あれれ? えっと…… ええ! こ、これって、どういう……」
「なに? なんなのん? はっきり言ってくれなければ判らないのよぉぅ! 教えてよ、エロい人ぉぅ!」
コユキの気持ち悪い叫びに合わせるように善悪も聞いちゃうのであった。
「拙者も気になっていたのでござるよ! んで誰が使役(しえき)したのでござるか? 教えてクレメンス! で、ござるよぉ~ぅ! 黒幕の正体は一体誰だったのかっ! ほら、ハッキリ言えよっ! 言え言え言え言え言え、でござるよぉ!」
珍しく、賢いラマシュトゥとちょっと(?)中二病的なシヴァ、残念なアヴァドン、賢い奴とおバカな二人が顔を見合わせてうなずき会った後、声を揃えて答えたのである。
「「「お前だよ」」」
「ん? お前、って某たちの事ぉ、え、え、え――――――――っ!」
「う、うそん…… アタシなのん?」
ラマシュトゥやアヴァドン、シヴァにまで発言の機会を与えてあげて聞いた所によると、蝿を制約の呪具と化したのはアヴァドンの双子の妹アルテミス、月を象徴する悪魔だったらしい。
問題はその後であった。
使い魔たる蝿ちゃんに支配の呪いを掛けたのは、コユキと善悪、つまりルキフェル自身だと言う嫌疑が掛けられてしまったのである。
勿論、コユキも善悪も覚えがない。
だというのに、目の前に雁首(がんくび)揃えた悪魔、魔王や魔神は追い詰めるような非難の目を無実の二人に向け続けているのであった。
「で、何なんですかね? これって自作自演的な? そういう奴なんですかね?」
モラクスの声が変に冷たかった……
「あぁーそうかそうか、そういう事しちゃうんだね~、まあ、そっかそっか、悪魔だもんねぇ~、分かる? かな? んんんん分かる訳ねーだろうがぁ! ちゃんと説明してくれよぉぅ! 善悪様ぁ! コユキ様ぁ! オイラ納得できねぇーよぉ! おいぃっ!」
普段は大人しい感じのパズス迄、本域に突入する勢いでキレッキッレ状態であった。
問い詰められた善悪とコユキは、責められる覚えもないままで、オドオドしているしかなかったのである、だって責められる覚えが皆無だったから……