ただ無音の空間が訪れる。
ミュートにはしてないため、お互いの作業音のみをマイクが拾う。瑞希は絵名といるときは煩いが、二人の時は静かだ。
『……そういえば聞いたよ。えななんに英語の発音教えてたんでしょ?』
「そんなこともあったね」
『えななんって最初どんな風に単語を読んでたか覚えてる? いくつか単語を教えてたのは覚えてるけど……』
「確か、interpretをインテルプレェトって読んでいたよ」
『ふっ』
「瑞希?」
ミュートにして、暫く静かになる瑞希。私はその間に歌詞の推敲を進める。数分してから戻ってきた瑞希は会話を続ける。
『あーはいはいなるほどね、そう来たか』
「…………」
『大変だったね、小テストは大丈夫だったの?』
「大丈夫だったよ」
そうしてまた静寂の時間が訪れる。
絵名がいないと静かでいい。瑞希も一人なら絵名と言い合えないし、独り言の多い絵名と比べたらマシだ。
『ねえまふゆ。絵名に教えてて何か思ったことある?』
「思ったこと?」
『面白……そう、面白いとか』
そっか、今絵名いないじゃん。そんな独り言が聞こえてきて、それっきり私の答えを待っているようだった。
別に、悪い気はしなかったけど──。
「ああそうだ、明後日大会があるから」
『ん、そっか。了解、頑張ってね』
口をついて出たのはそんな言葉。
問いの答えが然程重要ではなかったのか、瑞希は再度聞いてくることはなかった。