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理仁に不安を打ち明けてからというもの、すっかり元気になった真彩はいつも通り変わらぬ毎日を過ごしていた。
けれど、それから二週間程が経った辺りから、本格的に悪阻が悪化し始めて家事もろくに出来ない程の倦怠感に悩まされていた。
まだ真彩が妊娠した事を知らない一部の組の人間や悠真は日々彼女を心配していた。
「……やっぱり、もう、話してしまった方が、いいですよね。悠真もかなり心配してるみたいだし」
「そうだな。安定期に入ってからの方がいいというお前の気持ちも分かるが、今後の為にも話した方がいいだろう」
悠真については、何度か話そうとはしたものの、どう打ち明けるべきか迷い続けていた真彩はなかなか話す決断がくだせずにここまできてしまい、その結果余計に心配させて辛くなった事もあり、それならばいっそ皆にも話すべきだと理仁が助言した。
「……今日は、比較的体調が良いので、私の口から皆さんに話そうと思います」
「分かった。早速皆を集めて来る」
真彩としては、安定期に入ってからの方が良いかと思って隠していたのだけど、こうも寝たきりが続くと何か悪い病気ではないかという憶測も生まれるだろうし、これ以上悠真に心配をさせない為にもきちんと話をする事に決めた。
理仁の声掛けで共に寝起きをしている組員全員が大広間へ集められたところで、理仁に支えられながら相変わらず具合の悪そうな真彩も顔を出した。
「ママ、だいじょうぶ?」
「うん、今日は比較的良い方だよ」
朔太郎と翔太郎の間に座っている悠真は真彩を心配して元気が無さそうだ。
「悪いな、わざわざ集まってもらって。ここ最近、真彩の具合が良くない事で、皆には負担を掛け済まない」
「本当にごめんなさい、皆さんもお仕事で忙しいのに、家の事までやらせてしまって……」
突然の謝罪に組員たちは焦りの色を浮かべ、
「いえ、そんな事ないです!」
「気にしないでください!」
と口々に組員たちは気にしていない事を告げると、そんな彼らに理仁は、
「……実はな、真彩には今、新しい命が宿ってる」
そう皆に向かって話しをした。
「え?」
「新しい、命?」
「それって!」
真彩がお腹を擦りながら頷いて見せると、組員たちは顔を見合せながら確認し合い、
『おめでとうございます、真彩さん!!』
組員たち一同は笑顔を浮かべながらそう口にして、皆自分の事のように喜び始めた。
そんな状況でも未だよく理解し切れていない悠真は、
「新しい、いのち?」
と不思議そうに真彩に尋ねたので、真彩が分かりやすいようもう一度説明する。
「そう、ママのお腹の中にはね、今、赤ちゃんがいるのよ、悠真」
「悠真に弟か妹が出来るんだぞ?」
「悠真は、お兄ちゃんになるんだ」
そんな真彩の言葉に朔太郎と翔太郎が更に分かりやすく補足をすると、
「おとうとか、いもうと……。ゆうまが、お兄ちゃん?」
話を聞いた悠真は聞いた言葉を繰り返しながら、悠真なりに状況を整理しているようだった。
「皆には心配かけたな。安定期に入るまでは黙っておこうかとも思ったんだが、これ以上心配させてもという真彩の一声で伝える事に決めたんだ。皆、今後も真彩のサポートを頼むよ」
「任せてください!」
「真彩さんは家の事なんて気にせず、ゆっくりしてください!」
「そうですよ、負担になるといけないですから、無理しないでください」
「皆さん、本当にありがとうございます。体調が戻ったら無理のない程度に生活していくので、よろしくお願いします」
理仁と真彩は再び組員たちに思いを伝え、皆が喜びとお祝いムードの中、一人だけ浮かない表情をしている者がいた。
それは――
「……ママのおなかの中に、赤ちゃん……。ゆうま、おとうともいもうとも、いらない!!」
「悠真?」
今しがた詳しく説明を受けて一人状況を整理していた悠真で、皆が呆気に取られる中、そう叫んだと思ったら立ち上がると一人部屋を飛び出してしまったのだった。