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花蓮麻琴と名乗った少女は俺をじっと見つめてくる。


彼女の透き通った瞳を見つめると顔が赤くなるのを自分でも感じ、思わず目を逸らしてしまう。


「名前……教えてもらえませんか?」


悲しそうに眉を下げ、ほんのり哀愁を感じさせる表情に慌てて名を名乗る。


「ご、ごめん! そういうつもりではなかったんだ。名前は向井悠真むかいゆうまだ」


名を名乗ると花蓮麻琴はパアッと嬉しそうな笑顔を俺に向けてくる。その表情といい、仕草といい、一挙一動いっきょいちどうにドキドキさせられる。


「えっと、花蓮……麻琴さんは何をしにここへ……」


「麻琴のことは麻琴と呼んでください。おじ様は……そうですね、悠真おじ様はどうです?」


「い、いや、その、おじ様呼びはやめてくれると助かるんだけど。恥ずかしすぎるから適当に向井とかでいいんだが……」


俺が言葉を言い切る前に麻琴は首を振って言葉を遮る。


「麻琴は名前で呼び合う方が好きなんです。おじ様がダメならじゃあ……悠真さんはどうですか?」


名前を呼ばれることなんか久しくなかった俺の心臓が大きく跳ねる。


何回跳ねるんだと、自分でも突っ込みながら麻琴を見ると俺の答えを待っているのだろう、じっと見つめている。


「分かった、分かった、呼ぶから。だから麻琴は何でここに来たのか教えて欲しいんだけど」


「分かりました」


視線に顔が熱くなることに耐え兼ねて、目を逸らしながら答えた俺を見て満足そうに麻琴は頷く。


「それでは、質問の答えですけど、悠真さんは誰かと待ち合わせをしてましたよね?」


突然の麻琴の問いに俺は驚きながらも頷く。


「誰か……そうですね、その女の子は多分来ないと思います」


待ち合わせをしていることを知っていることや、春日井沙耶が来ないことに対し「なぜ?」と聞き返すより先に麻琴が答える。


「さっき木の影から悠真さんを見ていた女の子とすれ違いました。何を見ていたのか気になって視線の先を辿ったら、ベンチに座って誰かを待っている様子の悠真さんを見かけたんです」


そこで言葉を切った麻琴の言わんとすることはつまり、春日井沙耶は待ち合わせ場所に来たが実物の俺を見て何らかの不満や心配があって帰ってしまった。

それも知らずにウキウキして待っていた俺を麻琴は見て、不憫に思って話し掛けたということだろう。


「自己紹介も終わったことですし、行きましょう」


「へ?」


麻琴が間抜けな声を出す俺の手を取り立ち上がる。


「夏きざす、ですよ。熱い夏の日の一日が終わって、静けさと清涼がやって来る夏らしい空気を感じれる今だからこそ、一緒にどこかに行きませんか?」


春日井沙耶に見放されたことに対し下を向く暇もくれない麻琴が発した言葉は、俺の求めていたもので、気付けばその言葉と手に引っ張られ立ち上がっていた。

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