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放課後、体育の授業の準備を任されて、若井と二人で体育倉庫へ。
マットやボールを取り出していたら、外から何かの拍子で扉が閉まってしまう。
暗くて狭い空間に取り残される二人。
「おい……マジかよ」
って軽く笑ってみせる若井に、俺は少し動揺。
懐中電灯もなく、薄暗さと静けさで心臓の音がやけに響く。
「……ガチで閉まったな」
若井が苦笑しながらドアを引っ張るけど、びくともしない。
外からがっちり閉められてる。
「冗談だろ……誰か戻ってくるよな」
若井の声が少し震えているのを、俺は聞き逃さなかった。
「まぁ大丈夫だろ、心配すんなよ」
そう言って、若井は自然に元貴の肩に手を置く。
暗闇の中で触れ合う熱がやけに意識される。
倉庫の隅に腰を下ろすと、二人の距離はほとんどない。
「……近い」
って小さく呟くと、
若井はにやっと笑って
「狭いから仕方ねぇだろ」って返す。
でもその声も、耳のすぐ横で響いて、息が触れるくらいの距離。
心臓の音がうるさくて、俺は顔をそむける。
「元貴」
「……な、なに」
「なんかさ、お前のこと……」
言いかけて、若井は言葉を切った。
真っ暗で表情は見えない。でも、声がいつもより低くて真剣。
「お、俺……なんか、変にドキドキしてきた」
「……っ!」
俺の耳まで熱くなるのが分かる。
気まずさに耐えきれず「ふざけんなよ」
って突き放そうとしたけど、若井の手が離れなくて。
肩から腕へ、指先までしっかりと掴まれている。
「……怖い?」
「怖いっていうか……若井が、近すぎて」
「じゃあ、ちょっと離れる?」
そう言いながら、全然離れない。
むしろ、逆に少しずつ近づいてきて。
暗闇だからこそ余計に敏感になる。呼吸も、体温も、何もかも。
「……若井」
名前を呼んだ瞬間、ほんのわずか唇が触れた気がした。
二人とも、しばらく声が出なかった。
外でガタッと物音がして、誰かが倉庫に近づいてくる。
それでようやく、現実に引き戻される。
けど、もう元貴の胸は完全に乱されていた。
――閉じ込められたせいじゃない。若井に触れられたせいで。