…ねえ、君はまだ、“ぼく”を覚えてる?
雨音が止まない。
窓の外は夜なのに、頭の中はもっと暗い。
SNSの通知も、LINEのチャットも、全部オフにしてからどれくらい経ったんだろう。
ベッドの中、携帯を握りしめたまま、目を閉じていた。
💎「……誰か、気づいてよ……。」
◆◇◆
🐶「いむ、今日リハ来ないって連絡あった?」
🐱「……いや。何も。」
ふいに重くなる空気。
スタジオに残るメンバーたち──初兎、りうら、ないこ、いふ、悠祐──は、互いに顔を見合わせた。
🐇「さすがに、ここまで連絡返さへんの、変やんな?」
🐣「昨日も既読つかなかった…」
🦁「いつも“無理してでも来る”やつやったから……ちょっと怖いな」
🐱「家、見に行った方がいいんじゃねえか?」
🐶「……でも、追い詰めるのも違う。タイミング、慎重に見極めよう」
その日、誰も歌に集中できなかった。
──一方、ほとけは。
電気もつけず、カーテンも閉め切った部屋で、スマホの電源を切った。
誰かに呼ばれるのが、もう怖かった。
誰にも気づかれないのが、嬉しかった。
💎「どうせ、ぼくがいなくても回るし……。」
SNSを開けば、“いれいす”はいつものように笑ってる。
ライブも、配信も、元気な姿も、ファンの愛も──全部、そこにあった。
けど、そこに“ほとけ”はいない。
💎「ねえ……ぼくって、いた意味あるの?」
答えは、どこにもなかった。
◆◇◆
ある晩、初兎は深夜1時にスマホを握りしめ、涙をこらえながら言った。
🐇「僕、いむくんがいいへんと……なんか、全部、嘘みたいになるんや……っ」
画面には既読もつかないチャットが並ぶ。
🐇📱『お前、笑わなくていいから。
喋んなくてもいいから。
せめて、生きてて。』
🐇📱『“お前がここにいた”って、証拠が欲しいんだ。』
それでも、返信は来なかった。
時間だけが過ぎていった。
誰かが配信で言った。「最近、ほとけくん見ないね」
軽い気持ちのコメントが、刃のように胸を裂く。
💎「消えたら忘れられるんだよ」
💎「“いれいす”にとって、ぼくはいらなかったんだ」
ある日、ほとけはふらりと夜の街を歩いた。
びしょ濡れのパーカー、壊れたイヤホン、どこかで見たライブ広告。
自分の顔がないポスターが、胸に突き刺さった。
💎「あー……ほらね、やっぱり、消えて正解だったじゃん」
笑いながら泣いた。
◆◇◆
その頃、ないこはとある会議を無理やり中断してこう言った。
🐶「メンバーが生きてない状態で“活動”なんて言うな」
マネージャーが静まり返る中、続けた。
🐶「アイツは、いれいすの“声”なんだ。
あの声がなかったら、俺らは何者にもなれなかった」
🐶「だから……俺は、帰ってくるって信じてるよ。
壊れても、絶望しても、名前忘れても、
“ムードメーカー”が“ほとけ”として戻ってくるのを、ずっと──」
その想いは、まだ本人には届いていなかった。
◆◇◆
そして、夜。
街の片隅、静まり返った公園のベンチ。
ほとけはうずくまりながら、ポケットのスマホを握った。
画面には、未開封のメッセージ。
🐣📱『ねえ、🐣ね、気づいてたよ。
💎っち、ずっと無理してたの。』
🐣📱『でも、“ほとけ”がいなくなったら、僕、泣いちゃうよ?』
震える指で、返信欄に文字を打とうとする。
だけど──
💎「ごめん。やっぱ……ぼく、もう、戻れないよ」
送信はされなかった。
「さようなら」って、言わなきゃいけないのは、
“みんな”じゃなくて、“ぼく自身”だったんだ。
消えていく名前。
忘れられていく声。
それでも、誰かがまだ──“ほとけ”を呼んでいた。
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