ジンが桜に覆いかぶさるように彼女を挟んで両手で柵を掴んでいる、なのですっぽり桜は彼の腕の中に包まれている感覚を味わった
背中から彼の胸の温かさが伝わる・・・まるで守られている気分・・・素敵な香り・・・
それから広い肩も・・・シャツの袖を張り詰めさせている上腕二頭筋・・・彼はイライラしながら頭上の橋の上にいる浜崎を伺っている
眉毛の根元に皺が寄っている、私はいつまでもこうしていたいけど・・・彼はこの状況は嫌かもしれないわ
―何か夫婦らしいことをしたら浜崎さんは諦めていなくなるかしら?―
そう思った桜は・・・思い切ってえいっとつま先立ちになってジンの肩に手を回した、そして右頬に・・・あのえくぼが隠れている場所に『チュッ』とキスをした
ジンがハッと身を硬くした、そしてじっと目を剥いて桜を見つめた
「え?・・・いや、驚いた・・・」
ジンが硬直したように固まっている、それを見た途端、桜は自分のした事が急に失敗したことを悟った
―ジンさん!困ってるわ!恥ずかしい!―
「あっ・・・あのっごめんなさいっ!何か夫婦らしい事をしたらどうかって・・・ああっ!私ってバカ!」
桜が手をブンブンって焦っている
「本当に!今のはなしっ!急に思いついたものですから、忘れてください、アハハっ!・・・行きましょうか!帰りましょう!」
「待って!」
すかさず桜がジンの腕の中をすり抜けて逃げ出そうとしているのを、また二の腕を掴まれ、くるっと一回転し、あっという間に再び腕の中に戻されてしまった
「アドリブは大歓迎だ・・・」
ガシッと腰に腕を回され、上体を傾けて上を向かされたと思ったら、ジンの顔が視界いっぱいに広がった、そして息をつく暇もなく、零コンマ何秒でジンの唇が桜の唇に重なった
ネオンの光がキスをする二人のシルエットを浮かび上がらせ・・・・
道頓堀川の水面に映るその姿は、誰が見ても両想いのカップルそのものだった
やがて二人を監視していた浜崎は首を振っていなくなった
夜空には大きな満月が浮かんでいた
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