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目が覚めると、なんだかやけに寒く感じた。
今の現在地はモンド。昨日までいたスメールと比べれば、風がある分少し寒く感じるのだろうか?何せ、あそこは砂漠地帯で、とても暑いから。今日は、野暮用によりモンドで任務をこなさねばならない。早く起きて、支度をしないと。そういえば、パイモンは何処だろう?
いつもは俺より遅く起きるから、まだ隣に寝ている筈なのに。
早く、身体を起こして周りを確認したい。
パイモンはどこ?服を着替えないと。今日の任務の予定はなんだっけ?今日は誰と合う予定?
……身体が、明らかに重かった。
そんな事、考えてる暇なんてないくらい。
とても寒いのに、身体は妙に熱い。布団が手放せないから深く被るけど、まだ寒い。でも熱い。頭も痛い。まるで岩で殴られているかのようだ。喉も痛い。実際声が出ない。唾を飲むことさえ出来ない程に。
そこから理解に至るまで、そう時間は掛からなかった。俺は風邪を引いているらしい。
まいった…冒険者としてテイワットを旅して、風邪を引いた事が無いと言えば嘘になるが、決してその数は多くはなかった。
だが実際今、自分の症状は風邪そのもの。
…本当にまいった。よりによって、今日はモンドでの任務が沢山あるのに。
思えば思うほど、身体が動かない。
思考や行動を身体が拒否する。…どうしたものか。
「おや。名高い旅人でも、こんな風に病状に伏せる事もあるんだね」
ふと、聴き慣れた声がした。よく透き通り、落ち着きのある、あの声。愛してやまない人の声だ。
「『 』、?な”ん、で…ここに”…」
「…酷い声だね」
思ったより声が出なかった。恥ずかしい。
「君のパイモンがさっき僕の元を訪ねて来たのさ。朝たまたま早く目覚めたら、君の体温が以上に高く息も荒いから一度来てやって欲しい、とね」
「あぁ”…そう、か」
パイモンが居なかったのはそれが理由らしい。
俺の体調が悪そうだからと『 』を呼ぶなんて、パイモンも気が利くなぁ…。
「…それに僕は、君から渡された塵歌壺の通行許可証カードを持っているからね。僕しかここに入れないから仕方なく、ね」
「えへ…それでも”、うれじぃなぁ”“…ケホッ…」
どんな時も、照れ隠しをする事は忘れないらしい。そういう所も可愛いと思える。
ふと、『 』の手元を見ると、何やら膨らんだバッグを持っていた。俺の視線に気付いた『 』は、そのバッグの説明をしてくれた。
「君が体調が悪いと言っていたからね。あの浮遊物は。」
丁度店の近くに居たから買ってきてやった、と言いながらバッグから水や栄養のありそうな食材を沢山出してみせた。
…大体は教令院に居るはずの『 』。
それに、いくら近くにいたとは言えこんなに大量の食材を買ってきてくれるなんて…。
「重かったよね…ありが”とう”…うれしぃ”よ」
俺は掠れた声で礼を言った。
「ふん。別に君の為じゃない。病人が居ると知りながら放っておいたら、僕が極悪非道のようになるからだ」
「あはは…それでも、ありがとう”」
じわじわと目頭が熱くなるのを感じる。
彼なりに、俺が気を遣わないようにしてくれたのだろう。体調が悪くなり、心も身体も弱っている状態にその優しさは狡い。つい、舞い上がってしまいそうになる。
だから、今はその優しさを、少しだけ利用させてもらおう。
「ね”…『 』。膝枕してほしいな。」
「はぁ…?病人のくせして、変な要求するもんじゃない。黙って寝るのが一番いいだろう」
「ゲホッ…ゲホッ…ゴホッ…。うぅ…くるしい…」
「……はぁ、全く。君って奴は」
彼は俺の様子を見兼ねて、悪態を吐きながらも寄って来て、頭を持ち上げ膝枕をしてくれた。
…我ながら最低だが、やっぱり優しい。
「えへ、ありが”とう”」
「…頭が熱い。しばらくはここにいてやるから、さっさと寝るんだ」
「はぁ”い」
ここに居てくれるのか。嬉しい。
脚の高さが丁度いい。上を見上げると、直ぐそこに眉目秀麗な顔がある。癒やしでしかない。
体調不良なのも忘れ、つい頬が緩みそうになる。でも、ぐっすり眠れそうだ。多分、これなら悪夢も見ない。
「ありが”と…『 』」
「今日だけで、君からの謝罪を4回は聞いたね。」
「……ありがと…」
「…早く、寝るといい」
頭を撫でる手が心地良い。そんな事を考えていると、だんだん意識が遠退いてくる。
…目が覚めても、まだ君は隣に居てくれてるかな。もし、居てくれたなら。また、感謝を伝えよう。