コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
wki side
仕事が終わったあと、楽屋のソファに沈み込みながら、俺はため息をついた。
ツアーの準備、撮影、取材、リハーサル_やることが多すぎる。
もちろん嫌いじゃない。音楽が好きだ。だけど、最近は息をするように「働いてる」気がした。
「ちょっと息抜きしたいなぁ…」
そうぼやいても、ryoちゃんはすでにイヤホンをつけて爆睡している。
mtkはといえば、マネージャーに何やらスケジュールの確認をしていて、忙しそうだった。
その夜。俺は帰り道で見つけた小さなネオンの灯りに吸い寄せられた。
変わった雰囲気のゲイバー。どことなく怪しい。
けど、今夜はそんなのがちょうどよかった。
カウンターに座り、店員に「ジンソーダで」と頼む。
そしてふと視線を巡らせたその瞬間、見覚えのある後ろ姿が目に飛び込んできた。
肩のライン。髪型。少し猫背気味なところ。
え?まさか_。
「……mtk?」
ゆっくりと振り返ったその顔。
目が合った。数秒、時が止まる。
そして同時に叫んだ。
「「なんでお前がここにいんの?!」」
mtkはグラスを持ったまま硬直し、俺も思わず背筋を伸ばした。
「ち、違うの!いや違わないけど、っていうかwkiもなんでここに!」
「こっちが聞きたいわ!息抜きだよ、息抜き!」
「俺もだよ!」
…あれ?ってことはお互いそういう_
mtkが視線を泳がせながら口を開いた。
「……今まで言ってなかったけど、そういうことだから」
「…マジか、俺も」
「……うん」
もうどうにでもなれと思いながら、俺は乾杯した。 グラスの中で氷がカランと鳴る音が妙に心地よかった。
「…うち、来る?」
二杯目の途中で、mtkがぽつりとそう言った。
その言葉の意味を理解するまでに、数秒かかった。
「え、あの…飲み直そうってこと?」
「…まぁ、うん」
酔っていたのか、酔っていなかったのか、正直よく分からなかった。ただ、気づいたら俺は「行こうか」と答えていた。
mtkの家は、いつものスタジオの空気と違って柔らかかった。香りも、照明も、全部”彼らしい”。
「ソファ、座って」
「悪いな」
「ううん。てか、なんか変な感じだね」
そう言って笑うmtkが、やけに近くに見えた。
お互い心の中の”秘密”を知ってしまったせいか、距離が近づいているのが分かる。
音楽の話、バンドの将来、ryoちゃんの天然っぷり_
くだらない話をしながら、ワインが1本、また1本と空になっていった。
気づけば、mtkの頬は赤く染まっていた。
俺の方も、もう心臓のリズムが変だ。
「…wki、なんか見すぎ」
「ごめん。見とれるっていうか…」
「酔ってんでしょ」
「…うん、相当」
その瞬間、mtkがふっと笑って、俺の肩に頭を預けた。
空気がやわらかく沈み込む。手の甲が触れた。
ほんの少しの静寂のあと、理性がどこかへ飛んでいった。
「はっ…ん、あっ!♡ん、んん… っあ”…wkiッ」
「何、もっと?」
「ちがっ…ふっ♡…あ”ッ……そ、そこっ…やらぁ」
「やだじゃないでしょ、ほら」
「んあッ…きもち、い、から…っ♡」
「もっとして欲しいんでしょ?」
「っああ、ふぁ…っ…んん”♡♡」
朝、 カーテンの隙間から差し込む光で目が覚めた。
頭の隣には、寝癖のついたmtk。
その肩にかけた毛布を見て、ようやく昨夜の出来事が現実だったと思い知る。
「……おはよ」
「……おはよ。なんか、夢みたいだね」
「夢っていうか、酔っ払いの暴走だな」
「ひど」
笑いながらも、mtkは頬を赤らめていた。
妙に幸せそうな表情だった。
「……wki、どうする? こういうの」
「どうするって?」
「“なかったこと”に、する?」
少し間を置いて、俺は笑った。
「バンドやってて、好きなやつがボーカルって、けっこう面倒だな」
「え、誰が?」
「お前に決まってんだろ」
mtkが目を丸くしたあと、照れ笑いした。
「……そう言われたら、断れないな」
その瞬間、なんかもうどうでもよくなった。
音楽も、世間も、スケジュールも。
この瞬間だけは、俺たちが“ただの人間”でいられる気がした。
数時間後。
俺たちは普通にスタジオ入りした。
「おはよー」
「おはよー」
「おはよー…、?」
ryoちゃんがmtkを見て首を傾げる。
「なんかさ、mtk歩き方変じゃない?」
「え、そ、そう? ちょっと、腰が、痛くて…」
「ギックリ腰?」
「う、うん……まぁ、そんな感じ!」
ryoちゃんが心配そうにマッサージを提案してくる横で、俺は堪えきれずに咳払いした。
mtkがチラッとこちらを見て、目で「笑うな!」と訴えてくる。
俺はギターを構えながら、こっそり笑った。
音を鳴らす。 彼の声が入る。
そのハーモニーの中に、昨夜の熱と今の温もりが混ざっている気がした。