休日の午前、 静かな部屋に、時計の針の音だけが小さく響いている。
ソファに座るすちは、みことを後ろから抱きしめていた。
背中に感じる体温が穏やかで、息遣いがくすぐったいほど近い。
「ん……すち、くすぐったい」
みことが小さく笑う。
その笑い声に、胸の奥が温かくなる。
「動かないで。今、幸せ感じてるとこ」
すちはみことの腰を引き寄せ、ぴたりと背中に重ねた。
みことの細い肩越しに頬を寄せると、指先でそっとその頬を撫でる。
指の腹が触れるたびに、みことの肌は柔らかく、あたたかくて、思わず息が止まった。
すちはそのまま、耳の後ろに唇を寄せ、ゆっくりと首筋へ滑らせる。
「すち……っ」
小さな声が漏れる。
くすぐったさと照れの混ざった息。
「大丈夫。痛くしない」
すちは微笑みながら、首筋にもう一度、音を立てて口づけた。
唇が触れるたび、みことの体がぴくりと震える。
「…んっ……すち、今日なんか甘い…」
「いつも甘いでしょ?」
「んー……今日は、もっと」
みことが小さく笑いながら言うと、すちはその頬を両手で包み込んだ。
「みことが可愛い顔するから、抑えられないだけ」
そう囁いて、頬に、唇に、もう一度軽くキスを落とす。
みことは照れながらも、すちの腕の中で小さくもぞもぞと動く。
それを見たすちは、くすっと笑い、さらに強く抱きしめた。
「逃げても無駄」
「逃げてないもん……」
「じゃあ、ずっとこうしてて」
みことは少し考えるように目を閉じ、小さく呟く。
「……いいよ」
その返事を聞いた瞬間、すちは心の底から満たされた気持ちになり、 もう一度だけ、首筋に優しく唇を落とした。
みことが、すちの腕の中でもぞりと動く。
少し頬を染めながら、上目遣いで小さく呟く。
「……すち、前から、ぎゅってしてほしい」
その声はかすかに震えていて、
甘えるような響きが、すちの胸を直撃した。 一瞬だけ息を飲み、すぐに微笑む。
「いいよ。おいで」
そう言って、みことの体を軽く持ち上げるようにして向かい合い、 自分の膝の上に座らせる。
近すぎる距離に、みことの頬がさらに赤くなる。
「こう?」
すちが腕を広げると、みことは嬉しそうに笑って、 その胸にすっぽりと収まった。
「……あったかい」
「そうだね」
すちはゆっくりと背中に腕を回し、
みことの体を包み込むように抱きしめた。
その瞬間、みことの手がすちの胸元をぎゅっと掴む。
「すちの心臓、近い……」
「ドキドキしてるの、ばれた?」
「うん、すちの音、好き……」
その言葉に、すちは笑みをこぼす。
みことの素直さが可愛くて、愛おしくて、
胸の奥からこみ上げてくるものが抑えられなかった。
「……もう、可愛すぎる」
囁くように言いながら、 すちはみことの背中をさらに引き寄せる。
抱きしめる腕に自然と力がこもり、 みことの細い体が少し沈み込むように密着した。
「すち、ちょっと強い……」
「ごめん。でも……離したくない」
みことは小さく笑って、すちの胸に顔を埋めた。
すちはその髪に唇を落とし、耳元で囁く。
「こうしてると、嫌なことがあってもすぐに忘れられるな」
「おれも……すちの腕の中、好き」
みことの笑顔が近くで揺れて、 そのあまりの可愛さに、すちはもう一度強く抱きしめた。
まるでそのまま、時が止まってしまえばいいと願うように。
みことは、すちの胸に顔を埋めたまま、
ふとゆっくりと顔を上げた。
すちと目が合う。
柔らかい光を帯びたみことの瞳は、 まるで春の日差しみたいに穏やかで、やさしい。
少し照れたように、でもまっすぐに見つめる。
「……すち、大好きだよ」
その言葉は、ほんの一瞬の沈黙を溶かすように響いた。
すちは目を細め、みことの頬をそっと撫でる。
「……俺も、愛してるよ、みこと」
低く、包み込むような声。
そのまま、すちはみことの頬に手を添え、 指先で輪郭をなぞるようにしてから、 静かに唇を重ねた。
触れるだけの優しいキス。
けれど、そこにこもる想いは深く、温かく、 みことの胸の奥までじんわりと染み込んでいく。
唇が離れると、みことは少しぼうっとしたように すちを見つめたまま微笑む。
「……すちの“愛してる”って、あったかい」
「そう感じるのは、みことが俺の全てだからだよ」
そう言って、すちは再びみことを腕の中に閉じ込めた。
その抱擁は、言葉以上にやさしくて、 お互いの鼓動が重なっていく。
みことは、すちの胸に頬を寄せたまま、
小さく唇を動かした。
「……ねぇ、もう一回……キスしてほしい」
その囁きは、掠れるようにやわらかく、
けれど確かに甘える響きを帯びていた。
すちは 目の前のみことの表情を見つめる。
潤んだ瞳と、ほんのり染まった頬。
そのすべてが、胸をきゅうっと締めつけるほど愛おしい。
すちはみことの顎を軽く持ち上げ、 もう一度、唇を重ねた。
最初は触れるだけ。
でも、すぐに二度目、三度目――
浅いキスを、何度も何度も繰り返す。
そのたびに、みことの小さな息が重なり、
すちの胸の奥で、理性がじわじわと溶けていく。
(……やばい、理性保てない。がんばれ俺。落ち着け、落ち着け……)
みことの唇がやわらかくて、
触れるたびに気持ちが揺れる。
(……ひまちゃんはもう、いるまちゃんに手出したって言ってたよな……。 ……いやいや、比べるな俺。落ち着け……)
内心で自分をなだめながらも、 どうしてもキスを止められなかった。
角度を変えて、唇をついばむように。
頬に、唇の端に、また唇に。
何度も重ねるうちに、 みことの唇はほんのり赤く色づき、 息が甘く震えていた。
やがて、そっと唇を離し、 すちは額を合わせながら微笑む。
「……ねぇ、みこと」
「ん……?」
「みことの18歳の誕生日に――」
すちは一瞬だけ言葉を切り、 みことの瞳をまっすぐに見つめた。
「抱かせて?」
それは優しい声だった。
けれどその奥には、 何よりも深い愛情と決意が宿っていた。
みことは目を丸くしたあと、 ゆっくりと微笑みながら頬を染める。
「……約束、」
そしてまた、二人の唇が重なった。
コメント
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これって完結してますか??って言うか、もうやばいんですけどぉ!!最高です!
うおッ、おう、ぉぅ、おぅ…癒しやわ…本ッッッッ当にすちみこ見てると癒されますわぁ、和むってゆうのかな?もう、はいてぇてぇ