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その日は雨がひどくて、傘を持ってなかった俺は濡れながら力なく歩いていた。
(…幼馴染なんだから、応援するべきだよな)
笑顔を作ろうとしても笑えない。
応援したい気持ちと、莉聖の恋が終わってしまえばいいのに、と思ってしまう最低な気持ち。
こんなになるんだったら、告白していればよかった。
せめて、自分の気持ちを伝えられてれば、こんなに後悔するはめにはならなかったのだろうか。
ー☆★☆ー
(好きな人いるか聞いてくるって)
無意識に顔が赤くなっていくのを感じる。
別にあいつのことなんか、と思っても、嫌いなのかといえばそういうことでもない。
でも、恋愛目線で見て好きなのは3年の水原 魁(みずはら かい)先輩だ。
あの先輩は顔はもちろん、優しくて背も高く、運動神経もいい。成績も良くて優等生だ。
ーーー
私は、今日、先輩に告白する。
雨だから、屋上には呼べないけど。空き教室で好きだと伝えるんだ。
ガラ、と扉を開けると先輩が先に待っていて爽やかな笑顔で手を振った。
「やっ、雨だね〜今日」
「そうですね」
「それで、話したいことって?」
きゅ、と口を締めてからガクガクと震える声で言った。
「先輩のことが好きです。私と付き合ってください!」
その一言だけなのに、喉がカラカラになる。
先輩は少しびっくりしてから申し訳無さそうな顔をした。
「俺、好きな人いるんだ。」
「…」
真っ直ぐな目で見られて、言葉に迷っていると無意識に言ってしまった。
「その人って…」
「莉聖、君だよ。」
「えっ」
スタスタと歩み寄ってくる。そして、大きな腕に私は包まれた。
「莉聖から告白させてごめんね。これからよろしくね。」
私の告白は成功した。
先輩、このときはまさかあんなことになるなんて思っても見なかったです。
ー☆★☆ー
告白、成功したよ、とメッセージが来る。
ああ…。
「まじでふざけんな…」
小さく、弱々しい声。ただただ、苦しい。
肺が押しつぶされそうで呼吸がしづらい。
水原とかいうやつ、本当にいい人そうだった。
自分みたいにツンデレでもなさそうで。
「お似合いだよ…」
小学生のとき、気の弱い莉聖の手を握った感覚が蘇る。
小さくて、でも温かくて。
一生守ってやるって思ってたのに。
「ははっ…情けねぇ…」
ボロボロととまらない涙は自分の手の甲を伝ってスマホの画面を濡らす。
莉聖…。
あと一度だけでいいから、あの温かい手を握らしてくれよ…。
短くてごめんなさい