~プロローグ~
『離れていても私と葵はずっーと友達だよ!』
『また、いつか会おうね!』
それは、中学二年の紅葉がきれいな秋真っ只中のことだった。
~大切な友達~
紅葉した葉が風に揺られている。
「もう秋か…….」
紅葉と離れてから丁度三年がたつ。
まさかまた会える日が来るだなんて思いもしなかった。
「また、紅葉と一緒に学校生活を送れるのかー」
想像しただけで楽しみになってくる。
紅葉には驚いてほしいから内緒にしている。けれど三年という月日は体感してみるととても長い。一応、紅葉とは毎日電話はしているけどいざ、会うとなると少し緊張してしまう。でも、きっと紅葉なら喜んでくれるだろう。紅葉の喜ぶ姿を想像しながら、これから私の通う新しい高校へと足を進める。
今日からお世話になる教室の前にたつ。
「紅葉、もうきてるかな…..?」
迷う心を置いて思いきって教室の扉を開ける。教室にいる、クラスメート(になるだろう)の視線が痛い。きっと、急に知らない人が入ってきたことに驚きと期待を抱えているのだろう。教室全体をみわたしてみるが、紅葉は見当たらない。まだ来ていないようだ。仕方なく、自分の席へと座る。
「おはよう!転校生?私は伊集院万里奈。これから、よろしくー!」
私のとなりの席にいた、女の子が話しかけてくる。
「私は、雨宮葵です。よろしくね。伊集院さん。」
「万里奈でいいよ~よろしくね、葵ちゃん!」
「さすがに呼び捨ては….じゃあ、万里奈さん!」
「んー、まぁ、万里奈さんでもいいよー!いつか万里奈って呼んでよ!」
「うん。」
隣の席がの人が話しやすそうな人でよかったな。もともと人付き合いはそんなにいい方じゃない。けど、隣の席が万里奈さんなら楽しい学校生活を送れそうだ。
学校のスタートを告げるチャイムがなる頃、ガラガラと勢い良くドアが開いた。何となく、視線を向けるとそこには疲れた顔をした紅葉がいた。紅葉は挨拶もせず、うつむきながら自分の席に座った。途中目が合い、微笑んでみたけれど一瞬驚いたような表情を見せたあと、何事もなかったかのように席へと向かって行ってしまった。
(あれ?無視…..された…..?見えなかっただけかな?)
「ちゅうもーく。気づいてる奴もいると思うが我がクラスに転校生がきた。雨宮~自己紹介しろ~」
緊張しながら席をたつ。なんて言おう。
「えっと、雨宮葵です。気軽に話しかけてくれたら嬉しいです。」
自己紹介が終わると、紅葉以外のクラスメートたちが拍手してくれる。すぐに席に着き、それを合図に一時間目がスタートする。
授業が終わったら、紅葉に話しかけてみよう。
一時間目が終わり、すぐさま紅葉の席へ向かう。
「紅葉、久しぶり!っていっても毎日電話してるけどね」
「あ…..うん、久しぶり……」
紅葉は消え入りそうな声で答える。
(どうしたんだろう?紅葉はもともと明るくて何事にもはっきり言う性格のはずなのに)
「じゃ、じゃあ、私行くから」
「え!?ちょ、ちょっと待ってよ!」
私の声が届いてないのかそれとも届いていたのに無視したのかは分からないが紅葉は早足で廊下へと歩いて行ってしまった。
(やっぱり、なんかヘンだよね?電話で話してるときよりもヨドヨドしてるっていうか….)
不思議に思いながらも気にせず、次の授業の準備をする。
この日は結局、一日中紅葉とは話せなく終わってしまった。避けられている気さえする。他に大切な友達ができたのならしょうがない。でも、紅葉は見かけるたびに一人だった。
私に話しかけてくれるクラスメートはたくさんいて楽しい一日だったが、紅葉と話せないのなら私にとっては意味がない。ベッドに横になり、通話ボタンを押そうとする。もちろん、相手は紅葉だ。ただ、何となく紅葉は出てくれないような気がした。思いきってかけてみたが、やはり繋がらない。電源を切っているようだ。
「仕方ない、明日無理矢理にでも、紅葉と話すしかない。紅葉は私の大切な友達だから」
私は、こう誓い、眠りにつくのだった。
コメント
3件
ピャァァ( ) ピギャァァ( ) グアァァァァァ( ) (イキオイダイジ)