テラーノベル
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第4話です。今回は何時もより長めですので気長に読んでくだされば幸いです🙇♀️
何か可笑しい所があればすみません。
第4話【触れて欲しい人】
辺り一面に悲鳴が上がり始める。
「うああああ!!!?」
悲鳴が響き渡る場で噴水のように次々と血が飛び上がり人の肉片が舞う。
「これは、、、どうなっている!?何故お前らは切りあっているんだ!?やめろ!」
異様な光景に異変を感じた若君は門弟を傷付けないように剣だけを器用に蹴り落とす。だが剣を落としたとしても拳で殴り合い始める。何より奇妙なのが相手はそんな意思は全くなく、体だけが勝手に動いているようであり、門弟は顔から涙を流しながら悲痛な声をあげる。
「すまないっ!!すまない!!何故だ、何故身体が勝手に!?ぐあああああ!!!」
「わか、若君!!!誰か!!俺を、俺を止めてくれっ!!!」
「ぐぁぁぁっ!!!」
場は混乱に陥っており、冷静な判断を下せるものは誰も居ない。勿論、若君も同じ事である。 その中で唯一 状況を冷静に見れる烨霖はふとある事が頭をよぎり、自分でも分からないが考えるよりも先に声をあげた。
「血だ!!」
「さっきの狼の血が門弟の体内に入り、操っているんだ!!」
その声を聞いた若君は勢いよく剣を振り、繰り出した剣風で周りの狼を遠くまで一掃し、凄まじい剣幕でこちらに近付き胸ぐらを掴む。
「お前、何か分かるのか!?知っていることを全て吐け!!」
若君の声は怒りで酷く震えていた。
「門弟を助けたいなら、まずは私を離してくれないか?」
「お前に何が出来るっていうんだ!?」
「この手を離してくれと言ったんだ。私が出来るかできないか、それは見てから決めてくれないか?」
このまま門弟達が殴り合いを続ければ間違いなく死んでしまう上に門弟達の限界も近い、すぐに対処しなければ間に合わなくなる。
若君は迷っていたようだが烨霖以外に頼れる人が居ないと悟り、悔しそうに胸ぐらからゆっくりと手を離し、もて余った怒りをぶつけるように烨霖を門弟の方まで軽く押し飛ばす。
身体が解放された烨霖は札に陣を描き光線弾の代わりとして打ち上げる。すると門弟達の注目は即座に烨霖に集まり、集まってきた門弟達を全員縄で一括に拘束して1箇所に集める。
門弟達に入った血はこの山の元凶の血でもある。その為、生まれ変わった時にも使った他人の私物を持ち主の元へ返すという術を使用すればいい。
今回は量が多すぎる為、陣を書く必要がある。即座に烨霖は血で陣を書き、札を陣の上に貼る。すると陣は札を貼った場所から水が川を流れていくように徐々に青白く光り始める。
「お前、、、いつからここまでの技術を、、、」
陣が発動すると徐々に門弟たちの身体中の穴や傷から狼の血が流れ出し、元の場所へと戻ってゆく。
「、、お前、本当に、、、お前は、、、」
最後まで言い終えるまでに若君は丹魂信の効果が切れたのか大きな音を立てて地面に突っ伏する。
「(効果が切れたのか、、、後に護符によってこの門弟達と共に転送されるだろう)」
処置が終わった烨霖は持ち主の元へと帰っていく血の道筋を見つめ、そこを辿って歩き出す。
今までも他の門弟が山に登っても解決出来なかったのはこの狼のせいで殺し合いが発生したせいなのだろう。あの血が飛び交う場で冷静に状況を見れる者はそう居ない。それに加え魔教も関わっているのならば尚更関わりたくはないだろう。
血を辿るにつれ、瘴気は強くなり、狼の軍も多くなっていったが烨霖にとっては護衛にすらならない、前世で培った無駄のない動きで狼を殺さずに縛って歩いて行く。
血の道を辿り、山の頂上まで登るとそこには龍でも住んでいそうな程に大きな洞窟が開いていた。
瘴気は今までのよりも何倍も濃く、身体の周りに纏わす気を更に強くする。
「これは、、私も数日寝込んでしまいそうだ、、、」
覚悟を決めて洞窟の中へ入った途端、目の端に光の筋を捉え、後ろへ跳躍する。洞窟の壁に刺さったそれは短剣だった。そして次の瞬間、鋭い音が周りから聞こえ、見て見れば四方八方から剣が降りかかっていた。烨霖は自分の周りに即座に結界を創り、剣を防ぐ。だがあまりの量の多さに数太刀ほど刺さってしまい、血の匂いが充満する。
「何者だ、、、」
突如洞窟の奥から聞こえてきた酷く掠れた声に振り向く。その声は長く痛みに発狂し続けた者の掠れ声であり、声のトーンから少年ぐらいの歳だということが分かる。
嫌な予感に身を狩られた烨霖はその声の方へと駆け寄る。駆け寄る程に酷くなる拒絶の声と剣、全てを烨霖は無情にもなぎ払う。
「来るな、、、」
「来るな!!!!」
暗いこの洞窟ではこの悲痛な叫び声が辛い程に響き渡る。
これ程の瘴気を出していた元凶は奥の少年で間違いないだろう。だがこの精神の乱れ状や制御不能な瘴気の量からして恐らく体内を巡る気が狂った事で起こる暴走状態、走化入魔に陥っている可能性があった。放置していれば命に関わる問題だ。
烨霖は赤子を慰めるかのような声色で話しかける。
「大丈夫だ、私は敵ではない!」
「君は、、、もしや走化入魔に陥っているのではないのか?」
「黙れ」
「私は、君を助けたいんだ 」
段々と声の主に近付いていくと、血の海が広がっているのが見える。争っていた形跡がないことからこれは全てこの少年の血なのだと推測できた。血の音は己にとって酷く耳障りだったが、今はとにかく目の前のこの幼子のような者を救いたかった。
ようやく声の元凶の元の近くへ来れた時には、いくら防いだとはいえ、全ては防ぎきれずに烨霖の身体はボロボロになっていた。だが元凶の少年の状態はもっと酷く、血が全身から吹き出しており、顔は謎の黒いモヤがかかっていてよく見る事が出来なかった。
烨霖が触れようとした瞬間、手を切り落としたかったのか、剣が手の真上に降りかかる。
「触るな!!!貴様如きが、、、俺に触るな、、、!!!」
「あの方以外、俺に触れるな、、、!!!やめろ!!」
その声は確固たる意思を抱いており、烨霖への殺気に満ちていた。
「、、、触れられたい相手が居ることは分かる。その者にしか触れられたくないのも、分かる。」
「だが、、、今は、、、君に触れさせてくれないか、、、?」
「君がこのまま走化入魔に堕ちいれば、きっとあの方は悲しむだろう。」
「お前があの方の何を知って__!!」
逆上すればする程少年の身体からは酷く大量の血が溢れ出し、顔中の穴という穴から血を吹き出しながら地面に倒れる。
これ以上待ってられなかった烨霖はなりふり構わず即座に少年に触れ、霊気を送り込む。
「や、、、めろ、、」
「残念だったな、このまま私に生かされろ」
「あとから恨んでも構わない、君の意志を無視したのだからな」
「くそ、、、」
霊気を送られ、少し落ち着いてきたのか、それとも脳を焼かれているような痛みのせいか、少年はそのまま気絶してしまった。
充分な霊気を送り終えた後、烨霖は少年の容態を調べ、この者はどうやら邪気を溜め込みやすい体質のようであり、それが時間がたち瘴気となり暴走し、身体の外へと出てしまうのだろう。だが溜め込みすぎずに定期的に発散をすれば外に影響は出ない筈だ。
烨霖はまた似たような事が起きぬようにする為の制御装置のような物を精錬し始める。手と手の間に密度を霊気を極限まで上げた霊力を集め、頭の中でしっかりとした構造を思い浮かべる。ただぼんやりと思い浮かべるのではなく、その精巧な柄やどういう効果をもたらすのか、細かく想像しなければいけない。手の間の霊力はどんどん黄金のような金色に光だし徐々に作られていく。出来たそれは銀色の腕輪であり、精巧な模様が施され、中心には苺のように甘い色をした赤い碧玉が嵌め込まれていた。
「これで走化入魔の心配は減るだろう! 」
「何をしている」
突然真後ろから聞こえてきた声に驚き思わず身体が跳ねる。勢いよく振り返ってみれば眠っていたはずの少年がすぐ隣まで近付いていた。
「(一切の気配も感じなかった、、、相当な手練れだな、、)」
「えーっと、、これは、君の瘴気を抑さえる道具だ」
「それは誰かに教わったか?」
どうやってしたのか、という質問は想定していたがまさか誰かに教わったのかを聞いていくるとは思わなかった。そもそも、無からこのような精巧なものを精錬する技術は恐らく私以外に居ないだろうから誰かから教わったという疑問すら出てこないはずだ。
どう答えようか考えあねぐいていると目の前の者はゆっくり立ち上がり遠くへと戻っていく。
「言いたくないのなら、言う必要は無い。」
「、、、感謝する。」
まさか魔教の者がここまで人に寄り添うことが出来るとは思っておらず、普通の人に寄り添ってもらうよりも自然と嬉しさが上がってしまう。
「あ、そうだ、これを早速付けてみてくれないか?」
そう言い、少年の元へと駆け寄ろうとするがまた剣を向けられるかもしれないという警戒心から、足が一瞬止まってしまう。
その状況を察した少年はフラフラと横に揺れながらこちらへと近付き、烨霖を床に座らせ、膝の上に自らの頭を乗せる。
突然の少年の行動に烨霖は呆気に取られ、完全に固まってしまう。そんな烨霖を無視するように腕を差し出す。
「先程のは腕輪だろう?ああやって作るのはとても気力が居る。是非つけてくれ」
「え?あ、、、あぁ、、、」
先程まで凄まじい程の殺気をこちらに向けていたのと全く違う態度に理解が追いつかず、思わず適当に返事をし、怪我に影響が出ないように丁寧に腕輪をはめる。
「中々似合うな!!君は服が黒いから、瑠妃がよく映える。」
「、、、」
少年は何も言わず、無言で腕輪を見つめる。
先程まで少年の態度の変わりように混乱していた脳が大分楽になった烨霖はまるで周りの者までも笑顔にしてしまう程の眩しい笑顔を作り、少年に意気揚々と話しかける。
「そういえば、君の顔はどうして見えないんだ?なぜこんな黒いモヤが掛かっている?」
「、、、顔を見られたくないから、付けている」
声はまだ枯れているものの先程よりかは明らかに少年の声色が良くなり、酷く安心する。
「何故見られたくないんだ?何か理由が?」
「あぁ、ある、だが教えることは出来ない」
「そうか、じゃあ私もこれ以上無理強いはしない。君もさっきそうしてくれた。」
「、、感謝する」
まるで先程の烨霖の言葉の真似っ子のような返しに烨霖からは思わず笑みが零れ落ちる。
「ふふっ、、君は、、案外子供っぽいんだな」
「子供が子供っぽいのは普通な事だ」
「いや、、、先程のあの警戒していると姿は随分と達観しているように見えたから。」
「達観しているのと子供っぽいの、そなたはどっちが好きだ?」
あまりにも意味が分からない質問に少しだけ困惑する。
「んー、その人を好きになればどちらだとしても私は好きだな、どちらにも良さがある。」
「、、、好きになれば、その者がどんなものでもいいのか?」
「、、、先程から好きだとかそういう質問をしてくるが、恋慕う者でも居るのか?」
「、、、あぁ、、居る」
「錯乱していた時に言っていたあの方って人か?」
そう言うと少し間が空いたが、そうだと返事をした。その声はとても優しく、嬉しそうな雰囲気を含んでいた。
「そういえば、あの時君はあの方以外触っちゃダメだと言っていたが、今はいいのか?」
「そなたは命の恩人だ、別に構わない。」
恩情を重んじている魔教の者は珍しく、こうして改めて命の恩人だとかなんだとか言われると少し気恥ずかしく感じて少し黙ってしまう。すると、まだ名前を聞いてなかった事に気づく。
「そうだ、まだ名前を聞いていなかったな、私はー、、、私は、李・梓豪だ」
「私は阿和という。」
「阿和か、とてもいい名前だ!」
「あぁ、私もそう思う、、、」
なんだか阿和が笑っているような気配がしたが、顔が隠れているため、その確認は出来そうにはなく、何とか見れないかと凝視していると、いきなり身体の内側から痛みがせり上り、思わず咳き込む。抑えていた手を見ると血が付着しており、これは瘴気に対して己の身体が限界を迎えている事を意味していた。
時間が経てば経つほど咳き込みは酷くなり、血の量も増えるだろう。と考えている間にまた咳き込み、身体がフラつき始める。すると阿和は勢いよく起き上がり、烨霖を壊れ物を扱うように慌てて抱きとめる。
「瘴気に当たりすぎている。これ以上ここに居ては危険だ」
「ははっ、少し、、、話過ぎたな、、、」
「私が山の外まで運ぼう。」
阿和は優しく烨霖の膝裏と背中を支えて持ち上げ、気遣うように軽く背中を摩る。すると力なく震えている腕に胸元を掴まれる。その手は 烨霖であり、烨霖は弱々しい声で荒い息を吐きながら言葉を発する。
「君と話すのは、、、楽しかった、、、また、会えたら、、また、、、話してくれるか、、、?」
「、、、またすぐ会える、必ず」
「それは、、、楽しみ、だ、、、」
そのまま限界が来たのか、烨霖は意識を手放し、全身の力が抜ける。
己の腕の中にいる烨霖をじっと見つめ、阿和は忘れかけていた人の脆さを思い出す。そしてもう己はその域には戻れないのだと、同じにはなれないのだと、そう思い知らされた。
第4話【終了】
見て下さりありがとうございました。
まだまだ未熟ですが暖かい目で見て下されば嬉しいです🙇♀️
至らない点があったら教えて頂けたら助かります。
コメント
1件
みぅです、読了したよ🤍🥀 第4話、めっちゃ重かった……でもめちゃくちゃ良かった。 烨霖が阿和に「君に触れさせてくれ」って言うシーン、すごく響いた。拒絶されても尚、手を伸ばす強さって、ただの正義じゃない、そこに覚悟があるんだよね。阿和の「あの方以外、触るな」という執着も、烨霖の「私に生かされろ」という傲慢な優しさも、どっちもちゃんと“人間の闇”を描けてると思った。 腕輪をはめる時の空気感とか、最後の「また会える、必ず」という約束も、優しくて切なかった。2人の距離が少し縮まったのに、烨霖が倒れて終わる構成、心臓に来た。 続き、すごく気になる。枝豆さんの紡ぐ“触れたい/触れたくない”の境界線、丁寧で好きです。お疲れさま🌙
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