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重田💋(omoda)
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ねこ飼いたい
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#怪異
×××
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朝起きるたび体に赤痣に似た傷が増えていた。
寝相が悪いせいだろうか。
ベッドの柵に手足をぶつけたり、転げ落ちたりは私にとっては日常茶飯事だ。
それを疎まれてか、妻とはずいぶん前から寝室を別にしている。
夫婦の夜の営みはすっかり途絶えていたし、する気も失せていた。
私の相手は他にいたし、お互いそれで困るといったこともなくなっていた。
ある日のこと、手足だけでなく腹や背中の方にまで**“ミミズバレ”**のようなものが出来ており、医者に行っても原因不明と言われ、さすがに怖くなった。
その日は仕事帰りに暗視カメラを買って帰り、自室にセットした。パソコンのモニターに暗視カメラ特有の緑がかった映像が映し出される。自室のベッド全体が入る角度に調整し、愛用のアイマスクをつけて私は眠りについた。
次の朝、胸のあたりに大きな**“ミミズバレ”**が出来ていた。無論、熟睡していた自分にはなんの心当たりもない。
まさか、夢遊病?
知らない間に自分は何かとんでもないことをしでかしているのではないか?
私は慌ててパソコンを起動させた。
マウスをクリックし、昨日録画した動画を再生する。しばらくは寝返りをうつ自分の姿しか映っていないようだった。じれったさに耐えかね、早送りで時間をスキップさせていく。と――
ぎょっとした。突然、黒い人影がベッドを横切り自分の枕元に現れていた。慌てて巻き戻し、再生する。
すらりとした後ろ姿。
腰まで伸びた長い黒髪。
見覚えのあるナイトウェア――妻だ。
カメラの角度のせいで立ち姿になった頭部は見切れているが、長年連れ添った相手を見間違うはずがない。こんな真夜中に私の寝室でいったい何をしている?
画面を注意深く見つめる。
手には何も持っていないようだし、特におかしな動きもしていない。ただじっと枕元に立ち、身じろぎもせずに私を見下ろしている。
それだけだ。
ただそれだけなのに背筋をぞくぞくと這い上ってくる悪寒を止めることができなかった。
これは……なんだ?
私はマウスを荒々しく扱い、午前三時まで時間をシフトさせた。
だがこれといった変化はない。妻はおよそ二時間ほどそうしてじっと立って私を見下ろしていたことになる。
……いったい、なんの真似だ?
無性に腹が立ち、すぐさま妻の部屋へ怒鳴り込みに向かおうとした――だがその足が止まる。
映像に動きがあったのだ。
目の端で妻が一瞬前かがみになったのが見えた。
慌てて一時停止を押し、巻き戻す。スロー再生で確認。
……か、髪? 私の髪を抜いている!?
何度か繰り返し、確認した。
間違いない。
恐らく一、二本足らずだろうが、妻は私の髪を抜いている。
……どういうことだ?
なぜ? なんの為に?
頭の中には疑問符しか湧いてこない。
まるで突然黒い霧に放り込まれたような気分。
もう考えることすら億劫になりそうだ。
私は頭を一度だけ左右に激しく振り、とにかく最後まで見届けようと、動画の再生ボタンを押した。
――と、前かがみになって髪の毛を抜いていた妻がむくりと上半身を起こし、そのまますーっと立ち去っていった。
私は長い溜息をひとつついた。
この痣や**ミミズバレ**は妻のせいではない……?
正直、妻が枕元に立った時、私の心臓は早鐘を打った。妻が寝ている私を殴りつけたのでは? と、心のどこかで疑っていたからだ。
だが事実は違った。
何のためかは知らないが、妻はただ、私の髪の毛を抜いていただけだ……。
理由はあとで問いただすとして、少なくとも妻は、私の体を傷つけたりはしていない。
そう思い、一旦胸をなで下ろす。
だが次の瞬間、私はパソコンの画面にくぎ付けになった。
――午前四時。
いつのまに戻ってきたのか画面いっぱいに妻の見開かれた目が映し出されていた。
血走り、怒りに燃えた目が暗闇の中で爛々と輝いている。
口元はよく見えない。
だが、何かを早口で囁いているらしい。
じっとりと汗ばんだ手でマウスを動かし、パソコンの音量を上げた。
かすかに聞こえていた妻の囁き声が徐々にはっきりとしてくる。
【了】
コメント
3件
うわ、これ、最後の「シネシネシネ」の連続、耳に残りすぎて怖い……。最初は痣の原因が気になるミステリータッチだったのに、暗視カメラで妻がただ髪を抜いてただけって分かった時点で一旦ホッとするじゃないですか。そこで油断したところに、あの午前4時の顔面アップと囁き。構成が巧いし、日常の裏に潜む狂気って感じでぞっとしました。おやすみ前には読まない方がいいかも……(笑)。