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琉騎亜はボールペンをノートの端に置くと、紙パックのカフェオレを口に運んだ。

ノートには雑に書かれた文字が散りばめられており、新作の詞を作るのに苦戦している様だった。前に担当したものは若者に人気のアイドルグループの歌詞で、弾け飛ぶような明るい曲が大反響だった。その前は戦闘モノのアニメの主題歌となる曲。希望のある、力強い言葉の多い歌詞を作り、それらもまた大絶賛された。

肩を動かし、コリを解しながらテレビに映る画面を横目で見やると「作詞の天才と呼ばれる【うな】とは一体何者なのか?」と大きくタイトルコールが出されていた。ひな壇に座る芸能人達は皆、司会者が仕切る中大袈裟に意見を述べたり冗談を言ったりと、きっとこれも台本にあるとおりに進めているのだろう。

「何者、か。」琉騎亜は小さく溜息を吐き出すとノートに視線を移し、再びボールペンを手に持つ。


 琉騎亜は廊下から聞こえてくる足音に気付き目を覚ました。執筆中にいつの間にか眠ってしまっていたのだ。

 慌てて体を起こし、髪を片手で整えながら扉の方向を向く。彼女と同じ家に住めるだなんて、夢なのではないかと何度思ったことか。すると、 彼女 が扉の向こうからひょこっと顔を出して彼に声をかけた。

「琉騎亜!今お仕事中?」現れたのは背が低く小柄で、まるで吸い込まれそうな大きな瞳と艶やかな黒髪。その上明るくフレンドリーな女の子だ。現に、こうして可愛らしい笑顔を此方に向け目をきらきらさせている。

「おっ、お仕事だけど…大丈夫だよ。もしかして あいちゃん に何かあった…のかな…?」

「ううん、用は無いんだけど。テレビ見るの飽きたから琉騎亜の顔が見たくなっちゃって。」

 俯き、言葉に詰まりながら小さな声で答えた琉騎亜に微笑む。すると彼女は軽い足取りでこちらに近付き、琉騎亜の作業机の横に立つとノートを覗いた。

「このフレーズいいね!かわいい~!」

 乱雑に書かれている単語を指差し、純粋に意見を述べる彼女によって琉騎亜の暗く重い感情には少しだけ光が差した。と、思うと、琉騎亜の顔をじっと見つめる彼女何か顔に付いているのだろうか。もしかしたらノートに書いてある単語に不快な思いをさせてしまったのだろうか。琉騎亜は眉尻を更に下げ、不安になり彼女から目が離れせなかった。

 彼女の口から出てきたものは思いがけない言葉だった。

「ふふ、琉騎亜ってば、ほっぺに文字が写ってるよ!」

 どうやら、先程ノートを下にして眠ってしまっていた際、ボールペンで書いた文字が頬に写ってしまっていたようだった。彼女に指摘されるまで気付かなかった。彼女は琉騎亜の頬を指の背で撫でると、「可愛いね。」と優しく微笑んだ。


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