大森side
大森「おはようございまーす……」
いつもより早く着いたスタジオはまだ誰も来ていなかった。
いそいそとカバンを置き、近くにあったギターに手を伸ばした時
若井「元貴……」
若井が入ってきた
大森「な、………おはよう」
言いたい言葉をグッと飲みこんで、平静を装い挨拶をする。
若井「元貴、あのさ」
大森「別に……無理して言わなくていい」
若井「え」
大森「昨日の事だろ?若井に彼女が出来てもバンドに支障が出なければ問題、ないから」
若井「いや、ちが、あれは」
大森「腕絡ませて歩いといて……何が違うの?」
若井「彼女とか…そんなんじゃ、なくて……」
歯切れが悪い言い方だが、若井は彼女ではないと言った。
そんな答えに期待を持ってしまいそうになるが女と居たのは事実。
要らぬ期待と感情を捨てて、若井に問う。
大森「彼女………じゃないなら尚更気をつけてくれないと。週刊誌に女を取っかえ引っ変えしてるとか書かれたら流石に困るし」
若井「そんな事っ、してなっ」
大森「してるかどうかは俺にもわかんないし……まあ、やるなら隠れてやってくれって話。俺には関係ないところで」
若井「っ!」
大森「っ、……反論があるなら……言えよ」
俺の言葉に若井が怒っている。
本人は無自覚なんだろうけど、漂う空気が変わった。
若井がGlare(グレア)を放ちかけている。
多分俺に言われた事に反論が出来ないゆえの無意識
(※Glare domが不機嫌な時に出るオーラ、威圧感的なもの。dom同士の喧嘩の時にも放たれる。作中、私はオーラのイメージで書いてます。)
だがそれがヤバい。
流石に少しだとしても、若井程のランクの高いdomのGlareを浴びる訳にはいかない。
大森「……若井……Glare……出そうになってる」
若井「あ、ごめ……」
大森「反論は……無いよね、もうこの話は、終わり、な」
若井「……」
何も返答ない若井。
それよりも俺はこの部屋の空気に耐えられそうにない
若井の横を通り過ぎ、部屋を出ようとした時、若井に手を掴まれた
若井「元貴待って……俺の話……聞いて」
重い空気が薄れたとは言え、俺は掴まれた腕を振りほどく事が出来ず、固まってしまう。
このままはヤバいとわかっていてもsubの俺はdomの若井に勝てない。
若井「あのさ」
藤澤「元貴ー、おはよう〜」
若井が何か言いかけたその時、廊下の向こうから涼ちゃんが来た。
涼ちゃんからは若井が死角になっていて見えない為、俺だけにおはようと言い、少し小走りしながらこちらに向かってそのまま喋り始めた
藤澤「今朝はごめんね〜、そういえばベッドメイキングもせずに帰っちゃって、あ、若井も居たんだ、おは」
若井「は?」
急な威嚇のGlare
俺は腕を掴まれたままだった為、近くでそれをモロに喰らい、そのまましゃがみこんだ
藤澤「元貴っ!!!!」
大森「りょ、……ちゃ……」
藤澤「若井っ!!!!やめて!!!」
若井「っ、」
若井自身、無意識でのGlareだったのだろう。
涼ちゃんに言われ、若井から威嚇のGlareは無くなった。
無くなったとは言え、モロに食らった俺は意識をギリギリ保っている状態だった。
やばい……このままだとサブドロップに入ってしまう……
しゃがんでるのも辛くて後ろに倒れそうになった俺を涼ちゃんが支えてくれた
藤澤「元貴?元貴?!大丈夫?!……若井!どういう事?!元貴が居るのにGlareだなんて!!」
若井「あ、いや……出すつもり……はなかった……」
藤澤「じゃあどういうつもり?!」
若井「いや……」
頭の上でふたりが言い合いをしているのはわかっていても頭がぐわんぐわんして止めに入る事が出来ない。
震える手を何とか伸ばし、目の前の服を掴む。
藤澤「元貴?!大丈夫?!」
大森「あ、あぁ……りょ、」
上手く声が出せなくて、視界もぼやけてグラグラと揺れている。
藤澤「元貴?!しっかりして!若井ヤバい!元貴がサブドロップしかけてる!!」
若井「も、元貴っ、ごめ、」
藤澤「謝るのは後!若井、元貴にコマンド出して!!」
若井「っ!!」
藤澤「何してるの!!早く!!じゃないと元貴が危ないって!!」
視界が揺れて上手くふたりの顔は見えないけど、涼ちゃんが焦ってる事と、若井が俺へのコマンドに一瞬躊躇いがあったのはわかった。
俺はもう一度掴んだ服を引っ張り、涼ちゃんに合図を送る
藤澤「元貴?どうした?…………え」
涼ちゃんが気付いたタイミングで俺は首を横に振った。
涼ちゃんはその意味を汲み取ってくれた。
若井からのコマンドは嫌だと
藤澤「元貴そんな事言ってる場合じゃないって!!」
それでも俺は首を横に振った。
藤澤「元貴いい加減に…………ちょ、若井!!」
涼ちゃんの若井を呼ぶ声と共に、走り去る足音。
若井が走って行った
藤澤「……くそっ………元貴、上手くいくかわかんないけど僕がコマンド出すからね」
若井ほどのランクの高いdomからのGlareでサブドロップしかけているのに、Switchの涼ちゃんがdomになってコマンドをしても回避出来るかは難しい。
それでもやらないよりはマシだと涼ちゃんは判断したのだろう、少しの沈黙が俺たちの間に流れる。
見えないけど多分涼ちゃんがdomに切り替えている。
藤澤「元貴、look!お願いっ!!こっち見て!look!!元貴っ!look!!─────」
毎回挿絵はありませんよ。笑
コメント
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どうしましょう…このお話…好き過ぎます…本当に本当に構成がお上手で…。 若井さんの意図が少しずつ分かってくるのでしょうか…どきどき…。 そして…若森さん中心のはずなのに…挿絵の焦り藤さんが刺さってしまいました🫠毎回でなくとも、そもそものお話が素敵なので✨️
若井さぁん……😿 涼さん!!コマンド、コマンドを早く!!そしてその女の正体は一体なんだったのだろう………挿絵も良いしで感情がジェットコースター状態に…(?)
ほわぁ………っ🫀🔥