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「タキシードがすごくお似合いで」
「私より、君のウェディングドレスの装いの方が、ずっと綺麗だ」
彼の腕にふっと腰が抱き寄せられると、
カシャッとシャッターの切られる音がして、
「お二人のファーストショット、いただきました」
と、カメラマンから声が飛んだ。
気恥ずかしさに見舞われ、互いにパッと離れようとするも、
「そのまま、そのままで」
と、数枚のショットが撮られて、貴仁さんと思わず顔を見合わせ小さく笑ってしまった。
「自然ないい表情が撮れました! では次は、ちょっと見つめ合ってみましょうか?」
男性カメラマンのペースにいつの間にか乗せられてしまったけれど、おかげで私も彼も緊張しないで写真に写ることができた。
広い庭園内で、何度か場所を変え、芝生にドレスを広げて座ったり、噴水の縁に二人並んで腰かけたり、時には彼のタキシードの胸に頬を寄せてみたりと、いろいろなシーンを撮影した。
途中で加わった猫のミルクも、とてもお行儀よく映っていて、私たちよりも写真慣れしているようにすら感じられた。
「では猫ちゃんを真ん中にしてー。はい、猫ちゃんおすましを〜」
カメラマンの言葉がわかっているのか、ミルクが本当におすましをしているようにピンク色の鼻をツンと突き出して、彼と二人で思わず顔をほころばせた。
「最後は、源治さんもごいっしょにどうですか?」
私の提案に、「そうだな」と彼が頷いて、ずっと近くで撮影を見守っていた源治さんをそばへ呼び寄せた。
共に写真を撮ることを彼が告げると、
「いえ、私なぞは……」
と、断った源治さんだったが、
「源じいも、家族だろう」
そう言われると、「……もったいないです」と、恐縮しつつも写真に入った。
「きっと旦那さまと奥さまも、大変お喜びになっていると思います」
写真を撮り終え、源治さんが感慨深げに話す。
「ああ、そうだといいな」
穏やかな笑みを浮かべて答える彼を見ていると、ここで撮影をして良かったと心から思えた。