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──引っ越しを済ませ晴れて婚姻届を出し終え、共に住むようになると、毎日が甘い幸せに満ちていた。
「……おはようございます、貴仁さん」
目を覚まし、傍らの彼へ声をかける。
私自身にも部屋は設えられていたけれど、夜は彼の部屋で過ごしてそのまま一緒に眠ることが多かった。
「おはよう、よく眠れただろうか?」
既に起きていた貴仁さんから、そう問い返される。
「はい、とっても……」と、頷く。
「それは、よかった」
ベッドでそっと身体が抱き寄せられ、チュッと軽く口づけられる。
「……くすぐったい」
「……君も、私にキスをしてくれないか?」
耳元に甘ったるく囁きかけられて、ほっぺたをほんのりと赤く染め、彼へキスをした。
唇を触れ合わせた後に、
「夢を、見ていたんだ」
ふと彼が呟いた。
「夢を?」
「ああ」と、彼が答える。
「君のキスで、目覚める夢だった」
「それで、キスを……」
彼が夢の中の出来事を現に叶えようとしたことがわかると、その愛しさにクスッと小さく笑みがこぼれた。
「……少し子供っぽかっただろうか。見た夢を現実にしようとするなど」
気恥ずかしそうにも言う彼に、「ううん」と首を横に振る。
「そんなあなたが、愛おしくて……」
心の中で思っていたことを、はにかんで口に出す。
「そうか……、私もだ」
顔が密着するくらいにより強く抱き込まれ、彼の吐息が顔にふわりと吹きかかる。
そうして言われた、
「どうやら私は、寝ても覚めても、君が愛おしくて仕方がないみたいだ……」
その一言に、それこそ体温がひと息に上がったのは言うまでもなかった。