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夕食のあと。
亮が「アイス買ってくる!」と財布を手にして出ていった。
残されたリビングには、咲と悠真だけ。
静まり返った空間に、テレビの小さな音だけが響く。
咲は気まずさを隠すように、食器を片づけながら口を開いた。
「……悠真さん、今日も大学だったんですか?」
「うん。卒業研究で研究室にこもっててさ。……でも、妹ちゃんも受験勉強で大変だろ」
「まあ……はい」
咲は思わず小さく笑った。
その瞬間、悠真の視線がふっと長く彼女に留まった。
(……やっぱり、いつもと違う気がする)
胸の奥が熱くなり、咲は慌てて食器を持ったまま台所へ逃げ込む。
背中越しに「……無理すんなよ」という低い声が届き、心臓が大きく跳ねた。