「…ッは…」
オレは顔についた血を袖で乱暴に拭う。
鼻につんとくる血液の独特な匂いがオレの周りに充満する。
「うわぁ…司くん派手にやったね…」
「ん、類。今日はドローンじゃないのか」
「たまには身体を動かさなきゃ」
類、、ここのサイバー空間で出会った同年代の少年。
とてつもなく整った顔立ちをしている。
そしていつもはドローンで偵察に来るのに今日は珍しく自分の身体できた。
「それにしても…ここに長くいるとあれだろう?早く外に出よう。後処理は寧々達に任せる」
「あぁ…っけほ、っいつも悪いな寧々達に」
「寧々達も望んでやってるんだから心配無いさ」
オレは、もともとこの世界にいた訳じゃない。
気づいたら、ここにいた。
以前はここと正反対の世界に住んでいた。
そこでは持病を持っていたため、この世界でも引き続き持病のもつ身体の人間として暮らしている。
…なんでここに来たのかは、分かっていない。
けれど、いつか絶対に、抜け出す。
外に出ると綺麗…と言えるのか分からないが、その空気をたくさん肺に取り込む。
普段はマスクをしているけれど、この時だけ少し口元から浮かす。
「…寧々のもとへ行くかい?」
「あぁ。…あ。この血…どうしようか 」
「あー…また怒られるねぇ」
「笑い事じゃない!」
本当に笑い事じゃない。
と、頭を捻っていたところで。
「…?…類、あれは…」
「…え?」
サイバー空間1デカいモニターが何やらノイズを走らせていた
「…ハッキングか何かされたかな」
「え、だとしたらオレたちも危な、っ」
バリンッッッッ!!!!!!!
モニターガラスが割れ、幾つもの破片が飛び散った。
割れたモニターからは、異常なほどの電流が流れ出ていた
「司くん、早くここから立ち去らないと、!」
サイバー空間の電流は危険だ。命にも関わる。
だから早く逃げなければ。
…そう思っても、足が動かない。
「…司くん?司くん!!」
「…っ、足と腕を痛めただけだ、後ですぐ行くから類は先に行け」
「何を言ってるんだ君は!!!置いてくことなんか出来ないだろう!!」
久しぶりに類の怒声を聞いた。でもそんなことに構ってられないほど足はズクズク腫れていく。
腕も、ちぎれんばかりに引き裂くような痛みが襲う。
電流が絡まったのか、ただ挫いたのかは分からない。
意識が朦朧とする。
振り向いた先に、とんでもないようなものが見えた。
そこで、フッと意識が途切れた。
「…つかさくんたち遅いね?ここで集合だったはずなんだけど…」
「確かに、何かあったのかも。リン、ちょっと見てきてくれない?」
「はーい!!……って、わっっ!!!?」
「…え!?どうしたの!?」
「リンが…弾き飛ばされた?」
「…司くんのウォッチに入れない」
「類は?」
「類くんのも…入れようと思えば入れそうだけど…酷いほど、荒れてる」
「え、…なん、…」
バキ、ッバキバギッ、
「…うぇえ!?」
えむが困惑した声を出す。
嫌な音が、私たちの足元から聞こえる。
下を見ると、地面に幾つもの亀裂が入っていた。
「…っえむ!!!逃げるよ!!」
亀裂は空間の崩壊の合図。今までにも何度かあったが、修復に時間はかからないため、今回も大丈夫だろう、そう思っていた。
だが、今回の崩壊は私の思っている以上の、ケタ外れの崩壊だった。
「…ッ、ぇ、…なに、あれ…」
「…ねね、ちゃ、ん…」
えむはこんなこと初めてでもちろん怖いだろう。だけど、今回ばかりは私も見たことがなくて恐ろしい。
目の前から、どす黒い電流の塊がなだれ込んできた。
空間の建物はどんどん飲み込まれていき、地面もバキバキ割れていく。
(っ、やばいやばいやばい!!)
「寧々ちゃんえむちゃん早くッッッ!!!!」
リンが無理やり引っ張ってくれる。
私たちは無我夢中で走り出した。
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝
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