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#すのあべ
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――それから一年が経ち、理人の周辺は、表向きは穏やかな静寂の中に過ぎていった。
蓮はあの日以降、一言の弁明も接触もないまま、逃げるように学校を卒業していった。卒業式の喧騒の中、一度だけ視線がぶつかったが、互いに言葉を交わすことはついに叶わなかった。 あの時、蓮が何を言い残そうとしたのか。いくら反芻しても答えは出ないまま、無慈悲に月日だけが積み重なっていく。
結局、蓮と過ごした濃密な半年間で得たものといえば、開発され尽くした貪欲な身体と、指先にまで染み付いた卑猥なテクニックの数々だけだった。
蓮が去ってしばらく経つ頃、理人は吸い寄せられるように「ハッテン場」と呼ばれる場所へ足を運ぶようになった。もはや玩具の振動だけでは飢えを凌げず、いつしか見知らぬ男の重みに圧し潰され、蹂躙されることを望むようになっていた。
本田との歪な関係は今も継続しているが、あのアブラギッシュな男は口で凌いでやれば満足するため、実害はない。表向きは成績優秀な優等生を完璧に演じながら、裏では見知らぬ体温に溺れる日々。
誰かに抱かれている間だけは、空っぽの心が満たされるような錯覚に浸れた。たとえそれが一過性の熱に過ぎなくとも、肌を重ねている瞬間だけは、誰かに必要とされているのだと信じることができた。 そんな自分に激しい嫌悪を抱いた時期もあったが、今ではその泥沼のような生活も、呼吸をするのと同じくらい当たり前のものになってしまった。
深夜、両親の寝息を確認してから、理人は音を立てずに家を抜け出し、近所のネットカフェへと滑り込んだ。 手慣れた様子で個室に入ると、パソコンを立ち上げ、お気に入りのサイトへアクセスする。そこはゲイ専用の出会い系サイトで、剥き出しの欲望を抱えた男たちが日夜、刹那の繋がりを求めて蠢いている場所だ。
目的をセックスに絞ったシンプルな仕組みは、今の理人にとっては何よりも都合が良かった。シャワーを浴びて戻ると、さっそく数件のメッセージが届いている。 その送信者の中に、「レン」という名の男を見つけ、理人は小さく息を呑んだ。
(まさか、そんなはずは……)
焦る手で詳細を確認したが、相手は写真を登録しておらず、名前と年齢だけが淡々と記されていた。普段ならプロフィールの乏しい相手は警戒して切り捨てる。だが、どうしてもその二文字が、棘のように胸に刺さって離れない。 もし、彼があの時の……。 淡すぎる期待と、それを上回る恐怖を胸に、理人は恐る恐る返信を送った。
数十分後、理人は指定されたホテルの部屋の前に立っていた。 ここに来るまで、心臓は壊れた時計のように早鐘を打ち続けている。別人かもしれない。いや、別人であるべきだ。けれど、もしも……。 迷いと確信が頭の中をぐちゃぐちゃにかき回す。
理人は意を決して部屋番号を確かめると、震える指先でチャイムを押し込んだ。 重苦しい沈黙の後、ゆっくりと開かれた扉の先。 逆光の中に立っていたのは――。
「久しぶりだな。理人」
――蓮だ。
眼鏡こそ外しているが、一年という月日は彼をいっそう大人びた、人を寄せ付けないような鋭い色香を纏わせていた。 呆然と立ち尽くす間もなく、理人は強引に腕を掴まれ、逃げ場のない室内へと引きずり込まれた。
「はっ!? なっ、なんであんたが……っ」
戸惑う暇もなく、理人は床に押し倒された。その上に馬乗りになった蓮の、圧倒的な体温と質量が身体に圧し掛かる。 肩から脇にかけて伝わる熱に、理人の息が止まった。反射的に身を捩り、彼を押し返そうと足掻いたが、両手首を無慈悲に床へと組み伏せられる。
「おまっ、何のつもりだ!?」
「何って、そういうことをしに来たんだろう? だから、たっぷり可愛がってやろうと思って」
蓮は獰猛な笑みを浮かべ、たくし上げたシャツの隙間から熱い手を滑り込ませてきた。
「……相変わらず、綺麗な色してるな。ねぇ……この身体、この一年で何人に抱かせたの?」
「あぁっ! うっせ……お前には、関係ないだろっ」
突然、無防備な胸の先端を強く摘み上げられ、甲高い喘ぎが漏れ出した。慌てて手で口元を覆ったが、既に快楽の導火線には火がついている。 指先で執拗に捏ねくり回され、湿った舌で追い詰めるように舐め上げられると、脳の芯を痺れさせるような感覚が下半身へと突き抜けた。
「ふ、ぁっ……ぁ、んんっ……」
「ねぇ、答えなよ」
責め立てるような低音と、すべてを見透かす射抜くような視線。その圧に当てられ、理人の背筋にゾクゾクとした戦慄にも似た快感が走る。
「あっ、はぁ……ぅ、何人でもいいだろ……いちいち覚えてねぇよっ」
「ふぅん、覚えられないくらい沢山の男に抱かれたってことか。随分と淫乱になったんだな。……ああ、元からだったっけ」
「ん、……っ、うるさい……っ」
耳朶を甘噛みされ、熱い吐息を吹き込まれるたびに、理人の身体は細かく震えた。 蓮の低く心地よい声で罵られると、屈辱的なはずなのに、どうしようもなく芯が熱くなる。
「好きだろう? こうやって、なじられながら犯されるのが」
「ん、や……っ、好きじゃ……っ」
「嘘つき。ほら、さっきから俺の腿に、固いのが当たってるんだけど。……好きだろ? 結局、俺に壊されるのが一番気持ちいいんだろ?」
「っ、ぁあっ!」
両方の先端を同時に強く捻り上げられ、火花が散るような刺激が脳天を貫いた。 痛みが引く間もなく舌で転がされ、吸い上げられる。緩急のついた熟練の愛撫に翻弄され、理人のズボンには既に、溢れ出した蜜が卑猥な染みを作っていた。
「あーあ、もうこんなにして。我慢できないのか?」
「く、うるさ……っ」
ズボンの上から形をなぞるように揉みしだかれ、理人の腰が勝手に浮き上がる。布越しのもどかしさに焦れ、自ら強請るように、蓮の猛った部分へと腰を擦り付けていた。 一年前に身勝手な理由で自分を捨て、置き去りにした男。その手に再び辱められているというのに、身体は歓喜の声を上げ、絶対的な服従を望んでいる。
会ったら絶対に文句の一つでも言ってやる。そう誓っていたはずなのに、いざその体温に触れれば、言葉はすべて熱に溶けて消えてしまう。
「ははっ、そんなに欲しいのか? 僕のこれが」
蓮はグッと腰を持ち上げ、ズボン越しに硬く張り詰めた質量を理人のそこに擦りつけた。挿入を予感させる野蛮な動きに、理人の下肢は痛いほどに疼き出す。 蓮が望む答えなど、分かりきっている。素直に従わなければ、さらに苛烈な「教え」が待っていることも、身体が覚えている。
「……っ、くそ……っ、せめて、ベッドに……っ」
「はいはい。……でも、それは後でな」
返事と同時に、下着ごとズボンが無造作に引き抜かれた。剥き出しになった腿の内側に、蓮の急いた唇が吸い付き、鮮やかな朱色を刻んでいく。
「は……やっぱ、お前の肌、すべすべしてて気持ちいいな」
「ゃっ、ふ、ぁ……っ!」
ちゅっ、と粘りつく音を立てて内股にキスを落とされる。羞恥に耐えかね、股を閉じて隠そうとしたが、強引に左右に割られた。剥き出しにされた際どい部分へと、蓮の熱い舌がゆっくりと降りてゆく。
「はは、すっげぇヒクついてんじゃん……期待して、準備してきたのか?」
「くっ、うるせ……っ。いいから、早く……っ、突っ込めよ!」
羞恥に焼き尽くされそうな理人は、蓮の貌を直視できず、腕で顔を覆って顔を背けた。