「秘密の顔」

🔞🟦🏺

あの先を書かないのは優良誤認で訴えられたら負けるので書きました。

禊浦の格好が好きな🟦と、🟦の素顔が好きな🏺の話。恋愛感情とかはないです、どっちも性癖が終わってます

いきなり始まるしずっとやってます、ご注意を

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つぼ浦は本署のトイレにこもっていた。

あの日以来、青井が近くに来るだけで平静ではいられなくなった。食事を摂るため、タバコを吸うために少し鬼面を持ち上げ、口元が見えるだけでドキドキしてしまう。

今日も同僚の輪から離れて水を飲む青井を見てしまった。ゴクリと動く白い喉が、少しだけ見えた唇が、簡単にあの日を想起させた。それだけで身体が熱を思い出してしまう。

そのたびになんとかうまく誤魔化してきたが、どうしても抑えられないときは、発散させるために仕方なくトイレにこもるしかなかった。

つぼ浦は性愛については中学生以下の知識しかない。しかし「顔が好みすぎる先輩に、至近距離で気持ちいいことをされそうになった」というただ一度の戯れで、今まで意識しなかった欲求が芽生えてしまった。

もっと経験があればあれはちょっとした悪ふざけだと飲み込めたかもしれない。しかしその中学生程度の半端な知識が、逆に眠っていた性欲を叩き起こしてしまった。

「あ……ッ、は、んンッ」

今も下着から取り出したモノを、手でずっと慰めていた。トイレに人が来ないことだけを願い、身をかがめてぐちぐちと幹を扱く。

あのとき首に触れた口の熱い感触が手を早める。あれの先には何があったのか、つぼ浦の幼い頭では想像もできない。だからこそ未知なるものを欲して身体は簡単に飢える。

「はッ、ア…オセ…ッ」

ちらりと片手のスマホを見る。あのとき撮った微笑む青井と目が合う。それだけで腰がビリビリと震え、熱がこみ上げる。目の前が真っ白になり、直後に手のひらを熱い液体が濡らす。

しばらく放心してからトイレットペーパーを手にとって後始末をする。

「ッ……ぜってぇ言えねぇ」

賢者になっている時間も相まって、惨めとも思える自分の姿を客観視してため息が出た。

鬼の先輩の、素顔を見るだけで簡単に熱を帯びてしまうなど、誰にも言うわけにはいかなかった。

＊

その日は季節外れに暑い日で、半袖短パンのつぼ浦でさえも日向にいると汗をかかずにはいられなかった。

「チクショウ、逃げられちまったか」

強盗通知を見てから駆けつけるのが間に合わず、もぬけの殻の銀行の前でつぼ浦は悪態をつく。遅れてパトカーでやってきた青井も車から降りてため息をつく。

「アオセン、なんでヘリじゃないんっすか」

「たまたま近くを走ってたんだよ。……にしても暑いなぁ」

ぼやく声を尻目に血痕の一つでも落ちてないかとつぼ浦は銀行内へ向かう。しかし見るからに何も残っておらず、すぐに諦めて出ようとしたところで思わず足を止めた。

車の陰に隠れて、青井が鬼の面を脱いでいた。

白い顎に汗が伝って落ちる。どきり、と胸が高鳴る。黒い長袖のSWAT服ではよほど熱いのだろう、顔に流れた汗をタオルで拭き取っている。

しっかりと顔を見たのはあの日以来だった。

「ッ…！や、べぇ」

ずんっ、と腹が重くなる。乾いた身体はすぐに火が付く。そのうえすぐに燃え上がる。前かがみになって運転席に転がり込み、慌ててエンジンをかけた。

走り去る瞬間に青井と目が合ったような気がした。だが振り向く余裕はつぼ浦にはなかった。

どこかのトイレに駆け込むのも間に合わず、つぼ浦は車を乗り捨てて路地裏に逃げ込んだ。積まれた廃材の裏に隠れて下着の中に手を入れる。すでに熱くなったものが手に触れた。

さっさとこの熱を解放しないと、次にどんな顔をして青井に会えばいいのかわからない。置いてあった木箱に腰を下ろし、少しだけためらって、幹に手をかけた。

「ッは、あっ、あ…」

擦り上げるたびにすぐに硬さを増すのが浅ましくて嫌だった。

簡単に理性を超える熱に翻弄されるさまは惨めだ。しかしつぼ浦は解放される手段をこれしか知らない。初歩的な欲望が強いるままに、先端を手のひらで包んでくびれを扱く。

「ん、あッ、も、だめだ」

乱暴で強い刺激に腰が跳ねる。無意識に手が首をなぞる。あの日の快感を求めて指が動く。

ポケットからスマホを取り出し、写真を表示させる。緊張した顔で映る自分は避けて、青井の顔だけをアップにする。その空色の目が浅ましい自分を刺すようで、ゾクッと背中が震えた。

「はッ、あ、ああッアオ、セン…っ！！」

必死に息を吸い、思わず名を呼んだ。体中の熱が幹を駆け上がり、手の中に熱いものが吐き出される。

達したあとの虚無感に苛まされながら、写真の青井をじっと見つめた。微笑む顔はこの行為を咎めるには十分なほど優しげで、劣情を抱く自分とは対照的だった。

「ねぇ、まさか俺呼んだ？」

ジャリッ、と地面を踏む音が聞こえた。

ありえない声に肩が跳ね上がる。息を呑んで顔を上げる。

少し先に、鬼の顔の青井が立っていた。

つかつかと早足で近づき、つぼ浦が手に持つスマホを取り上げる。

「……ふぅん」

そこに表示される自分の顔を見て、青井は面越しにつぼ浦を見た。侮蔑の眼差しであろうことは容易に察せられた。

「ご、ごめん、消す…！消すから！」

つぼ浦は慌てて立ち上がる。手を伸ばすが青井は手を引いてスマホを返そうとしない。

「急にいなくなるし、何やってんのかと思ったら、あのつぼ浦くんがねぇ」

「い、嫌だよな、顔…で、なんて。ごめん、許してくれ、マジで…」

酷い恥辱だった。本人に知られたということが絶望的だった。右手はまだ白濁で汚れていて、欲望に従う姿をバッチリ見られていた。いつもの回る口でもなんの言い訳も出てこない。

「許して欲しい？」

「そ、それは…ハイ」

青井は静かに言った。出された助け舟につぼ浦は必死に手を伸ばす。

「じゃああの服着てみせてよ、こないだみたいに」

「っ……！？」

予想外の条件につぼ浦は目を見開く。

堅苦しい黒に身を包む悪夢と、晒してしまった痴態とでわずかに迷うが、選択の余地はなかった。

「そ…れで許してくれるのか…？」

「まぁ許すっていうか、チャラにするっていうか」

「どっちでもいいぜ、その、本当に…」

「言い訳はもういいからさぁ、早く行きなよ」

青井はスマホをつぼ浦に返すと先に歩き出した。

写真は消されていなかった。小さい画面の中で微笑む青井の顔が、今はとても恐ろしく見えた。

＊

先に床屋に行き髪を整えるつぼ浦を、青井は険しい雰囲気を漂わせて待っていた。

今も試着室の頼りないドアの向こうでは、青井が激怒の気配を隠さず待っている。それがつぼ浦のボタンをかける手を震わせる。

鏡には少年くさい黒髪で黒い服に身を包む自分が映っていた。困り果てた頼りなさそうな顔が恥ずかしい。つぼ浦は深く息を吸うとドアを開けた。

「で、できたぜ。これで…」

思ったより近く、すぐ前に青井がいた。一歩踏み出そうとする身体を押し返し、無理やり入ると後ろ手でドアに鍵をかけた。

「アオセン…っ！？」

「そうこれ、この服だよ」

嬉しそうに言いながら仮面を取る。現れた怜悧な顔は楽しげに笑っている。あれほど見惚れた顔が目の前にあり、状況とは裏腹に胸は高鳴る。

「凶暴なつぼ浦くんもさぁ、ちょっと真っ黒な服になるだけでこんなに大人しくなっちゃうのな」

青井は心底嬉しそうに微笑みながらつぼ浦の胸をトントンと指でさす。浮ついた声で、この服を着ている自分が本当に好きなのだろうな、とつぼ浦は実感する。それと同時に広くもない試着室で密着している事実に気づき、急に居心地が悪くなる。

「見たいならこんな狭いところじゃなくても」

「駄目だよ、これ罰なんだから」

鋭く言うと、青井は身をよじって逃げようとするつぼ浦を壁に強く押さえつけた。

「つぼ浦は俺の顔でどこでもオナっちゃう変態ってことね？」

「う……」

詰問されているというのに、あの端正な口から卑猥な言葉が出たというだけでドキッとしてつぼ浦は口ごもる。

「どうやって抜いてたの？写真だけ？」

「しゃ、写真……だけ」

「それだけでイケちゃうんだ、ふーん」

「あ、あの、」

「じゃあ今見てたらイけるの？」

温度のない表情を浮かべ、青井は顔を近づける。

あのときと同じ、至近距離で見つめられて鼓動が鳴り止まない。糾弾する空色の目が、つぼ浦の内面のドロドロした欲まで見透かすようで逆に火がつけられる。

「……ぁ」

叱られているのにもかかわらず、腹の奥がまた熱くなる。今だけは絶対に追いかけてはいけない感覚がすぐそこをちらついていた。

「本当にイケそうやん、やば」

嘲笑すると青井は顔を離した。

ただ照れるのではなく、目が潤み上気した顔は性欲に溺れていることが明白だっただろう。呆れられた、と胸に痛みを感じていると、青井が再び顔を近づけた。

「俺に欲情しちゃうんだ。俺ってか、俺の顔か」

「…………ハイ」

「どうして？期待しちゃったの？」

「き、期待って」

「こないだの、続き」

言いながら青井はつぼ浦の肩に顔を埋めた。

「え、あっ」

夢にまで見た顔が、首に口を当てる。触れる皮膚の熱さで鳥肌が立つ。何度も思い出し、そのたびに身体の芯まで浮かされた熱だ。

何度か唇がわざと音を立てて吸い付き、それからかぷっ、と噛まれた。噛みちぎられるのではないかと思うほど強く噛まれ、歯型を癒やすように舌が舐める。それから教え込むかのように繰り返し甘噛みされた。

「ッあ、ん、んンッ…！」

思わず鼻に抜ける声が出た。ゆるい快楽がビリビリと脳を揺らす。追いかけても辿り着けなかった快感に呼吸が荒くなる。

「これが欲しかった？」

「ほ、しかった」

「素直だね〜つぼ浦は。本当にかわいいな、かわいそうでかわいい」

黒い前髪をかきあげ、潤むつぶらな瞳を青井はうっとりと見た。内面は変わっていないはずなのに、見た目を変えるだけで南国の狂犬がただの純朴な青年のようだ。

服だけで性格まで捻じ曲げられてしまったような後輩が可愛くて仕方ない。しかも禁欲的な服装なのに中身ははち切れんばかりの性欲を持て余しているのがとても可哀想だった。

「少しからかっただけでさ、まさかあのつぼ浦がこんなことになると思わなかったよ」

背中に回していた右手が形のいい尻へと滑り落ち、ぐいっと腰を引き寄せる。つぼ浦の硬くなった局部が青井の腰に押しつけられ、服越しに刺激される。

「アッ、ふ、うッ……ん、」

ゆるい快楽は甘く、我慢するには強い。何か言おうにもただ言葉にならない声に変わる。

しばらく服越しに夢中でモノを擦り付けあう。躊躇いと本能に揺れながら拙い動きで刺激を求めるつぼ浦を見て青井は笑みをこぼす。

「……ちょっと見ないうちにえっちになっちゃったね、つぼ浦といえば純情の塊だったのに」

「だ、れの、せいだよ」

「こんなになるのは俺のせいじゃなくない？」

「アオセン、が、変なことしたからッ」

「あれだけなのになぁ。……あー、もっと欲しいってこと？」

「もっと、ってなんだよ」

「この先をしてほしかったんじゃないの？」

「さ、先って…？」

もどかしい快感で上気する顔に、ハテナが浮かんでいる。終着点を知らないまま高まる欲望に翻弄されるさまは、手段に乏しい思春期の性欲そのものだった。

「……やっぱり純粋だったわ」

沖に流されてしまい、息も絶え絶えに溺れているように見えたが、つぼ浦がいるのは深みよりずっと手前の浅瀬だった。まだ十分足がつくのにもかかわらず呼吸もたどたどしいその足を、掴んで深淵まで引きずり込んでやりたい欲で青井は天を仰ぐ。

「はぁ〜、まあいいか。つぼ浦が悪いんだからね」

「は…？な、なんでだよ」

「罰としてはちょうどいいか」

青井の手が雑に結ばれたネクタイをどかし、一番上のボタンにかかる。

「肌出さないと死んじゃうんだよね？」

「ア？！な、なにやってんだよ」

「人の顔でさ、勝手に気持ちよくなってたのそっちだろ？」

「っ、それは…そうだけどよ」

ボタンが外れる。それを言われると何も言い返せない。黙ってしまったつぼ浦のことを青井はいたずらっぽく笑って見た。

「教えてあげるよ。もっといいことをさ」

「ぜ、ぜったいよくないことだろ！」

「大丈夫、責任は取るから」

「なんっ、の、責任だよ…？！」

頭の中を無数のハテナが回っているつぼ浦の身体を再度壁に押し付ける。

青井の指が、上から順にボタンをゆっくり外していく。黒いシャツがはだけられ、日焼けした肌があらわになる。

隠さなくてはいけない素肌が明らかにされていく。首元程度ならいつも出しているが、この服で脱がされるのはとてもよくないことのような気がして足がすくむ。

緩んで邪魔なネクタイを避けながら、臍のあたりまでボタンを外す。

「ふ、だから結ぶの下手くそなんだよ」

「う、うるさ…っ」

見上げるとつぼ浦は目をうるませていた。

「いつもの個性がさ、こんな布一枚で抑えられてんの。ほんと…かわいそうだね」

服と肌の間に手を滑り込ませ、征服欲を隠さず青井は笑う。

身体に刻まれた攻撃的なタトゥーの数々も、服で隠されて一つも見当たらない。あるのは個性を奪われ、拠り所をなくしたつぼ浦というただの人間の本質だけだった。

「あッ、ひゃッ？！な、やだっ…ンッ！」

背中に回った指がゆっくり背筋を撫で、思わず鼻にかかった声が出た。丹念に肌を撫で回され、ゾワゾワと痺れが走る。

「これ、咥えてて」

青井は胸元に垂れるネクタイを緩んだ口元に押し付けた。疑問を覚えるがつぼ浦は言われるがままに先端を噛む。

隠すものの無くなった胸に手を当てる。滑らせた手のひらが乳首に触れた。

「ここは？弄ってた？」

「ッ！？」

つぼ浦は頬を赤らめて首をブンブン振る。

「使ってなさそうだね、もったいない」

両方の乳首をくりくりと指先でいたぶる。やわな皮膚がすぐに快感を拾い、くいくい引っ張るだけで固くなる。

「んぅッ、ん、ふッ」

「割とすぐ気持ちよくなれるでしょ？」

青井はネクタイを咥えて声の出せないつぼ浦をニッコリと見上げた。

指先で乳輪をなぞり先端をコリコリ掻くと、くぐもった喘ぎとともに切なそうに青井に身体を預ける。意図せず突き出された胸に口を寄せ、ぴんと立つ突起を口に含む。

「ンッ？！ふ、んんッ、～～ッ！！」

歯と舌で挟んで転がすと、つぼ浦はネクタイを咥えたまま声にならない声を漏らして背をそらす。

「ッ、や、あンッ！！」

もう片方も抓られ衝撃で思わず声が出た。ぱさっ、と青井の頭に唾液で濡れたネクタイが落ちた。

「我慢できないかー」

「も……取るからな」

「お前が頑張って結んだのに」

「邪魔、だからッ」

青井は眉をひそめているが、つぼ浦は無視してネクタイを引き抜き、床に捨てる。息苦しいだけの紐が首から消え、ため息をついた。

「……声でバレても知らないよ？」

そこで初めて青井の意図を察し、つぼ浦の顔が真っ赤になる。

自分たちが抱き合っているのは試着室だ。いつ人が来てもおかしくないことを思い出し、急に身体に力が入る。

「ま、お互い普段と違う格好だし、ワンチャンバレてもバレないかもね」

「そういうことかよ！チクショウ、待ってくれ！」

「やだ」

止める間もなく青井は再び腫れた乳首に口付ける。せめて甘い声が漏れないようにと手で口を押さえた。

「甘噛みより吸うほうが好き？」

「なんっ…で、こんな」

苦しさから涙を浮かべ、乱れた呼吸でつぼ浦は問うた。

「もっと気持ちよくなってよ、せっかくなら」

「ン…っ！」

せっかくなら、の意味を考えるより先に強く胸を吸われ、胸元に赤い痣が残る。

継続的に与えられる甘い快楽から、口を押さえる手さえ緩んできたところでやっと青井は口を離した。

はだけた黒いシャツから見える小麦色の肌に、赤くぷっくりと腫れ上がる乳首が可愛らしい。激しく呼吸して上下する腹を手でさする。その下ではスラックスがぐいぐいと持ち上がっている。

ベルトに手をかけ、下着を降ろすとずいぶん立ち上がったものが空気に晒された。青井は膝をつくとそれをまじまじと見つめる。

「さっき出してたのに、元気だねぇ」

「ご、ごめんなさ…、ッ」

つぼ浦は反射的に謝った。しっかりと筋肉のついたしなやかな腹の下で、悲しいくらい素直に立ち上がったものが青井の顔のすぐ横にあった。その高ぶりに青井がおもむろに口を近づけるのを見て、つぼ浦は焦る。

「へ？や、嫌だ、うそ、だろ…！？」

「罰だって言ったよね？」

「な、なにやってんだよ、あ、アオセ……」

狼狽するつぼ浦を無視し、青井は濡れる先端を口で食んだ。

「ッ〜〜！あ、あお、せんッ、だめ…！」

ねっとりと柔らかな感覚で反射的に腰が反り上がる。

否定しつつもあの顔が、あの口が、自分のどうしようもない欲望を咥えこんでいる。

あれだけ何度も欲望を満たすために勝手に利用した顔が、一人で片付け続けた熱を受け入れている。それだけでドクドクと血が回り、いっそう硬く立ち上がらせる。

「や、あっ、すご…ッ、あ、ッ」

舌と上顎で挟まれ口を動かされ、まるで挿れているような錯覚に腰が本能的にカクカク動く。鼻にかかる声が罪悪感を呼び起こし、しかし高められる熱を裏切ることができない。

「は、はなし、で、でちゃう……からァ！！」

せめてもの羞恥から青井の指通りのいい髪を引っ張る。青井はちゅぷっと口を離すと、つぼ浦を見上げた。

「出していいよ」

「ッあ、………ッ！！」

つぼ浦を快楽に追い立てることだけを楽しむ顔があった。支配しようとする悪魔のような顔だった。その恐ろしい顔を見ただけでビリビリと背筋に快感が走る。

腰を痙攣させたつぼ浦が達する直前で青井はまた咥えこむ。

「あお…っ、ごめ…んッ、あ゛、あぁアッ！！」

喉に包まれる感触に耐えきれず、髪を掴んだまま喉に精を放った。

望んでいない形で欲望を引きずり出され、つぼ浦は放心する。青井は口を離すとゆっくり立ち上がった。

「あ〜、飲むもんじゃなかったわ」

顔をしかめ、苦々しそうに唇に残った精液を唾液ごと拭い去る。

「ご、ごめんアオセン、お、俺…」

謝りつつも罪悪感とは別に、あの怜悧な顔を汚したという背徳感がどこかに残る。初心なつぼ浦にとっては信じられない行為だった。

「ん？いいよ、興味本位だったし」

「は、興味？は？？し、信じらんねぇ」

「ほら、服汚れるし」

やべーやつだ、という目で見られていることに気づき、いまさら取り繕うほどでもないが、青井は適当に言い訳をする。

実際、自分の顔で散々気持ちよくなってきたつぼ浦を、同じ顔で追い込んだらどうなるんだろう、という興味本位だった。

「よかったねぇ俺に舐めてもらえて。してほしかったんでしょ？こういうこと」

「…………」

「え、よくなかった？」

沈黙に疑問を返され、顔に熱が集まるのを感じる。

「……よかった」

いつもの大声はどこへやら、蚊の鳴くような声だった。

青井は喉の奥で小さく笑った。罪悪感と快感で頭がゴチャゴチャになっているつぼ浦が見られただけでも報酬としては十分だった。

「ていうかさ、俺もちょっと限界なんだよね」

青井はおもむろにつぼ浦を下着ごと膝まで脱がす。そのまま後ろを向かせ、鏡に身体を押し付けた。

「へ…？」

「ここじゃ準備もできないし……いきなりは可哀想だから、股だけ借りるね」

自分のベルトを外し、屹立する自身をつぼ浦の足の間に入れる。足をぐいっと閉じさせ、腰を打ち付けた。

「へ？あッ、なんだ、ちょっと…！」

出し入れするたびに局部が下から擦られ、挿れられていないのに挿れられたかのような錯覚で息が上がる。

「もうちょっと足閉められる？」

耳元で言われ、つぼ浦は素直に内股になる。狭まったせいでぱちゅぱちゅと生々しい水音が立つ。前後に動かされ、呼吸するたびに手をついた鏡が白く曇る。

「ふぁ…ッ、あ、あンッ」

「挿れてないのにね、これでも気持ちいいんだ？」

「おかし…ッ、なに、これ、んンッ！」

ただ性欲を発散する道具として使われているのに、だらしなく舌を突き出して喘ぐ顔がぼけた鏡に映る。その肩越しに、夢中で腰を打ち付ける青井のとろけた顔があった。

鏡越しに見られていることに気づき、青井は悪い笑みを浮かべた。

「覚えといてね、こんな顔、で、お前のこと、犯してるんだよ」

「はァッ、あ、んンッ！あおせ、すき…ッ！！」

その暗い欲望に忠実な顔を見た瞬間、脳がビリっと痺れた。同時に足に力が入りぎゅっと閉められ、その締め付けで自分を追い込み青井もまた達した。

放った欲望が、つぼ浦の太ももをべたりと汚して垂れる。

「元気だねぇ」

青井は前を覗き込む。散々達してなお先端からポタポタと薄い液体が垂れるさまを揶揄した。ひどく持て余している性欲を笑われ、返す言葉もなくつぼ浦は黙った。

＊

ここが服屋だったことが幸いだった。汚れた服は謎の力で消えるし、新しい服はすぐに手に入る。

それぞれ別の試着室で着替えながら、つぼ浦は悶々と頭と感情を抱えていた。

「お前、さっき好きって言ったー？」

隣から声がかかり、つぼ浦はびっくりして服を取り落とす。行為の最中に夢中で言ったのかもしれないが、記憶がない。

「か、顔だよ顔、顔が……好き」

「うわ、しょうもな」

心底呆れたような声が返ってきた。

お互いに見た目に夢中になって欲望をやり取りしただけの行為に恋だの愛だのがあるわけがない。どうしようもない理由だけが返ってきたことが、むしろこの行為への救いだった。

試着室から出ても、つぼ浦は青井の顔を直視することができなかった。

「アオセン、でも、本当に…ごめん」

今の行為はともあれ、知らないところで欲望の餌食にしていたことを、素直に謝りたかった。しかし青井は目をぱちくりさせる。

「いいよ、俺もお前の写真で抜いてたから」

「は、はぁ！？」

「逆に抜いてないと思った？あんな思わせぶりなことしておいて」

「嘘だろ…」

「お前は顔が好き、俺は服が好き、引き分けってとこかな」

あっけらかんと、臆面もなく言う姿にあっけにとられる。

罰だ何だの言いながら、お互い様だったのか！と怒りが湧くが、結果として気持ちよかったので何も言い返すことができない。

つぼ浦が拳を上げることすらできずにモヤモヤしているのに気づき、青井はケラケラ笑った。

「またしてほしかったらさ、その服着てきてよ」

それだけ言うと、青井は鬼の面をかぶって出ていった。

あの面を外させるには、この嫌な格好をするしかない。背に腹は代えられない選択肢の前で、つぼ浦は唸ることしかできなかった。

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続　き　ま　せ　ん　！（書くのが大変なので）

性癖終わってる同士のセフレ関係いいですね