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ある日、江戸川コナンが消えた。唐突だった。
普通なら心配する状況。コナンの身を案じる者が後を経たなくなるはずだ。しかしながら、毛利蘭はそこまで心配していなかった。
蘭だけではない。父親の小五郎もそうであるし、通っていた小学校も、少年探偵団の元太、光彦、歩美、灰原。ましてや警察である佐藤や高木、目暮まで、心配などしていなかった。
何故ならコナンが消えた日、コナン本人が蘭や少年探偵団、学校の先生に伝えたのだ。
「親に久しぶりに会えるから3日間親のところに行く」と。
急なことには変わりないが、親に会えると喜ぶ子供を引き止める者はいない。すぐに蘭も先生も探偵団も納得してコナンを見送った。
「で、本当の理由はなんなの?」
「え?」
疑問を持ったのは灰原哀だ。彼女はコナンもとい工藤新一が、両親に会えることに喜ぶような男ではないと知っている。
「3日間で何する気?」
「いや…その、」
「なによ」
「好きな小説家の新作ミステリーをじっくり読みたくて…な」
灰原の呆れ顔が見える。当たり前だ。しかし、コナン側も仕方がないと言える。好きな小説家達の新作出版が、ここ最近重なっていた。
毎日と言って良いほどの頻度で事件に遭遇するコナン。小説を一気読みできる時間なんて取れないに決まっている。しかし、容赦なく溜まっていく新作ミステリーを前にして欲を抑えるのが困難になった。
灰原と別れて隣の工藤邸に入っていく、予定だったが、コーヒーを買っておくのを忘れていた。あれだけの量の小説だ。途中で集中力が切れたり眠気に負けたりする可能性がある。そんなのもったいない。
コナンは思う存分小説を楽しむために必須のコーヒーを買うため、工藤邸に入らなかった。
そして攫われた。
そのため、コナンが消えた日から4日たってようやく行方不明の捜索対象となった。
誘拐に気づくことなく3日がたったことは、工藤邸に住まわせてもらっている昴がコナンに会っていないことから判明した。
4日目にしてようやく、コナンを知る者達全員が不安と恐怖を抱える事態となった。
特に、コナンの正体に近い者ほどその苦しみは膨れ上がり続けた。
膨れ上がり続けて、やがて疲れて萎み始めた。
2年半の月日が過ぎたが、
未だ、消息はつかめていない。