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スーパーの買い物帰り。
ビニール袋を提げて歩いていると、公園の桜がちょうど満開だった。
風が吹くたび、枝いっぱいの花が揺れて、淡い花びらが空にほどけていく。
「……少し、見ていきませんか」
思わず足を止めて言うと、月也は面倒そうに空を見上げた。
「綺麗ですね」
「……そうだな」
そう言いながらも、月也の視線はどこか遠かった。
頭上から降る花びらを、ただぼんやりと目で追っている。
風がひときわ強く吹いた。
花びらがふわりと舞い上がり、その中心に月也が立っている。
薄い光の中で、白い花びらが肩や髪に触れては落ちていった。
その横顔は、穏やかで――
けれど、どこか寂しそうだった。
「……先輩?」
呼んでも、月也はすぐには返事をしない。
桜を見上げるまま、まるで別の場所を見ているようだった。
このまま、花びらに紛れて消えてしまいそうな気がした。
そんなはずないのに。
気づけば、足が勝手に動いていた。
陽介は月也のそばまで歩み寄り、その腕を掴む。
「えっ。何?」
月也が驚いたように振り向く。
「……いえ。先輩が桜にさらわれそうだったので」
「意味わかんねぇ。俺は妖精か何かか?」
呆れたように笑って、月也は肩についた花びらを払った。
しばらくして、興味をなくしたように言う。
「……もういいだろ。帰るか」
「はい」
歩き出した背中を、陽介は一歩遅れて追う。
「……連れていかせませんから」
ぼそりと呟く。
「なんか言った?」
「いいえ。なんでもありません」
月也は特に気にした様子もなく、歩き続ける。
桜の花びらは、変わらず舞い続けていた。
けれど――
月也は、ちゃんと隣を歩いている。