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──前撮りが済むと、間もなく挙式本番へ差しかかった。
私は会社の同僚や友人を招待するぐらいだったけれど、貴仁さんの方は、やはりクーガグループの総括ということもあり、系列会社等の関係者を含めると、招待客数もおのずと多くなった。
数百人規模の式に、緊張感が募る私へ、
「何も心配などせずに、君は、私に全てを委ねていればいい」
訪れた式の当日、彼が優しげに語りかけた。
「では、君を待っているから」
先に式場入りをする彼が、スタッフさんと共に歩き去る。
私は深呼吸を一つして、ウェディングドレスの胸元に手を当てると、
「はい、待っていてください。あなたの元に参りますから」
そっと目を綴じ、心の中で、そう呟いた──。
もう既に涙目になっているお父さんに伴われ、式場の両開きの扉の前に立つ。
扉が開けられると、ウェディングマーチを奏でるパイプオルガンの音色に加え列席者からの大きな拍手が鳴り響く中、祭壇の正面で私に手を差し伸べる彼の姿が映った。
ガラス板の下に赤い薔薇の花が敷き詰められたヴァージンロードを、お父さんと腕を組みゆっくりと進んで行く。
彼の元へ辿り着くと、白いレースの長手袋を嵌めた手が、長くしなやかな指先にスッと取られた。
彼が小さく会釈をすると、目を潤ませた父が微かに頷いて、傍らへ身を引く。
二人で並んで祭壇に向き直ると、厳かに神父さまが誓いの言葉を読み上げた──。