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あの日から2年が経った。
季節は巡って、私はもう高校を卒業しようとしていた。
新しい制服、新しい通学路、新しい日々。
それでも忘れられない人がいた。
健斗くん。
最後に会ったのは、夕焼けの校舎裏。
「また会えたら全部伝える」って、そう言って去っていった彼。
もう会えないって、そう思ってた。
ーなのに。
「……久しぶり」
その声は、春風に紛れるように、優しく私の背中を呼んだ。
振り返ると、そこにいたのは、
少し背が伸びて、少し大人になったー健斗くんだった。
「……えっ」
息が詰まった。
言葉なんて出てこない。
夢じゃないかと、何度も瞬きをする。
「急に帰ってきてごめん。どうしても、今日だけは…顔を見たくて」
彼の手には、懐かしいあの”星のチャーム”が握られていた。
私の手元と、彼の手元。
ふたつの星が、また並んだ。
「覚えてる?あの日の約束」
私は、こくんと小さくうなずいた。
涙がこぼれそうで、でも笑いたくて。
健斗くんは、ゆっくりと口を開いた。
「全部伝えるって、言っただろ?」
ー「俺、ずっとお前のことが好きだった。
離れても、時間が経っても、
他の誰かと話してても、
ずっと、忘れられなかった」
風の音も、周りの雑音も、全部遠くに消えていく。
そこには、私と健斗くんだけの時間が流れていた。
私は、何も言えなかった。
でも、そっと一歩近づいて、彼の手を取った。
「……私も。ずっと待ってた。
たぶん、あの日から、ずっと、好きだったよ」
空を見上げると、夕暮れの中に、
またひとつ、星が瞬いていた。
それはまるで、
止まっていた二人の時間が、再び動き出した合図のように。
ーようやく、あの約束の続きを
言葉にできた気がした。