伊吹「も〜クリスマスかぁ…」
パトロール中、助手席で伊吹が呟く。機捜404の車は、イルミネーションで飾られた並木道を走らせていた。通りゆく人々の中にはサンタのコスチュームを身にまとい客寄せし、あるいは子供へのプレゼントを選ぶ夫婦らしき人たちが大勢見えた。
志摩「平和だな…」
伊吹「このまま平和だったらさ、25日は2人で居ようぜ」
志摩「なんて言った…?」
突拍子もなく伊吹がそんなことを言ったもので、思わず聞き返す。
伊吹「だからさ、25は2人でゆっくりしないかって言ってんの」
志摩「ばーか。今までの経験から25に休みが取れると本気で思ってんのか」
伊吹「へへっ、だよな」
伊吹はへらっと笑う。できることなら俺も休みたいが、毎年クリスマスから年末年始にかけてはかなり忙しくなる。今までも休めたためしがない。休めたとしたらその時は多分、人類が自分以外滅亡した時だろう。などとくだらない事を考えながら、赤信号で止まっていた車を再び走らせる。
伊吹「俺もあの人たちみたいに、クリスマスくらいは大事な人と一緒がいいよなぁ」
志摩「ん、お前彼女いたのか」
伊吹「いるよ。だから志摩誘ったんじゃん」
志摩「は?」
伊吹の言葉の意味が理解できなかった。そもそも俺たちは付き合ってないし。困惑して伊吹の顔を見るも、向こうもまた、真っ直ぐな目でこちらを見つめる。かける言葉に詰まっていたとき、伊吹が口を開く
伊吹「って嘘嘘!志摩ちゃんなーに真に受けてんの?笑志摩ちゃんってばピュアなんだから〜笑」
車から蹴落そうかと思った。同時に全身の力が抜ける。また赤信号で車をとめ、ハンドルに額を乗せため息をつく。仕事中にふざける相棒と、それを真に受けた自分に腹がたってくる。
志摩「次そういうくっだらない話したらお前を奥多摩に返す」
伊吹「はは、こえ〜」
伊吹「まぁ、大事な人と一緒にってとこは、嘘ついたつもりないけどね」
志摩「…」
最近伊吹はこういうとこがあるから、たまに会話に困る。一緒に素直になればいいのか、いつもみたいに突っ込めばいいのか。
要はむず痒くなるから、やめて欲しい。
志摩「…ちょっとコンビニ寄る」
伊吹「珍しいね〜志摩ちゃんからコンビニ行きたいって言うの。何買ってきたの?」
運転席に乗り込み、ビニール袋から小さいコンビニケーキを取って伊吹に渡す。
伊吹「うおっ、」
志摩「それ食って大人しくしてろ。」
自分の分のケーキと2人分のお茶を取り出し、早々と食べ始める。すると、ケーキを渡してから唖然として動かなかった伊吹が突然笑い出す。
伊吹「ふはっ…はははっ笑 志摩ちゃん…」
志摩「…なんだ」
伊吹「これ、こぼれるだろ笑」
志摩「じゃあ、食べきっちゃえばいいだろ」
コメント
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めっちゃ好きです! フォロー失礼します! 続き出す予定ありますか!!